東京電力福島第1原発の事故原因などを調べてきた国会の事故調査委員会(黒川清委員長)は7月5日、「根源的な原因は、『自然災害』ではなく明らかに『人災』である」との最終報告書を衆参両院議長に提出。641㌻にも及ぶ膨大な報告書で、午後3時からの記者会見は、休憩をはさんで午後9時半まで続いた。
東電のずる賢い経営体質を糾弾
最終報告書は、6月9日に発表した「論点整理」より鋭く事故原因の問題点を衝いており、「国会事故調」ならではのインパクトを感じた。経済産業省と密接な関係にあった東京電力が長年、原発をめぐる規制の先送りや基準を軟化するよう強い圧力をかけていたことを指摘し、「規制する立場と、される立場の『逆転関係』が起き、規制当局は電気事業者の『虜(とりこ)』になっていた」とまで糾弾。経産省原子力安全・保安院の「原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」とし、東電を「自らは矢面に立たず、役所に責任を転嫁する黒幕のような経営体質」と断じている。
6日付朝刊各紙に「最終報告」の詳しい内容が掲載されるので、本稿では、事故原因を徹底検証した委員10人を代表するる黒川委員長の冒頭発言の骨子を紹介しておきたい。おごり高ぶった日本への警鐘が乱打されていると思う。
50年にも及ぶ日本社会のイビツな構造
「想定できたはずの事故がなぜ起こったのか。その根源的原因は、日本が高度経済成長を遂げた頃にまで遡る。政界、官界、財界が一体となり、国策として共通の目標に向かって進む中、『規制の虜』(Regulatory Capture)が生まれた。そこには、ほぼ50年にわたる一党支配と、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった官と財の組織構造と、それを当然と考える日本人の『思い込み』があった。経済成長に伴い、『自信』は次第に『おごり、慢心』に変わり始めた。入社や入省年次で『単線路線のエリート』たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは、重要な使命となった。この使命は、国民の安全を守ることよりも優先され、安全対策は先送りされた。そして、日本の原発は、いわば無防備のまま、3・11の日を迎えることとなった。この事故が『人災』であることは明らかで、歴代及び当時の政府、規制当局。東京電力による、人々の命と社会を守るという責任感の欠如があった」。――国会事故調の使命を「国民による国民の事故調査。世界の中の日本という視点(日本の世界への責任)」を合言葉にして半年間で積み上げた最終報告は、他の政府事故調・東電事故調・民間事故調報告より格段に踏み込んだ重みを感じる。
大飯原発の発電を開始させた野田政権の今後を危惧
野田佳彦政権は、この最終報告書を今後の原子力政策にどう生かすつもりだろうか。大飯原発3号機が、この日(7月5日)、発電を再開したことが心配でならない。先に指摘した若狭湾断層の危険もあり、〝脱原発〟の市民運動は逆に高まるに違いない。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1989:120707〕