劣化進むNHKの「日曜討論」 ― 大本営発表をしかと認識しよう ―

《日曜討論の更なる学芸会化を見る》
 22年1月9日、久し振りにNHKテレビで「日曜討論 党首に問う」(9:00~10:38)という番組を見た。
 形式内容とも益々劣化している。画面背景にSunday-DEBATEという言葉が見えるが、ディベートが皆無なのである。その理由は二つあると思うので以下に例を挙げる。

 一つは、司会者(男女2名)と各党代表との間に質疑応答がないのである。
 「コロナ禍の拡大には、米軍基地内外の出入国管理、基地勤務の邦人米国人の感染防止策に欠陥があるのではないか」、「管制は実質〈「ザル法」的〉なものではないのか」、「米軍との情報共有や防止策連携が作動していないのではないのか」。
 そういう当然の質問を二人の司会者は、岸田首相(自民党党首)には決して詰問的に問わない。発言主体が誰だか不明な「客観的な」質問なのである。

 すると岸田は「米軍へ遺憾の意を示し米国側の対策実施を求めた」と答える。
 内容の乏しい丁寧でない回答である。ならば質問者は、直ちに「対米確認が遅いのではないか」、「どんな回答があったのか」「日米基地協定の改定交渉をする意向はないのか」と質問をたたみかけるべきである。しかし司会者からそういう再質問は出ることなく、直ちに次のテーマに移るのである。総花的で平板である。
 この問答は「宗主国と植民地」、「主権国家と傀儡国家」間と同質の会話だといえるだろう。

《「NHKの学芸会式討論会」は他党に応答しない》
 二つは、これら内容のない問答に対して、他党代表から疑問や質問が発せられないのである。そういう進行ルールなのであろう。

 私は、このルーティンを以前から「NHKの学芸会式討論会」と呼んできた。学芸会にはディベートが存在しない。しかも更に悪いことには、定時のNHKニュースがこの「無内容な問答を「そのまま切り取って」ニュースとして使っているのである。これは「管制報道」、「大本営発表」だ。メディアは自分の言葉で報道してもらいたい。
 例えば、説得力の乏しい理由で「答えを差し控えさせていただきます」といった回答があったら、「○○は、理由を言わず回答を拒絶した」と書くべきだろうと思う。

 一事が万事である。私自身は大いに腹を立てている。読者も自ら「意識的に注意深く」NHK報道の知的凋落をみとどけて欲しい。闘いがその先に待っている。(2202/01/10)

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

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