野田佳彦首相と3閣僚が4月6日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおいい町)再稼動について協議し、その条件となる新たな安全基準案を正式決定した。この基準は、原子力安全・保安院が先月まとめた30項目の安全対策を基にしている。政府の見直し要請に応えるため、短期的に実現可能なものを抜き出して報告した印象が強い。
わずか2日間、あの「保安院」が決定とは…
高知新聞4月8日付社説は、「保安院が基準案の提示に費やしたのはわずか2日間だ。福島原発事故の検証もまだ終わっていない。絶対安全と言える対策などあり得ないのに、いま再稼働させて安全性を確保できるのか。新基準からまず受けるのは『付け焼き刃』『合格ありき』の印象だ。……そもそも基準案を作ったのがお座なりな審査ぶりで信頼を失った保安院では『安全』の説得力に乏しい。この欄で繰り返し主張しているように、原子力規制庁の早期発足へ、関連法案の審議を加速するべきだ。大飯原発が再稼働しなければ5月上旬に国内で稼働中の原発はゼロになる。政府はそれまでに再稼働にメドを付けたい思惑があるのだろう。だが、今後夏の電力需給の見通しを精査していく中で、前提が変わる可能性もある。再稼働の条件が整っていない中での前のめりな姿勢は、原発周辺自治体の不信感を強めるだけだ」と、「新基準」拙速決定の危うさを指摘していた。
若狭湾の風下〝近畿の水がめ〟琵琶湖が心配
4月6日付「ロイター通信」が、嘉田由紀子・滋賀県知事の単独インタビューを報じていた。嘉田知事の鋭い分析・指摘に共感する点が多く、その一部を紹介して参考に供したい。
「新基準は見切り発車ではないか。福島並みの事故が若狭で起きたら一大事だ。風下の141万滋賀県民だけでなく、琵琶湖は京都、大阪、神戸1450万人の命の水源なので、万一のことがあれば近畿の産業も生活も成り立たなくなる。▽30項目の安全対策のうち、電源の配置など既に出来ているところもあるが、防潮堤や建屋の免震強化、ベントの際のフィルター設置など出来てない項目がある。数年間も要するそれらを外して、出来たところだけで基準をクリアしたというのは納得しがたい。▽国会の事故調査委員会の最終報告書さえまだ出来ていない。若狭はかなり活断層もあり、地震の巣窟。地震の影響などの原因究明が出来てないのに、対策が取れたというのも論理的に合わない。国会事故調が重い判断を行い、原因究明を公表してもらわないと国民は納得しないと思う」。
「再稼動の見直し」に取り組め
政府が、この「新基準」を地元住民にゴリ押しすれば、新たな混乱も危惧される。在京6紙のうち「朝日」「毎日」「東京」は、高知新聞と同趣旨の社説を掲げ、「原発再稼動を急ぐな」との警告を発していた。東北各県紙はもとより、大部分の県紙が原発再稼動を危惧している現状を、政府は真摯に受け止め、「原発政策の抜本的見直し」を急ぐべきである。
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