脱原発を求める集会やデモの広がりが止まらない。それも組織や団体のいわゆる動員ではなく市民一人一人の自主的な参加が増え続けている。脱原発の民意はいまや明確である。
私たちは「3.11」から放射能の恐ろしさを充分教えられた。そして人類は現時点で本当は原子力を技術的に制御しきれていないにもかかわらず原発としての社会的利用つまり実用化や事業化はまさに犯罪的であることも理解できた。
では、民主党政権は民意をくみ取るどころか、なぜ再稼働をはじめ原発存続に固執するのだろうか。
一つは、利権いわゆる「原子力ムラ」と言われ、原発から様々な利益を得ることのできる関係者の強い意向であろう。たとえば、原発建設維持に関わる大企業と経済界、御用研究者、設置自治体、マスコミと広告大企業、族議員と族官僚、大手御用労働組合などなど。これらと民主党政権中枢部は政治資金や選挙の票でつながっているのだろう。
もう一つ、原発はそもそも当初から国策として推進されてきた特殊なものである。その背景には、原子力という最先端技術と同時に、原発の核燃料廃棄物が原爆(原子爆弾)の原料でもある点を無視できない。こうした原発の国策は現在の日米同盟とその中核としての核抑止力論に無関係と言い切れるだろうか?
「コインの裏表」あるいは[双子の兄弟]といわれる原発と原爆の関係は、単に科学技術面に限らず、政治的経済的にも現代の社会構造全体にがっちりからみついている。
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私たち市民の側もこうした事態をしっかり受け止め、脱原発運動も反原爆運動も今や一層の連携が求められると同時に、将来的には一体化こそ目標ではないだろうか。そうでなければ原子力の兵器利用と平和利用という線引きでごまかされてきた過去の歴史の繰り返しになりかねない。
初出:「平和憲法を守る豊島の会」第32号2012年8月発行より許可を得て転載しました。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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