参院は2月15日の本会議で、政府が事後承認を求めていた原子力規制委員会の田中俊一委員長と委員4人の国会同意人事案を、自民、民主、日本維新の会、公明党などの賛成多数で可決した。衆院は14日の本会議で同様に同意しており、田中氏らは昨年9月、原子力規制委設置法の例外規定で就任して以来、約5カ月を経て国会の正式承認を得た。田中氏の任期は2017年9月まで。ほかに、中村佳代子(元日本アイソトープ協会主査)更田豊志(元原子力研究開発機構副部門長)大島賢三(元国連大使)島崎邦彦(元地震予知連絡会長)4氏の人事も同意された。
原子力規制委の人事案は国会で同意を得る必要があるため、野田佳彦前首相は昨年7月、田中氏ら5人の人事案を国会に提示した。しかし、民主党内に異論があったため野田前首相は、原子力緊急事態宣言中なら同意を先送りできる例外規定に基づき、田中氏らを任命。規制委の正当性を損なうとの指摘も受けていた。
再稼働派の自民党、消極的な支持
毎日新聞2月15日付朝刊は、「田中氏は規制委の独立性を重視する立場で、原発の安全性に厳しい目を向ける。政府・自民党は再稼働が遠のきかねないことを懸念しながらも、差し替えによる批判や混乱を回避するため、消極的支持を選択した」と分析していたが、各党とも対応に苦しんだようである。2人の自民党衆院議員が、党の同意方針に反発して採決を欠席。再稼働に厳しい田中規制委に対し、原発立地県の福井、新潟の2議員が反発したものだ。日本維新の会も同意したが、石原慎太郎共同代表と平沼赳夫・国会議員団代表の最高幹部が「党としては賛成したが、議員個人としては反対」と棄権する始末。即〝脱原発〟を掲げる共産・社民両党の反対は分かるが、生活を守る党が同意しなかった理由が分かりにくい。
審議過程の公開を貫いてほしい
毎日新聞は2月16日付社説で「規制委はこれまで、意思決定過程を透明化し、安全基準作りや原発の活断層調査で、審議過程を公開してきたことは評価できる。活断層調査では、原発敷地内に活断層が存在する可能性が高いとする規制委側の判断に、電力会社側が反論する事態も起きた。だが、調査や審議過程を公開したからこそ対立も明らかになったのであり、規制委と事業者が議論を闘わせることは、水面下で意見をすり合わせるよりも、よほど健全なことだ」と指摘。東京新聞も同日付社説で「規制委が国会承認されても、内実はそう単純でない。いま策定中の新たな原発規制基準は田中委員長自らが『世界最高水準』と胸を張るように相当に厳しい。再稼働を急ぎたい自民党内の勢力にとっては不満が募り、委員の差し替えを求める声が出たほか、実際の国会採決では党の方針に反して棄権者出た。規制委は気をつけないと、7月までの規制基準づくりの中で規制を骨抜きにする『猶予措置』の拡大や、運用面の抜け道などを求める圧力が強まる可能性は大である。規制委が絶大な権限を握る以上、高い倫理観が欠かせないことは言をまたない。国会同意で『本免許』となったのを機に、規制委はいま一度「何ものにもとらわれず、科学的・技術的な見地から、独立して意思決定を行う」とうたった原則を見つめ直すべきだ」と警告していたが、規制委は初心を貫いてほしい。
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