関西で仕事をしている娘から、「お母さんだったら、どうした?」と尋ねられた。唐突な小中高学校の一斉休校の要請を受けて、子を持つ同僚たちが慌てているらしい。かつて、私たち夫婦は、名古屋市で共に働いていたので、娘は、市立保育所にゼロ歳から6年間、学童保育所に小学5年生まで通っていた。両親の転任・転職に伴って千葉県に転居、転校している。
今回、名古屋市では、河村市長の対応が一転二転したが、3月2日現在、自宅にいることが困難な児童に関しては、小学校の教室で受け入れ、先生も待機させるということになった。さまざまな問題をクリアしない中での一斉休校要請には、首相の場当たり的な無策の結果ながら、名古屋市の対応には、ともかく働く親たちは一安心したかもしれない。しかし、給食はないので、親たちは弁当作りにも苦労するだろう。
一斉休校要請の根拠が示されないまま、政府は、保育所と学童保育所は、休校の対象外とした。これも、場当たり的に、過大な仕事を保育所や学童保育所に押し付けることになった。小中高学校に比べれば、物理的にも、日常的にも濃密な接触が現実でもある保育所や学童保育所を閉めないという理由には整合性がない。この矛盾に満ちた要請に加えて、厚労省と文科省は2日付の通知で、「子どもにマスクの常時着用を求めた上で、子ども同士を1メートル以上離す」感染防止策を都道府県などに要請した。保育所や学童保育所の実態、乳幼児・児童の行動、保母や指導員の人員不足の実情を全く無視している要請と言わざるを得ない。「1m以上離れて」なんて、噴飯ものであり、役人や政治家が考える思い付きでしかない。
感染者が出た高齢者施設のデイサービス中止は、ヘルパーによる訪問介護でカバーするというが、たださえ人手不足なので、事実上無理だという現場の声が届いているのだろうか。感染リスクが高いという高齢者、介護が必要な高齢者が放置されてしまうのだ。
いま、政府がやることは、北海道に感染者が多いからといって、特定の市の全世帯にマスクを戸別に配るという対症的な施策ではなく、医療機関、医療従事者へのマスクやアルコール消毒液など基本的な配備、掛け声だけではないPCR検査の拡充、休業補償対象外の企業や人たちへの具体的な支援などの方を優先させるべきではないのか。
私が参加している地元の9条の会の例会の会場となっているコミュニティーセンターから休館に伴うキャンセルの連絡が入った。市民活動や市民運動の停滞が不安だ。いま首相は、新型インフル等対策特措法改正によって、「緊急事態宣言」を出すことが打開策のような動きをしているが、これも、国民への人権侵害にならないよう、注視しなければならない。
首相が大好きな!各界の要人?との会食は、少人数だからと続けるらしいし、森友加計問題、桜を見る会、検事長定年延長問題などについての虚偽答弁や説明不足が積み重なる中、公職選挙法違反の元大臣たちに、本人からの説明責任の必要を言ったところで、まるで説得力がない。
国民の健康と命を守るのはだれか。こんな首相を選んで、長く居座らせてしまっている国民自身に返ってくる問いでもある。
初出:「内野光子のブログ」2020.3.4より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2020/03/post-1cd1ff.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座https://chikyuza.net/
〔opinion9509:200305〕