北朝鮮の「核脅威」を追い風にする安倍政権

 

9月15日(金)朝7時、TBSラジオのニュース番組を聞いていたら、突然「Jアラート」で中断された。北朝鮮が日本上空を横切るミサイルを発射したから待避せよ、という。

 他の局に切り替えてみたら、NHKはもとより民放局も「Jアラート」一色だ。北海道と東北地方で小学校1校と高校3校が休校したという。 

 純粋に「国民を守る」ためのJアラート・ミサイル避難訓練ならわからないこともないが、回を追うごとに大げさになる「Jアラート」には、安倍政権の政治的作為――「北朝鮮の脅威」を安倍政権の願ってもない追い風にしたいという作為――を感ぜざるをえない。なぜなら、最近の「Jアラート」のやり方を見るに、国民を騙しているとしか考えられないからだ。 

 「Jアラート」は、いかなる「危険」から国民を守ろうとしているのか?

 ミサイルの操作ミス・不具合で、日本海や太平洋に落下させるはずのミサイルが日本列島に落下する危険があるというのか。そうではないらしい。「屋外にいる場合には、直ちに近くの頑丈な建物や地下に避難し、近くに適当な建物等がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守って下さい」「近くに着弾したばあいは、爆風で窓ガラスが割れるおそれがあります」というアナウンスは、ミサイルのたんなる落下事故ではなく、ミサイルによる爆発物の投下に備えよ、という内容になっている。

 Jアラートを聞いた国民は、今回のミサイル発射が、ミサイル発射の実験ではなく、ミサイル攻撃そのもの――ミサイルによる実弾攻撃――の可能性がある、と勘違いしてしまう。

 政府の方は今回のミサイル発射は、万に一つも実弾攻撃ではないことは、百も承知なのに、国民に実弾攻撃の可能性もあると思わせるのは、悪質な世論誘導操作ではないか。

 北朝鮮は、アメリカからの先制攻撃がないかぎり、北朝鮮の方から先に攻撃することはない。なぜなら、北朝鮮の先制攻撃はアメリカの反撃による国家の消滅を意味すると、十分に承知しているからだ。アメリカは、韓国の同意を得ぬまま北朝鮮を先制攻撃することはないし、韓国文在寅大統領はアメリカの北朝鮮への先制攻撃に反対している。[もし、アメリカが韓国の要請を無視して北朝鮮に先制攻撃する可能性があると日本政府が考えているとしたら、最大の「脅威」はアメリカであり、「国民を守る」ために日本政府が真っ先にしなければならないのは、アメリカに先制攻撃の不可なることを申し入れることだ] 

 8月29日のミサイル発射の際には、アラートの伝達に不具合があった24市町村に対して消防庁が改善を要求した。小学生にミサイル避難訓練する学校もある。

こうして政府とその圧力によって政府の宣伝をになわされるマスコミや自治体や学校によって、世論(国民の意識)が「今こそ国防力の強化が必要だ」に誘導されることを危惧する。 

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/

〔opinion6948:170915〕