劇になった第五福竜丸 11/17から高円寺の劇場で

 ビキニ水爆実験の証人・第五福竜丸の生涯が劇になった。11月17日(金)から26日(日)まで、座・高円寺1(東京都杉並区高円寺北2-1-2。JR高円寺駅北口下車)で上演される劇団・燐光群による「わが友、第五福竜丸」がそれだ。

 1954年3月1日未明、太平洋のビキニ環礁で米国の水爆実験(ブラボー)が行われ、規制区域外で操業していた静岡県焼津港所属のマグロ漁船・第五福竜丸の乗組員23人が実験で生じた放射性降下物を浴び、無線長の久保山愛吉さんが放射能症で死亡した。マーシャル諸島の住民多数も放射性降下物を浴びた。世界を震撼させた「ビキニ水爆事件」である。
 これを機に、原水爆禁止を求める署名運動が全国的規模で行われ、署名数は3200万余に達する。こうした盛り上がりを背景に、55年8月、広島で第1回原水爆禁止世界大会が開かれる。

 ところが、その後、福竜丸は数奇な運命をたどる。東京水産大学(現東京海洋大学)の練習船として使用された後、廃船処分となり、東京湾の「夢の島」のゴミ捨て場に捨て置かれた。その無残な姿に心を痛めた世田谷区在住の会社員、武藤宏一さんが1968年3月、同船の保存を訴える投書を朝日新聞の「声」欄に寄せた。
 投書がもたらした反響は大きかった。美濃部亮吉・東京都知事が福竜丸保存への協力を表明、保存委員会が結成されて保存運動が始まった。そして、ついに1976年6月、同船を納めた都立第五福竜丸展示館が「夢の島」に開館する。

 「わが友、第五福竜丸」の公演は主催が有限会社グッドフェローズ、共催が、都立第五福竜丸展示館を管理する公益財団法人第五福竜丸平和協会。日本原水爆被害者団体協議会が協賛し、日本ペンクラブ、杉並区が後援する。高円寺の後、名古屋、焼津、吹田、岡山、高知、和歌山県串本町で公演する。
 「わが友、第五福竜丸」の作・演出は坂手洋二さん。「声の出演」に竹下景子さん、佐野史郎さんの名前が並ぶ。

  作品をこの時期に上演することになったのは、来年2024年がビキニ被災事件から70年という節目の年となるからだという。上演の意図について、燐光群はこう言っている。
 「第五福竜丸の被災により日本全体も『原爆マグロ』『放射能雨』の脅威にさらされ、戦時下に原爆を投下された事実とあらためて向き合い、原水爆禁止運動が始まる契機となりました」
 「第五福竜丸の他にも被ばくした漁船が多くありますが、ほとんど補償されていません。実験が行われたマーシャル諸島の人々も被害を受けブラボー水爆の作った巨大なクレーターは今も残っています。実験に携わった兵士たちにも被ばくした者がいます。今も核実験は行われており、世界の軍拡は留まることを知りません。東日本大震災時の原発事故による被害も含めて、放射能汚染の問題は棚上げされつづけています」
 ビキニ被災事件は70年を経てもまだ終わっていない。そのことを訴えたいということだろう。

◆問い合わせ 燐光群03-3426-6294 http://rinkogun.com
◆全席指定 一般4200円 U-25(25歳以下)、大学・専門学校生 2000円 高校生以下 1000円
◆座・高円寺チケットボックスでも販売  03-3223-7300
オンラインチケット https://za-koenji.jp
 
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