危険なポピュリズム政治に警戒を

著者: 池田龍夫 いけだたつお : 毎日新聞OB
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安倍晋三政権誕生から1カ月、通常国会での論戦が始まった。野党の追及に対する安倍首相は、経済再生・強靭な国づくりなどの抽象的答弁を繰り返すだけで、論議が噛み合っていあい印象である。東西の識者2人の分析が目に止まったので、一部を紹介して考えてみたい。

市場に屈服する政治は危険

毎日新聞1月27日付コラムで、ジャック・アタリ氏(仏経済学者)は、「ポピュリズムとは厳しい道を避け、最も安易な方向に人々を導くことだ。ポピュリズムの識者は人々を愚かだと考え最も本能に近い欲求に訴える。だがそうした指揮者が考えるより人々は賢明だ。やがてポピュリストの指揮者は窮地に陥り、権力を譲ることに抵抗する。ポピュリズムは多くの場合、衆愚政治から始まり独裁で終わる。……地球規模の民主主義がなければ、代わりに金融や行政機関による独裁的で排他的な法の支配が生まれ、破綻につながる。我々は今、2013年にいるが、1913年には、誰も世界大戦が起きるとは考えなかった。地球規模で民主主義を普及で民主主義を普及させようという勇気がなかった。そして今日、もし地球規模の民主主義について考えることができなければ、民主主義は市場に屈服し、それぞれの国で、ポピュリズムの脅威にさらされるだろう」、ポピュリズム台頭を危惧している。

世論と議会との合意形成を

朝日新聞1月29日付インタビュー欄で、在米評論家・冷泉彰彦は、「日本は過去20年、さんざん財政出動したのに一向に競争力が上向かない。生産性向上のためだけだではなく、一過性の金の使い方をしている。大変な債務を背負っているのに、通貨価値を下落させるのは非常に危険な行為だという考え方もある。中道右派や現実派とされる米国人には危うい政策に見えるでしょう。経済問題だけでなく、慰安婦問題や靖国神社参拝などの歴史認識を巡って日米に認識のギャップがある。……いま景気浮揚策が支持されているようだが、ここにも落とし穴がある。世論や議会と本当の意味での合意形成できていないとことに、理念と現実のギャップが激しくなったときに判断ができなくなる。または大きく跳ね上がるといったことになりかねない。産業構造上、日本は決して孤立できない国です。米国であろうと中国だろうがイスラム圏だろうが、それこそアルジェリアでも全世界全方位外交、経済中心の国際協調いきていかねばいけない。それには、どんな外交をしていけばいいのか。本当に国益に資するにはどうしたらいいのか。国内でもっと多様な議論することを安倍政権に求めたい」と警告している。

安倍首相の独断的な政策に、日仏論客2人の指摘に共感する。ポピュリズムに騙されないよう、国民はウオッチしていかなければならない。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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