安倍晋三元首相銃撃報道における容疑者と旧統一教会との関係、容疑者が「なぜ安倍をねらったのか」について、大手メディア、とくに、テレビの報道番組のスタンス、メインキャスターやコメンテイターの発言は、そろいもそろって、旧統一教会と安倍との関係を薄めよう、薄めようという意図が歴然としてきた。加えて、安倍の功績をたたえ、その上塗りをするものであった。安倍の銃撃事件と旧統一教会・政治家との関係は切り分けて考えないといけないとの論調も依然として有力である。
NHKは、容疑者は旧統一教会と安倍が密接な関係があると「思い込み」によって犯行に及んだと「7時のニュース」では言い続けている。旧統一教会と容疑者の母親の寄付・金銭トラブルや安倍との関係は極力触れず、旧統一教会の記者会見後も 「宗教団体(世界平和統一家庭連合)」というのがテロップでの表示である。7月12日の「ニュースウオッチ9」ではこともあろうに、第一次・第二次安倍政権で、防衛大臣や党の副総裁を務めた高村正彦を登場させ、安倍晋三の“政治的功績”をるる述べさせた。そして「(安倍への)批判も確かにあったが、その評価は後世の史家に委ねられる」と締めくくり、MCの田中正良もなんと高村と同様に「事件の判断は歴史に委ねられる」と言い放った。メディアの機能不全、自殺行為にも等しい。ちなみに、高村は、弁護士時代、旧統一教会の訴訟代理人だった人である。政権・政治家への擁護がここまで露骨だと、視聴者の疑問をかえって深めてしまうだろう。
テレビ朝日「報道ステーション」の大越健介は、容疑者がなぜ安倍を狙撃したのかは「理解不能」とまで明言した。日テレ「ウエークアップ」(7月16日)の野村修也は、安倍元首相の銃撃事件を「教団を壊滅させようと道具として利用した面もあるかもしれない」などと述べる。複数の局の番組で、田崎史郎は「政治家は、選挙で一票でも欲しいから、頼まれれば、祝辞やメッセージ、行事への参加も断れない」などとぬけぬけというではないか。
そして、政府は、警備体制の不備を強調し、今後の強化を進めるといい、捜査当局は、容疑者の銃や火薬の製造やその性能をしきりに究明するのに熱心で、挙句の果て、奈良地検は、容疑者の動機には「飛躍」があり、刑事責任能力を調べるために本格的な「精神鑑定」を実施する方針を固めたという(毎日新聞7月17日)。容疑者の動機の解明、政治家と旧統一教会との長期間にわたる密接な関係究明からはますます離れてゆく様相がみえてきた。
さらに、岸田首相は、早々と全額国費で、秋には、安倍晋三の「国葬」を実施すると表明し、憲法改正を突破しようという魂胆である。コロナ感染が収まらず、物価高騰に歯止めがかからず、経営苦の中小企業、生活苦の非正規雇用の人たち、医療費の負担増額が強いられる高齢者たちは、事件や人の死を利用した税金の無駄遣いを許せるわけがない。
初出:「内野光子のブログ」2022.7.18より許可を得て転載
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