原発廃止の運動に危惧すること

 福島第一での原発事故以来、廃止運動が奔流のように勢いを得ていますが、聊か感情に流されて科学的に疑問のある主張が観られるのが弱点になりはしないかと心配です。 
 その最大のものが、原子力の代替に「自然エネルギー」を科学的検討を踏まえずに主張されることです。 現状では、左から右まで押し並べて「自然エネルギー」を代替エネルギーとして主張されています。 しかしながら、忌憚の無い意見を言えば、原発推進も自然エネルギー推進も、同じ穴の狢で、要するに「地球温暖化詐欺」(Great Global Warming Swindle)の手の平にあるのです。 
 原子力の専門家である小出裕章先生が、講演や著書で、繰り返し説かれていることですが、「『「地球温暖化問題』は現時点では、科学的な根拠が薄弱なまま、政治的に引き回されています。」(小出裕章 「隠される原子力 核の真実」)。
 我々国民が、地球温暖化が二酸化炭素を原因としているという「仮説」を信じる限り「クリーンなエネルギー」としての原子力を受け入れる障害は無くなりますし、「クリーン」の欺瞞が明らかになっても、エネルギー問題を科学的に検討し政策立案をすることが不可能となります。
 実際に、「科学的社会主義」を標榜される日本共産党までが、人為的地球温暖化仮説を真実として、代替エネルギーに「自然エネルギー」を主張されるに及んでは、政権政党の民主党から野党に至るまでが、「地球温暖化詐欺」の手の平で踊っているようです。
 ともあれ、エネルギーの問題として先入感無しに今後の日本での政策を立てないことには、原子力と同じ轍を踏む結果になってしまいます。 環境NGOや運動家の理想論に振りまわされては、一億以上の国民が路頭に迷う恐ろしいことになってしまいます。 風力や太陽光で発電する技術が確立され、環境負荷が少なく、経済的にも収支が合い一国のエネルギーの中心に為り得るものであれば、導入するのは当然ですが、現在は、そこまでの比重は置けないものでしょう。 そうであれば、現実にある火力発電所を増設する他に方法は無いのですが。
 次に、原子力の利用が、日本では現実問題として安全に出来ないことが証明された訳ですが、実際に存在する原子炉を廃止する規模とその過程をどうするかです。 原発と一言に言っても、実は、その規模には差があります。 例えば、大阪府には、2か所の原子炉がある、と言えば驚かれるでしょうか。 近畿大学と京都大学の実験用原子炉です。

 http://kuaeri.ned.kindai.ac.jp/index.html
 近畿大学原子力研究所

 http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/
 京都大学原子炉実験所

 まさか、研究用の原子炉まで「廃止」の対象とはされないでしょうが、人口密集地にある原子炉に万が一のことがあれば、規模は兎も角、被曝者が出るのは間違いがありません。 どうするべきでしょうか?  大学に限って「原子力神話」を信じますか?
 廃止の過程も重大で、一度に全部は無理です。 電力のこともありますが、放射性廃棄物の処理が最大の問題になるでしょう。 教訓にしなければならない出来ごととして、公害問題を学んだ者なら必須ですが、米国であった有害廃棄物による大規模環境汚染「ラブキャナル」事件を御存じでしょう。 住宅地になった有害廃棄物の埋め立て地で、次々と発病する住民、乳幼児までが原因不明の病に倒れた挙句に判明した恐ろしい事実は、住宅地の下層にあった有害廃棄物だったのです。 放射性の廃棄物ならもっと恐ろしいことになります。 狭い日本の国土で、一体何処で処分をして埋めるのでしょう。 科学的で、現実的な方法を追求しなくてはならないでしょう。

http://en.wikipedia.org/wiki/Love_Canal
Love Canal

 最後に、今、必要でまた困難なことなのですが、原発廃止を実際に行う政府を造ることです。 皆さまは、菅政権が本当に脱原発に踏み切ると思われているのでしょうか。 言葉に実態を伴わない政府や首相です。 大本営発表で国民に真実を伝えず、被曝の実態を公表もせず、未だに、放射能垂れ流しの国の政府に何が出来るのでしょうか。 我々は夢から覚めないといけないようです。 甘い見通しを持たず、粘り強く、国民を騙さない誠実な政府を造ることから始めないと。 

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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