写真は「夢咲くら館の今」佐倉市ホームページから。屋上から飛び出す長い庇?キャノピーというそうだ。無用なだけではない、危険な長物、これだけに一億円もかけたという。
https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/shakaikyoikuka/286/16573.html
図書館らしからぬ??
3月4日、新しい佐倉市立図書館が、市の複合施設「夢咲くら館」のなかに、オープンした。「佐倉」と「咲くら」のごろ合わせのネーミングもいまひとつ。写真にあるこの施設には、図書館と子育て交流センター、地域情報発信コーナーやカフェなどが併設されてのオープンだった。5年前、旧佐倉市立図書館の老朽化のために計画された新図書館なのだが、その計画から、出来上がりまでに、図書館らしからぬ数々の危険と不安が浮上してきたのである。当初より市民有志による「より良い佐倉図書館が欲しい会」が、多くの問題点を指摘してきた。
当初、地上三階建ての15億円の予算であったのが、地下1階、地上2階となり、2022年度(令和4年度)予算の概要では、つぎのように説明する。図書館を含む複合施設は「(仮称)佐倉図書館等新町活性化複合施設整備事業、交通安全施設整備事業や橋梁維持事業等の施設整備費の増加により、普通建設事業費は全体で 37.7 億円と 26.7 億円の増加となった」として、その事業費は当初の二倍以上になったのである。これだけでも計画の杜撰さが目に余り、議会の多数会派はいったい何をやっていたのだろう。設計事務所、工事業者の選定も不明確極まりないものだった。設計事務所は、事前に市と協議をしていたり、不祥事続出、指名停止を何度も繰り返している前田建設が落札したりしている。
地下の掘削、その土砂の処分、埋蔵物撤去の過程で軟弱地盤が判明、くい打ち工法の強化が重なり、工事費は増額していく。床の強度の必要から、地下があるならば、保管、書庫機能を置くのが普通だが、新図書館は、まるで逆なのが不思議でもあった。障がい者対応、災害対応のリスクも解決されないまま、オープンしてしまったのである。
職員の半分は司書資格がなく、非正規には司書資格を求める?!
図書館の建物もさることながら、図書館のカナメは人と本、人材と資料である。下記の当ブログの記事でも指摘しているが、あらためて、佐倉市の最近の図書館関連予算を調べて驚いた。
ダウンロード – e4bd90e58089e5b882e59bb3e69bb8e9a4a8e996a2e980a3e4ba88e7ae97e6a682e6b381.pdf
すでに決算が出ている2021年度(令和3年度)以降で見てみると、佐倉市立図書館の「人と本」の実態はと調べてみたのだが、まことに“残念な”実態であった。正規の職員には手厚いが、会計年度任用職員は、職員の二倍ながら、その待遇は見ての通りである。最近の会計年度任用職員の募集案内によれば、図書館については、司書資格ないし図書館勤務5年以上が条件となっているが、7時間45分勤務、夕方の4時間勤務の二種類で、いずれも2~4日に限られる。いずれも時給1030円である。「千葉県の図書館2022(公開版)」というデータでは、2021年度決算によるとみられるが、当初予算で21人とあったが、23人となっていた。さらに、21人の内訳として、司書資格持つ者が11人、その他が10人となっている。会計年度任用職員に司書資格を求める一方、職員の半分は資格を持っていないことになる。もちろん、資格の有無だけで、仕事への熱意と能力が問われるはずもないことは、かつて、ある大学の司書講習会で10年ほど講師を務めた経験や講習会修了生たちと同じ職場で働いた経験からも承知はしているが、司書資格が図書館業務の入り口であることに変わりはないだろう。
なお、『千葉県の図書館』の職員人数23人と予算書21人の食い違いを、市の財政課に尋ねたところ、2人は、再任用職員ではないかということであった。決算書の人件費については、すべて人数が省かれているというのも、市民には理解しがたく、実態をわかりにくくしているのではないか。
さらに驚いたこと、市内三館合わせての図書購入費が毎年3500万ほどしかない。表で見るように、2022年度と2023年年度の図書購入費は、3526万、千の位まで同額である。どれって、最初、私の見まちがいかとも思ったが、同額だった。「去年と同額にしておけ」という冗談のようにも思える。「夢咲くら館」内に新図書館もスタートするというのに、まったく「夢」のない数字に、少々あきれもした。それもそのはず、新図書館は、書架などは特注品を購入する一方、「新しい本の購入は大型絵本とヤングアダルト向けだけというお粗末さ」だというのである(岡山眞治「図書館問題から見えた佐倉市政」『さくら・志津をまもりたい会ニュース』45号 2022年12月)。「夢咲くら館」には、増額に増額を重ねて37億以上の建設費を出す一方で、図書費が3500万とは、まさに”箱もの行政“の典型ではないのか。いつまでこんなことを続けているのか、続けさせているのだろうか。責任の一端は市民にあるといってもいい。私たちは、もっともっと図書館を利用して、自分がほんとうに読みたい雑誌や読まねばならない、読んでみたい本を、子供や若者に読ませたい本をリクエストしてみてはどうだろう。
とりあえずは、館長以下職員は、何を考えているのだろうか。館長の職員歴を知りたいものである。
学校図書館では、今
下記の、当ブログ記事では、学校司書の実態にも触れたが、今回は、ついでながら、市立の小学校23校、中学校11校の図書購入費を調べてみると、表のようになる。それぞれを、23校、11校に分配するそうだ。生徒・児童数によるのではなく、各校の「配備率」?によって、年々額が変わると、財政課は答えていたが。いずれにしても、少ない図書購入費にも思えた。あわせて34校の図書館に11人の会計年度任用職員の学校司書が奮闘しているわけなので、ただただ頭が下がる思いである。
図書館が危ない!司書という仕事(2022年8月31日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2022/08/post-fd7d26.html
ついでながら、昨年12月15日『こうほう佐倉』の「市職員人事・給与などの状況」によれば、2022年(令和4年)4月1日現在、職員1024人、再任用職員57人、会計年度任用職員70人となっていた。この会計年度任用職員はフルタイム勤務職員のみの数字で、その他、パート勤務の800人以上の職員がいて、合わせると900人程度の会計年度任用職員に、市政は支えられていることになる。 こうした状況のなかで、図書館への指定管理制度の導入の声が聞こえないわけでもない。「 2021年9月現在,283自治体,731館において指定管理者により管理運営が行われていることが確認できる」とする調査もある(桑原 芳哉「公立図書館の指定管理者制度導入状況 2018年度以降の動向を中心に」『尚絅大学研究紀要A』2022)。しかし、指定管理者制度導入館は漸増しているが、さまざまな不具合から、自治体直営に戻った図書館も多いのである。佐倉市にも懸命な選択を望みたい。
初出:「内野光子のブログ」2023.3.7より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/03/post-f768c4.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion12880:230308〕