哀しい零戦

私は、未だ観ていませんし、また、観る気も無いのですが、映画「風立ちぬ」に登場する第二次大戦中の名戦闘機とされる「零戦」(零式艦上戦闘機)について、大方の日本人は、未だに戦時中の宣伝に惑わされておられるのではないか、と危惧しまして本稿を投稿させて頂きました。
この当時の海軍の戦闘機は、当時も今も、軍用機として厳密に観れば、欠陥機です。 まず、防御能力が殆ど有りません。 当時の最高能力を有するパイロットが搭乗して攻撃に徹してこそ最大の能力を発揮出来得る機体であり、標準以下の能力の者では、撃墜を免れることは困難な機体でした。 理由は、エンジンの能力が小さかったのです。 エンジン出力が小さい機体は軽くしなければならず、必然的に防御のために燃料タンクやパイロット防御のための装備を全く備えないか、軽減しなければならなかったのです。
次には、哀しいことに零戦が登載していた無線機は、通信が出来ない代物であったことです。 一度、零戦に搭乗すると、僚機とも基地とも通信が出来なかったのです。 彼の撃墜王であった故坂井三郎氏は、ラバウル航空隊所属の時期に、役にも立たない無線機ならば、アンテナ線等切って捨てろ、とばかりに零戦登載のアンテナ線を支える木棒を切って捨てたそうです。 これでは、作戦遂行にも難儀したでしょうが、一般人は、この事実を知っていたのでしょうか。
このような代物に搭乗して米英の最新式軍用機と戦火を交えた当時の搭乗員は、今となっては物も云えない存在になり、その悔しさを図ることは出来ませんが、記録映像に少しは残ったものがあります。 B29爆撃機に依る本土空襲時に、迎撃に出た零戦が記録されて居るのがそれです。 零戦のエンジンでは、B29が居る高高度には、なかなか達することが出来ず、B29と向き合ったとしても、その集中管制された機銃群に次々と撃墜されて行く有様でした。 B29の搭乗員が酸素マスクをつけて居ないのにも注目です。 この時代にあって、既に、B29は、与圧室完備でした。 近代的爆撃機に、時代遅れの欠陥戦闘機で立ち向かう搭乗員の無念が偲ばれて正視に堪えません。

http://www.youtube.com/watch?v=DC8bDCfZ_Cc
1945 Zeros Attack B-29 Formation over the Fujiama

例え、娯楽映画であっても、事実は事実として精確に物を観ることが必要でしょう。 この哀しい戦闘機の本質を知り、仔細な事実からでも敗戦は必然的であったことを知らねばならないと思います。