7月16日に行われました「さよなら原発デモ」のニュースはドイツの様々なメディアで報道されました。:
http://www.dw.de/dw/article/0,,16099656,00.html
http://www.swr3.de/info/nachrichten/Bilder-von-der-Demo/-/id=47428/did=1641468/ffuj00/index.html
http://kurier.at/nachrichten/4503817-massendemo-in-japan-gegen-atomkraft.php
http://www.focus.de/politik/ausland/proteste-gegen-inbetriebnahme-von-reaktoren-170-000-j
http://www.tagesanzeiger.ch/ausland/asien-und-ozeanien/Gebt-uns-Fukushima-zurueck/story/19448600
大成功、おめでとうございます!
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7月5日に、東京電力福島第一原発事故を検証する国会事故調査委員会が最終報告を決定し、事故の根源的原因は「自然災害でなく人災である」と断定というニュースがありました。この「人災のみが原因」という言葉に、私は不愉快さと怒りを覚えました。もし彼等の主張するように、ヒューマンエラーのみがフクシマ原発大惨事の原因なのだとしたら、人間が間違いを犯さない限り、原発というものは安全であり事故は起こらないのだという事を示唆しているからです。
南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung)は、このニュースを報道したメディアのひとつです。しかし、「日本の最大想定事故調査報告-原発事故は人災ー人的ミスとは陽動作戦」と題されたヘッドラインが示していますように、記事は国会事故調の報告結論に対して大変クリティカルな見解を示しています。
「原発事故原因は単なるヒューマンエラーだったと指摘することで、実際の問題から気をそらさせようとしている陽動作戦である。フクシマ大惨事は人災であると断定した事は、日本政府の『日本の原発はー実際にはー安全である』という主張を支えることになった。」と、南ドイツ新聞は国会事故調を厳しく批判していま す。
原文へのリンクです。:
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概説:日本の原発最大想定事故調査報告-「原発事故は人災‐人的ミス」とは陽動作戦
南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung)オンライン記事‐2012年7月5日付
寄稿:マルコス C. シュルテ フォン ドゥラッフ(Markus C Shulte von Drach)
リスク研究者である*クラウス・ハイルマン氏は述べる。: 「日本国会事故調査委員会が、福島原発大災害の原因は人的なミスに帰すると結論したことは、恰も 罪を認めているかのように聞こえる。 しかし、この報告は何よりも先ず、日本にある原子力施設が安全であるという主張を根拠づけようとしている。」 これによって、日本政府は、ある目標を追求しようとしているということである。
確かに、「フクシマ事故原発災害の原因は、人的ミスに帰する。このような災害は、想定可能なことであったし、避け得ることが出来たはずの『深刻な人災』である。」との国会事故調査委員会の断定は、まるで罪を容認しているような響きがある。それは、犯した間違いから教訓を学ぼうとしている意思や責任感があるかのように思えるし、「将来において自分たちは、これを改善していくつもりである」との約束を暗黙裡に示しているような印象さえも受けさせるのである。
リスク研究者のハイルマン氏は、「もしフクシマ大事故が自然災害に起因したものではなく、人間的不完全性を起因としていて、事故原因の全てが、原発のオペレーターであった東京電力スタッフや日本政府の誤った行為、または日本における社会文化のあり方に帰すると主張されているのだとしたら、そこにはある目的があるはずだ。それは、彼らが今迄ずっと国民に告げてきたように『原子炉自体は安全なのである』と謂った印象をつくり出したいからだ。そうする事によって、日本政府は原発の再稼動を正当化する。そして、原発に関しては誰も心配する必要はないのだと謂う印象を与えたいのだ。」と述べる。事実、最初の原子炉が再び稼動し始めている。
