今月の参議院選挙の結末はどのようになるのでしょうか。 床屋政談風に分析してみます。 まず簡単に各党を観ます。
現政権にある自由民主党と公明党は、方や利権集団が基礎で、方や宗教信者団体が基礎、と差異があるものの、地方と中央での政治活動と政党活動には歴史があり、政党構成員も多数が実在します。 TPP参加を巡り農業従事者からの反発は予想されるものの、日本経済再生のための金融・財政政策の集中的政治宣伝に依る国民の「期待」醸成には成功しつつあり、この度の選挙戦でも同宣伝が威力を発揮することと思われます。
何よりも「霞が関」の中央省庁を制する政治力は、口先だけの民主党とは桁違いです。 例えば、官僚を使えず、客観的資料に基づく検討もせずして、政権発足後間も無く、何処かの怪しげな環境NPO出身の人物の珍説を信じて、国連でCO2の25%削減を唐突に宣言した方のように国家統治のイロハも理解出来ない政治家が居る政党とは違うのでしょう(WSJには、Carbon Harakiriと揶揄されました)。 現在までの所、大した失策が無いのも有利です。
現政権と限り無く近距離にある日本維新の会は、共同代表の石原慎太郎・橋下徹の両氏とも、元はと云えば自由民主党であり、みんなの党も、代表の渡辺喜美氏が元自由民主党です。 自由民主党では、何かと不利と予想されて離党された方々であるので、同党の別働隊でしょう。 しかし、同党が政権復帰の今日では、復帰されても不思議では無いのです。 独自性を保ち生き残りが可能か消滅するかの瀬戸際にあると云えるでしょう。 維新の会の賞味期限は切れましたが。
一方、野党の民主党は、元々、政党として一体にはなっていない鵜豪の衆で、極右から極左まで様々な政治集団と利権集団を抱えた寄り合い所帯でしたので、政権落ちすると唯の有象無象に為り下がるのは自明のことです。 今では、議席を有していることが不思議に思われる程の存在の軽さです。 雲散霧消するしか無いでしょう。
生活の党、緑の風は、民主党からの脱党組ですが、有権者は、選挙目当てで脱党したことを忘れてはいないので、同党とともに見捨てられることには間違いが無いことでしょう。
社会民主党は、民主党政権に何の影響を与えることも出来ず投げ出した政権離脱組で、今では、独自の理想論を自由に語れる自由を満喫しつつ老衰で瀕死の憂き目です。
すると、消去法で、野党としては共産党のみに期待せざるを得ません。 同党は、過去には、人民的議会主義を旗印にして、当時の社会党との共闘に依り、大都市での地方選挙に次々と勝利し、国会でも議席を倍増したこともありました。
しかし、今では、同党の支持者は老齢化し、革命論争は夢物語りとなり、かつての盟友・社会党は自由民主党と政権に就いた時点で瓦解しました。 しかし、極右政権に対抗する護憲政党(皮肉にも)としては、尚も、有力な勢力でしょうが、如何せん、保守的基盤の強固な日本では、その支持は一定の枠を超えることは出来ないでしょう。
結論的には、自公と共産が対抗し、他は自滅。 自公の多数議席獲得に依り、安倍政権は安泰となることでしょう。 ただ、ワイマール共和国の再来の如き事態には為らない、と私は観測しています。 理由は、皮肉にも、対米的には安倍政権が自制しなければならない制約が存在するからです。 物理的には、例えば、「国防軍」ですが、現在の自衛隊は、その編成が米軍の補完としてのものに整備されていて、自立してはいないからです。 尖閣諸島問題でも分かるように、海上自衛隊の護衛艦の編成では、米空母の護衛を任務にして居て、自衛隊独自の艦隊編成に依る作戦行動には制約があるのです。 海上自衛隊では、偵察・戦闘・攻撃が可能な機種を登載した航空母艦を有した独自の作戦が可能な艦隊を保持していないために、具体的に国際紛争時に展開するべき軍事力を有せずに米軍に頼る他は無いのです。 陸上と航空でも同様です。 第一、装備・機材が米式です。 肝心の「国防」がこの有様ですので、安倍首相もこの点では口先のみになるでしょう。
国際情勢も安倍首相には大変に不利で、今や、米国と中国は、経済的には一体化して「チャイメリカ」と称される程の関係ですし、米国内でも中国人が多数国籍を取得し、居住しています。 維新の会の幹事長松井氏が渡米される折には、西海岸には、中国人・韓国人が多いので、維新の会幹事長に対して「慰安婦発言」に関わる抗議行動が予測されるので注意されたい、との忠告が米側より在ったぐらいです。 歴史は、繰り返す際には、二度目は喜劇、と云いますが、味方の筈が敵と為ることも予測しないと政治家は務まりません。 懐古趣味は、家で昔のTV番組を観る程度にしないと火傷をします。
安倍政権は、内外の諸条件から経済再生に専心するべきと思われますし、そうせざるを得ないでしょうが、その政策が根本的に間違っているのが致命傷です。 私は、安倍政権が、政治的な懐古趣味よりも、その金融・財政政策の誤りに依り日本を瀬戸際に追い詰める結果になるのではないか、と危惧しています。