再稼働による「悪魔の連鎖」の本当の怖さーこれでも原発を再起動する気になりますか?(その3、その4)

著者: 山崎久隆 やまさきひさたか : たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会
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(この記事は、たんぽぽ舎【TMM:No1421】、【TMM:No1422】からの転載です。「ちきゅう座」ではすでに「交流の広場」で公開していますが、「時代をみる」にも掲載します。―「ちきゅう座」編集部)

[連載3]再稼働による「悪魔の連鎖」の本当の怖さ   
これでも原発を再起動する気になりますか?
 野田政権は全世界に向けて「核戦争」をするつもりなのか?
 
■若狭湾で起きる悪魔の連鎖
 若狭湾においては、大飯原発と高浜原発だけでは済まない。30キロ圏内には美浜、敦賀、「もんじゅ」が並んでいる。「もんじゅ」は高速炉であり、燃料はプルトニウム燃料で、ナトリウムを循環させて冷却している。これらが稼働しなくなれば数日で原子炉はメルトダウンを引き起こすことになるが、通常の軽水炉の何倍もの放射能を放出し、さらにナトリウムが空気と接触して大火災を起こし、溶融した燃料は核爆発を引き起こす可能性もある。まさにチェルノブイリ原発事故を何倍にもしたような災害になる。
 おそらく従業員に撤退は認められず、死ぬまで戦い続けろと言われるだろう。なぜならば撤退して手をこまねいていれば、間違いなくプルトニウムを含む大量の放射能は世界を覆い尽くし、北半球一帯で人が住めない地域が激増するからだ。
 「もんじゅ」の原子炉に入っている核分裂性プルトニウムは全部で約1トン。これは長崎型原爆の実に170倍。世界中で核実験により拡散したプルトニウムの5分の1に匹敵する。それをたった一基の原発が数日間の内に世界中にまき散らすことになれば、風下地帯に限らず北半球の陸上部では大規模な放射能汚染が発生する。
 若狭湾の原発による「悪魔の連鎖」は、地球規模の大災害をもたらすことになる。つまり、世界が容認し得ない災害である。
 だったら「もんじゅ」から燃料を抜いて安全な場所に退避すれば良いと誰でも思う。普通の原発ならば数日で燃料貯蔵プールに炉心燃料を退避させることが出来るが、「もんじゅ」は出来ない。

[連載4]再稼働による「悪魔の連鎖」の本当の怖さ
 破壊された「もんじゅ」の脅威

 2010年5月6日午前10時36分に、95年のナトリウム火災以来止まっていた「もんじゅ」が再起動する。日本中からの猛烈な反対の声を無視して、臨界に達した。思えばこの原子炉が最初に臨界になった94年4月5日は羽田孜政権、当時の科学技術庁長官は江田五月だった。つまり自民党政権では無かった。電話で祝辞を述べる江田五月の顔が今も忘れられない。
 そのわずか一年半後の95年12月8日にナトリウム火災が起きている。
 事件直後に事故現場を撮影したビデオテープの一部が隠されていわゆる「ビデオ隠蔽」事件が起き、その追及のさなかだった1月13日、ビデオ隠しの特命内部調査員に任命されマスコミによる報道の矢面に立たされていた西村成生・動燃総務部次長が「自殺」した。これがいわゆる「もんじゅ西村事件」である。
 遺体の状態はとてもホテルの8階から飛び降りたとは考えられないほど綺麗で、死亡推定時刻にも大きな疑惑があり、遺族は裁判により真相究明を求めたが、最終的には棄却されてしまう。
 この一連の事態、特に事故隠しが大きな問題となり動力炉・核燃料開発事業団は解体されたが、本来は国の原子力規正体制や原子力推進のあり方が問われるはずが、トカゲのしっぽ切りで済まされてしまう。
 今日のデタラメな保安院、原子力安全委員会体制を作り上げた元凶として「もんじゅ」事件を指摘しなければならない。
 現在の「もんじゅ」そのものの危険性は、その後に原因がある。
 再起動して臨界に達した後の2010年5月8日に原子炉は再度止められ、2013年の電気出力100%を目指す本格的な運転開始を目指していたが、8月26日、燃料交換作業の最終段階で「炉内中継器」という3.3トンのステンレス製円筒形装置を落下させ、炉内構造物を傷つけると共に引き抜けなくなるという事故を起こした。
 翌2011年6月24日に原子炉圧力容器上部構造物に穴を開けて強引に引き抜いたが、炉内構造物に損傷が無いかなどは、炉内のナトリウムが不透明な金属なので容易に確認できない。そのため、長期間燃料を動かすことも出来ない状況になっている。
 より安全な燃料プールへの移送も出来ず、「もんじゅ」は炉内に燃料を抱えたままなのだ。(★つづく★)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1911:120416〕