ミュンヘンからの専門家、ハイルマン氏は、「日本の国会事故調査委員会が断定した結論は、このような災害に関して自分が今まで聞いたものの中で最も大胆で厚かましいものである。」と言う。
実際、2011年3.11に起こった地震のために幾つかの原子力発電所が破損されている。フクシマ第一原発では、まぎれもなく3基の原子炉の圧力容器が決壊した。津波が冷却システムを破壊し、メルトダウンが起こり原発の最大想定事故となった。にも拘らず、「フクシマ原発事故は自然災害としては見なされない。」-これが日本国会事故調査委員会の報告結論なのである。
~ コミュニケーションに混乱があったこと、政府および東電が災害に適切に反応できなかった無能さ、緊急事態に対しての準備不足が、災害の余波を悪化させるこ とになったこと~は、エキスパートたちにとっては既に明らかなことである。調査委員会が記述したー「官憲に対して疑問を呈しようとしない日本人的傾向性が 問題の悪化に寄与することになった。」ーに対しては誰も反論することはないであろう。しかし、地震と津波が事故の原因ではなかったという結論は、ハイルマ ン氏のようなエキスパートを驚かせた。
ハイルマン氏は、「地震が原子炉をぶち壊し、その事に津波も寄与した。これは、人的ミスとは関係の無いことだ。明らかに、原発施設が地震・津波に対して充分に耐えられるように設計されていなかったということである。も し、この悪名高き『ヒューマンエラー』を事故原因としなかったら、技術的観点上、原子力発電所の安全性が疑われることになり、それは、莫大なコストを意味することになる。原子力発電所施設を改造しなければならないか、もしくは原子力施設が放棄されるようなことになる。何故なら、最後には日本国民が原発をも う許容しなくなるようになるからだ。」と述べる。
ハイルマン氏によれば、全ての原因を人的ミスに帰するということは一つの方略であって、彼自身が既に政府や企業などで度々見てきたことであると謂う。「彼らは民衆が騒がずに静かでいることを望んでいる。:民衆よ、気を乱すことはないのだ。人間が間違いを犯したのだから、それを単に変えようではないか。そうしたらまた穏やかに原子炉を稼動することができる。」ー(クラウス・ハイルマン氏) そして、その通りの事が、今、日本で起こった。
ハイルマン氏は何年もの間、リスク研究者としてビッグテクノロジーの危険性調査に携わっているが、モダンテクノロジーに関してはポジティヴな見解を持っている。「これからも引き続いていく進歩のためにモダンテクノロジーは必要だ。しかし、原子力は我々が制御することが不可能なテクノロジーであり、アポカリプス(災禍・破壊)を生じるという固有性を持っている。」と、ハイルマン氏は述べる。 それ故にハイルマン氏は、我々は原子力から手を引くべきであると要求している。
一方その間に、日本では反原発運動が定着してきた。その上、エキスパートたちが既に「日本は度々地震に苛まれている地震国であるにも拘らず、国中至る所に原子炉が立っていることを我々は懸念している」と述べている。
2012年7月16日サヨナラ原発デモ 写真: Reuters
2012年7月16日代々木公園「反原発デモ17万人参加」
ドイツ「Asienspiegel」記事から 写真:Asienspiegel (Bild: Twitter/@showcocco)
原発事故原因は単なるヒューマンエラーだったと指摘することで、実際の問題から気をそらさせようとしている日本政権のストラテジーが果たして成功するかどうか、まだ今の段階では分からない。
以上
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*クラウス・ハイルマン(Klaus Heilmann)氏のプロファイル: ミュンヘン工科大学(Technische Universität München)の医学教授であった。リスク研究者として数多くの会社、団体、協会、組織にコミュニケーションに関するアドヴァイスを与えてきている。
ハイルマン氏は、チェルノブイリ原発事故後、ドイツのエネルギー産業に助言した。また、1986年11月1日にスイスのバーゼル(Basel)、シュヴァイ ツァーハレ(Schweizerhalle)にあるSandoz化学コンツェルンで大火災が発生しライン川を汚染する事件が起こったときには、、ドイツの化学産業にアドヴァイスを与えた。 ( インフォメーション:南ドイツ新聞から)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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