反戦・民主主義を守る闘いに確信を深めよう - 『安倍ファシスト政権』反対の基盤は広がった-

日本国憲法の基盤である民主主義を掘り崩しかねない稀代の悪法「特定秘密保護法」は、12月6日深夜参議院で強行可決された。採決強行を懸念した老若男女はこの日、首都圏を中心に全国から1万5000人が日比谷野外音楽堂に結集して大集会を開き、「国民の自由を圧殺する」保護法の廃案を求めるアピールを採択。引き続き夕刻から深夜にかけて国会議事堂を取り囲んで反対を訴える人々の数は増え続けた。この日は名古屋で4000人の集会が開かれたのを始め、全国津々浦々で保護法反対を訴える市民の行動が広がった。

これだけの市民的抵抗を無視して採決を強行した安倍政権の態度は、「問答無用」と言う以外にない。1932年(昭和7年)5月15日、首相官邸に押し入って時の犬養毅首相を暗殺した若い将校は「話せば分かる」と語りかけた首相に「問答無用」と叫んで銃弾を発射した…。ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は「国民の反対を押し切って強行突破を図った安倍政権の背後に“平成のファシズム”の足音を聞く思いです」と書いた。経済学者の佐和隆光・滋賀大学長は「ここ数カ月の政治の動向を見ると、安倍政権は全体主義と紙一重になりつつあるようだ」と述べている。

自ら「右翼の軍国主義者と呼ばれても構わない」と豪語したという安倍晋三首相。国会議事堂を囲んだデモ参加者の持つプラカードには、ナチスの軍帽をかぶりヒトラーばりのちょび髭をつけた安倍首相の風刺画が描かれたものがあった。そう言えば、安倍政権の副総理、麻生太郎財政相は「ワイマール憲法が、いつの間にかナチス憲法に切り替わったやり方を見習うべきだ」という趣旨のスピーチをしたことがある。『安倍ファシスト政権』と呼ばれても文句をつけられまい。

この秋の臨時国会が召集され特定秘密保護法案が提出されて以来、国のどこかで保護法反対の声が挙がらなかった日はない。「知る権利」「報道の自由」「言論の自由」にタガをはめようとしたことが見え見えの法案に、まず報道労働者を結集する新聞労連、民放労連や日本ジャーナリスト会議(JCJ)が反対の声を挙げ、これにマスコミ経営者の組織である新聞協会や民間放送連盟が追随。日本ペンクラブ、日本弁護士連合会等々の組織が続々と反対声明を発表した。

参議院の強行採決の動きが報じられた12月に入ると、山田洋次、宮崎駿、高畑勲監督、吉永小百合、大竹しのぶ、倍賞千恵子氏ら日本を代表する映画人269人が、映画ファンに法案反対を呼び掛ける声明を発表(12月3日)。ノーベル賞の益川敏英、白川英樹氏らによる「特定秘密保護法案に反対する学者の会」は賛同者が2006人に達した(同)。同会を代表して記者会見した小熊英二慶応大教授(社会学)は「政治家がデモをテロと同一視するような感覚でいるとすれば、運用に大変不安が残る」と石破茂自民党幹事長のブログ発言を批判した。劇作家の平田オリザ大阪大学教授は「圧政が広がると最初に表現の場を失うのが私たち芸術家。法案は非常に危険だ」と語った。

有識者、知名人だけではない。内閣官房が9月に募集したパブリックコメントも9万480件のうち賛成は13%、反対は77%を占めた。新聞各社の世論調査も、毎日新聞が賛成29%、反対59%、朝日新聞では「今国会で成立すべき」14%、「継続審議」51%、「廃棄」22%。日経新聞でも賛成は26%、反対が50%だった。どこから見ても民意はこの法に反対しているのだ。

しかし衆参両院の多数を占める自民・公明の与党は、民意を汲まずに両院での採決を強行した。1年前の衆院選と今夏の参院選での与党の選挙公約のどこにも、秘密保護法のことを1行も書いていないにもかかわらずだ。今臨時国会冒頭で行った安倍首相の所信表明演説のどこにも、この法案に触れた箇所はなかった。安倍政権がまんまと国民への「だまし討ち」をやってのけたのだ。

昨年暮れの衆院選で自民は単独過半数を超える議席を獲得したが、全国で自民党に投票した有権者は18%だけだった。棄権が多かったことと小選挙区制の弊害だ。今夏の参院選でも、地方区比例区を合わせた自民党の得票率は25%に足らなかった。これまた棄権率が高かったために第1党が漁夫の利を得たにすぎないのだ。しかもこの選挙結果は、選挙区によって1票の値打ちが大きく異なる「違憲状態」の下で得られたものだ。

さて、このように「踏んだり蹴ったり」の扱いを受けてきたわれわれ市民は、ここで何をなすべきか。このまま安倍政権のファッショ政策の展開を見逃して良いわけはない。まずは1年後に想定されている特定秘密法を立ち上げさせない闘いだ。この秋から初冬にかけて展開された秘密法反対の闘いは、「60年安保」を思い出させるほどの全国的闘争であった。1960年当時の社会党、総評、全学連、国労は姿を消したが、日本の民主主義を守らなければならないという市民連帯は生き生きと再現したではないか。われわれはそのことに自信を持とう。

安倍政権は、秘密保護法と抱き合わせで今度の国会で成立させた国家安全保障会議(いわゆる日本版NSC=首相、外相、防衛相、官房長官の4閣僚で構成)をベースに、日本を本当に「戦争のできる国」にする動きを強めようとしている。集団的自衛権の発動は憲法9条に反しないとする御用学者や元外交官ら、いわゆる“有識者”を集めた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を使って、憲法9条の改憲抜きで戦争のできる体制の整備を図ろうとする魂胆だ。

われわれは、こうした安倍政権の一つ一つの危険な動きを許すことはできない。これを放置すれば、安倍政権が公言している憲法改悪の道を許すことになる。今こそ、反戦・民主の闘いにさらに広範な市民を結集すべき時である。

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