受信料凍結運動で籾井NHK会長の辞任を求める包囲網を!

著者: 醍醐聡 だいごさとし : 東京大学名誉教授
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受信料凍結運動、今日からスタート!
私も共同代表を務める「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は去る4月21日、代表がNHKへ出向き、NHK経営委員会ならびに籾井NHK会長ほか宛に、4月末日までに、籾井勝人氏をNHK会長から罷免するか、籾井氏が自ら会長職辞任するよう申し入れをした。そして、期日までに申し入れが受け入れられない場合は、受信料の支払いを向う半年間、凍結する運動を起こすことを通知した。

「ご通知 籾井勝人氏のNHK会長辞任を停止条件として受信料支払い凍結運動に踏み切ります」(2014年4月21日)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/zyushinryo_toketsu_tuchi.pdf

今日の午前中にNHK視聴者部に問い合わせたところ、籾井勝人氏は今現在もNHK会長職にとどまっているとのことだった。

そこで視聴者コミュニティは、ただちに、受信料凍結運動開始の通知文を視聴者部に送り、NHK経営委員会ならびに籾井会長ほかに届けてもらった。

「ご通知 籾井勝人氏のNHK会長辞任を停止条件として、本日より受信料支払い凍結運動を開始しました」(2014年5月1日)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/toketsu_kaisi_tuchi.pdf

その後、当会会員に同上通知文を送るとともに、会の運営委員会が作成した「受信料支払い凍結の手続きについて:Q&A」もHPに公開して、それらを活用いただき、受信料凍結運動への参加を広く呼びかけた。

「受信料支払い凍結の手続きについて:Q&A」
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/toketsu_QA.pdf
「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」HP
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/

受信料凍結運動の大義
受信契約は双務契約、視聴者には抗弁の権利がある
受信料の支払いは受信契約を締結した者の無条件の義務であり、一時的とはいえ支払いを止めるのは許されないという議論が見受けられる。そうした議論の背景には、受信料の「不払い」と「凍結」の違いを十分理解しない誤解があると考えられる。さらに、そうした誤解の背景には片務性の納税義務と双務性の受信契約の違いが正しく理解されていない事情があるように思える。

視聴者がNHKと結ぶ受信契約は、納税のような片務性の契約ではなく、視聴者とNHKが相互に権利と義務を分かち合う双務契約である。過去、何度も受信料の支払い義務を法制化しようとする放送法改定法案が国会に上程されながら廃案となったのは、NHKの人事、運営等に関して視聴者にまったくと言ってよいほど権利が与えられていない現在の受信契約の下で、支払い義務化によって今以上に強い受信料徴収権をNHKに与えると、特権的・徴税的な意識がNHK内に生まれ、視聴者との相互信頼関係が損なわれるとの危惧があったからである。

受信料の支払いは視聴者の無条件の片務的な義務ではなく、NHKが放送法ならびにNHK放送ガイドライン等の定めに沿って、民主主義の発達に資する番組を国民に提供するという、視聴者とNHKの間の相互信頼関係の上に成り立つ双務関係の下に成り立つ義務である。

だとすれば、「政府が右といったら左とは言えない」などと公共放送の自立性をまったく理解しない人物がNHK会長職に居座り続け、会長の人事権を乱用して理事会で専決体制を敷くことに執着したのでは、視聴者は、NHKが公共放送にふさわしい民主的な組織運営に徹し、自主自律の放送を提供する責務を誠実に履行するという信頼を保てない。
このような場合、視聴者は、NHKが公共放送の事業者にふさわしい信頼を回復するのに必要な措置を講じるまで―――今回の場合は籾井会長が辞任するまで―――民法第533条で明記された「同時履行の抗弁権」を準用して、受信料の支払い義務の履行を一時的に停止する権利を行使できると考えるのが正当である。
このように考えると、受信料凍結運動が受信料の支払い義務にもとるかのように思い込んだり、受信料義務化に口実を与えるかのように捉えたりして、凍結運動を頭から退けたり、運動への参加をためらったりするのは、受信契約が双務契約であることを的確に理解できていないことに由来する非合理的な委縮である。

「不払い」と「凍結」はどこが違うのか

ただし、受信料の支払い凍結は「相手方〔ここではNHK〕の債権を絶対的に否認する抗弁権ではなく、相手方の債権の存在を認めるけれどもその行使を一時的に制限する延期的抗弁権である」(島谷部茂「同時履行の抗弁権」『法学教室』1999年12月、26ページ)ことを認める点が、受信料「凍結」運動を「不払い」運動から一線を画す上で重要である。
政府から交付される税金や助成金、あるいは営利企業の広告料に頼らず、視聴者が負担する受信料で運営するという公共放送の強みを維持しようとする以上、受信料という債権そのものを否定するに等しい不払い運動には大義が欠けるのである。

以上のような見地から、「視聴者コミュニティ」は次のような資料を作成し、受信料凍結運動の大義を説明している。参照いただけると幸いである。

「受信料は無条件の支払い義務論である」との議論に関する説明資料
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/zyushinryo_toketu_shiryo.pdf
①1980(昭和55)年4月9日、衆議院逓信委員会における武部文委員の質問(抜粋)
②河野弘矩「NHK受信契約」(遠藤浩・林良平・水本浩監修『現代契約法大系』第7巻、サービス・労務供給契約、1984年有斐閣、241ページ)
③1999(平成11)年3月15日、衆議院逓信委員会における海老沢勝二NHK会長(当時)の発言(抜粋)

Q&Aを活用して受信料凍結で籾井会長リコールの声を届けよう
視聴者コミュニティ・運営委員会は、上で述べた受信契約の双務性に着目し、多くの視聴者が受信料凍結運動に正々堂々と参加してもらえるよう、会に寄せられた質問を参考にして、「受信料支払い凍結の手続きについて:Q&A」をまとめた。その中で、多くの方々に特に活用していただきたいことを最後に摘記しておきたい。

①受信料凍結の意思を自分だけに留めず、NHKへ伝えること。
受信契約担当窓口電話:0570-077-077)

②なぜ凍結するのかを伝える応答例:
(例1)「受信料の支払いは税金と違って視聴者の一方的な義務ではありません。受信契約は視聴者とNHKの相互の信頼関係の上に成り立つ双務契約です。『政府が右という時、NHKは左とは言えない』などと言った籾井さんが会長に居座っているかぎり、NHKが政治から自立した公正公平な放送をすると信頼できませんから、視聴者はそういう籾井さんが会長を辞めるまで受信料の支払いを凍結する抗弁の権利があります。籾井さんが会長を辞め、政府が右と言おうが左と言おうが、NHKは自主自律の放送を貫くという信頼が取り戻せたら、凍結した分も含めて受信料の支払いを再開します。」

(例2)「オバマ大統領も従軍慰安婦は女性の人権を侵害するものだと発言しました。そんな従軍慰安婦を『どこの国にもあったこと』などと平然と発言した籾井さんは公共放送の会長として失格です。そんなNHK会長に受信料から年額3,092万円もの報酬が支払われるなんて、とても納得できません。今すぐ、籾井さんに会長を辞めてもらうよう、抗議のつもりで向う半年間、受信料を凍結します。籾井さんが会長を辞めたら、その時から、凍結した分も含めて受信料の支払いを再開します。」

初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載 http://sdaigo.cocolog-nifty.com
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔opinion4835:140502〕