沖縄での米海兵隊のオスプレイ墜落事件の推移は、この国の米国追随の有り様を国民一般に改めて開陳せしめたのみならず、オスプレイと云う機体が欠陥機である事実をも内外の衆目に明らかにした、と総括せざるを得ません。
此処では、事件の細目を再掲しませんが、ただ、オスプレイと云う欠陥機に比して、他に優れた機種が存在するにも拘わらず、何故、米軍、それも海兵隊が、この機種に固執するのかが分かりません。
米軍内外に海兵隊無用論もある中、世界的に展開している米軍再編が継続している関係で、海兵隊独自の存在意義を主張するために独自機種に依る部隊編成の必要があるからなのでしょうか。
沖縄の民衆が開発途上以来事故の絶えないオスプレイの配備に反対し、同時に海兵隊の撤退を求めるのは当然ですが、当事者である海兵隊従軍経験者でさえも同機の安全性に疑問を呈し、海兵隊の同機採用に反対している事例もあるのです。
The V-22 Scandal by Carlton Meyer
Carlton Meyer氏は、米国の目線ですが、日本の米軍基地の大多数の廃止も提言されています。 実際、軍事的に観れば、第二次大戦時において、大陸から遠く離れた真珠湾でさえも日本軍の不意打ちを受けたのですから、現代において大陸から左程離れてはいない地点に多数の基地を構える等とは、無謀の極みと言えるのでしょう。 それに、一朝有事ともなれば、米軍が随伴している家族の安全確保に傾注しなければならなくなることでしょうし、戦争処では無くなるでしょう。 東日本大震災時の「太平洋の通路作戦 ; Operation Pacific Passage」を想起します。
Outdated U.S. Military Bases in Japan by Carlton Meyer http://www.g2mil.com/Japan-bases.htm
それにしても、オスプレイの実用性には、大きな疑問符が付きます。 実際に、アフガニスタンでの同機の事故例に鑑みると、実戦に投入されれば、過酷な戦場での使用には堪えない、と証明されたも同然、と思われます。
同機は、固定翼機と回転翼機の持つ優位性を兼ね備えた新鋭機種である等、と喧伝されるのですが、仔細に点検すると、固定翼モードと回転翼モード、共に、中途半端な性能であり、特に、回転翼モードでは、ヘリコプターの性能には勝ち目が無い、と断定せざるを得ないのです。
固定翼機の輸送機ならば、C-130 ハーキュリーズ(C-130 Hercules)等、大型から中小型まで、他に何種類もの優秀な機種があり、積載重量、後続距離等では、オスプレイは低評価される処です。
また、回転翼機・ヘリコプターならば、米国には、CH-47チヌークと云う実戦で優秀性が証明された機種が存在するからです。
このチヌーク、80年代のフォークランド戦争では、輸送船がアルゼンチン空軍に依り大破された結果、たった一機残ったRAF(英空軍)のコードネーム“BN”(ブラボー・ノベンバー:Bravo November)が獅子奮迅の活躍をしたのが有名ですが、何と、それからも現役で、2010年には、アフガニスタンで、負傷兵救出作戦時に銃弾を受け、パイロットが頭部を負傷したものの、無事に基地へ到着した戦歴もあるのです。
Bravo November Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Bravo_November
FALKLANDS HERO: BRAVO NOVEMBER | Tuesday 27 March 10PM https://www.youtube.com/watch?v=ROHhPBkAt3g
チヌークは、ヘリコプターの伝説的名機として知る者は知る機体です。 オスプレイのヘリコプター・モードでの不安定な飛行と比べて、回転翼機の特性を極限まで生かせることが可能な機体なのです。
従って、米軍でも、この機種を採用し実戦での有効性を知る陸軍は、オスプレイを採用せず、チヌークの運用に拘っています。 如何に、固定翼機と回転翼機の特性を併せ持つとされるオスプレイが存在しようとも、米陸軍の方針のように、チヌークの運用に依ることとしている諸国の軍部が世界では大勢です。
特に、米陸軍のように、第101空挺師団(101st Airborne Division)と云うヘリボーン作戦専門の師団を有する軍では、優秀なヘリコプターが必要であり、輸送ヘリコプターと対地制圧用攻撃ヘリコプターとを組み合わせて実戦に使用する作戦を念頭に置き機種選定がされるとオスプレイは選外になる運命でした。
理由は、下に挙げましたRAFのチヌーク展示チームに依る飛行を御覧になれば理解頂けるでしょう。 使用機種をオスプレイに代えて、同様の展示飛行が可能かどうか、言うまでもありません。
Chinook Display Team, Royal Air Force, RNAS Culdrose Air Day 2015
https://www.youtube.com/watch?v=FYr0dU254a4
チヌークは、汎用性のある機種であり、下に挙げましたように、水面に降り特殊部隊(英海兵隊特殊舟艇隊;SBS?Special Boat Service?等)を舟艇共に収容することも可能です。
Special Boat Service amazing
https://www.youtube.com/watch?v=v9pA4I606No
平時に、致命的な事故を起こす機種を、実戦に投入すれば如何になるかは、想像に難く無いことです。 それを、米海兵隊と空軍と同じく、世界に先駆けて導入する自衛隊では、どのような任務に使用するのでしょうか。 複雑な機能ゆえに整備に時間がかかり稼働率の高くない機種であることも相まって、精々、飛行機マニア向けの展示飛行程度でしか有り得ないでしょう。
まかり間違って「実戦」に投入すれば、第一線の隊員達が迷惑するでしょうし、戦死するより事故死する隊員が多くなるかも。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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