東京・有楽町朝日ホールで、7月10日、「協同を通じた持続可能な社会へ」のスローガンを掲げた第96回国際協同組合デー記念中央集会が開かれた。国際協同組合デーとは、世界の協同組合組織である国際協同組合同盟(ICA)が協同組合運動を発展・普及するために設けたもので、7月の第一土曜日と決められており、毎年この日を中心に各国で記念の集会が開かれる。日本での今年の記念集会を主催したのは一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA)だったが、これは今年4月1日に誕生したばかりの組織で、記念集会はいわばJCAのお披露目とも言える催しだった。
JCAに加わっているのは、全国農業協同中央会(JA全中)、日本生活協同組合連合会(日本生協連)、全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)、全国森林組合連合会(JForest全森連)、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会(日本労協連)、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)、全国労働金庫協会、全国農業協同組合連合会(JA全農)、全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)、農林中央金庫、家の光協会、日本農業新聞、農協観光、全国農林漁業団体共済会、全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)、日本医療福祉生活協同組合連合会(医療福祉生協連)、日本コープ共済生活協同組合連合会(コープ共済連)の18団体。会長は中家徹・JA全中会長。これは、日本の協同組合の連合会のほとんどを網羅したもので、日本の協同組合史上画期的なことである。 まさに、協同組合の大同団結が実現したといってよい。
もっとも、これまで協同組合同士が協力し合う組織がなかったわけではない。これら18団体のほとんどの団体が参加する「日本協同組合連絡協議会(JJC)」という組織があった。参加団体はいずれもICAの加盟団体だが、1956年に、国内の協同組合間の連携と、世界の協同組合との連携強化を図るためにつくられた協議体で、いわば、ゆるやかな連携を前提とする任意団体であった。ゆるやかな連携にならざるを得なかったのは、日本では協同組合がよって立つ法律が各協同組合で違い、監督官庁もバラバラ、事業の面でも場合によっては利害が対立する、といった事情があったからである。
そのJJCが発展的に解消し、衣替えして発足したのがJCAだった。発足にあたっては、一般社団法人という法人格を備えたから、参加団体間の結束はより強化されたものとなった。
JCAによれば、JCAの目的は協同組合の健全な発展と地域のよりよいくらし・仕事づくりへの貢献だという。そのために、JCAは①協同組合間連携②政策提言・広報③教育・研究の3つの機能を備え、地域・都道府県・全国の各段階におけるさまざまな協同組合の間の連携を支援・拡大し、協同組合の力を結集して地域の課題の解決を目指すという。
何が協同組合の大同団結を促したのか。それは、地域、とくに地方の農山村が、少子高齢化、経済格差の拡大などにより崩壊しつつあるという協同組合関係者の危機感だった。農山村の衰退により限界集落が増え、そこで暮らす人たちが生活を維持するのが困難になりつつあるという現実が、協同組合関係者を突き動かしたのである。第96回国際協同組合デー記念中央集会の冒頭に登壇した中家徹JCA会長は、あいさつの中で「地域が直面するさまざまな課題を解決するために協同組合が今こそ連携を強めなくてはいけない。そのためにJCAが設立された」と述べた。
こうした経緯があったから、第96回国際協同組合デー記念中央集会は「協同を通じた持続可能な社会へ」というスローガンを掲げたわけである。
中央集会では、JA全中、日本生協連、日本労協連、全国労働金庫協会、JCAの各役員によるパネルデイスカッション(テーマは「協同組合間連携を通じて持続可能な社会へ」)が行われたが、その中で、JCAの設立には別な動機もあったことが明らかにされた。
1つは、安倍政権による「農協改革」に対する協同組合陣営からの強い懸念である。
政府の規制改革推進会議は2016年11月に「農協改革」を提言した。そこでは、JA全農の事業制限など農協の事業の根幹にかかわる方向が打ち出されていた。これに対し、農協陣営は「農協改革は農協自身によってなされるべきだ」と反発、JJCも「協同組合は『自治と自立』を原則の1つに掲げており、規制改革の名の下に協同組合の自主性、主体性が制限されることがあってはならない」という共同声明を出したほどだった。こうした政府による農協への“圧力”が協同組合陣営を結束させたようだ。
もう一つは、世界の協同組合の動きから刺激を受けたことだ。
協同組合運動が盛んな国の1つであるイタリアで2017年、3つの協同組合連合会が統合し、法人格をもったイタリア協同組合同盟(ACI)になった。JJCは代表団をイタリアに派遣してその経緯を視察し、協同組合がイデオロギーの違いを超えて統合し組織をより強固にしてゆくことが、協同組合の社会的存在感を高めることを学んだ。これが、JCAの設立につながった。
中央集会は、協同を通じた持続可能な社会の実現を目指して力を合わせるをことを確認した。具体的には、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の実現をはかるとしている。その目標は17項目にのぼる。つまり「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「安全な水とトイレを世界中に」「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「人や国の不平等をなくそう」「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任 使う責任」「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」「平和と公正をすべての人に」「パートナーシップで目標を達成しよう」である。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion7843:180720〕