困難きわまる「使用済み核燃料」取り出し

東京電力福島第1原子力発電所の4号機5階にある使用済み核燃料プールから燃料を取り出し、地上のプールに移す作業が11月中に始まる予定だ。

1531本もの燃料棒撤去作業

東電は11月6日、4号機建屋内の燃料取り出し現場を公開した。爆発で吹き飛んだ屋根は鉄骨鋼材で覆われていたが、プールには使用済み核燃料1331本と新燃料202体の計1531体が保管されていた。事故当時の大きな瓦礫は取り除かれていたが、爆発によって小さな瓦礫が落下しており、燃料棒撤去の障害にならないか心配されている。吊り上げた燃料棒に瓦礫が引っかかり重大事故につながりかねないからだ。

燃料取り出し作業は、燃料集合体22体が入るキャスクと呼ばれる輸送容器(全長5・5㍍、重さ91㌧)をプールに沈め、核反応が起きないよう1体ずつ収める。容器はクレーンで地上に降ろし、輸送車で共用プールに運び込む。2つの容器でピストン輸送しても全て完了するまでには1年余かかる難作業になるという。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は「潜在的には非常に大きなリスクを持っている。汚染水以上に心配なところがある」と指摘。経済産業省幹部も「燃料取り出しで瓦礫が引っ掛かる状態がどのように発生するのかわからないので、十分慎重にやる必要がある。引っ掛かった状態で無理して引き抜かないことが大事だ」と述べている。

放射線量の高い1~3号機はさらに深刻
朝日新聞11月7日付朝刊は、「1~3号機のプールから燃料棒取り出し作業を始めるのは、3号機が最も早く2年後の15年前半が目標だ。原子炉建屋の放射線量が高く、作業員が容易に近づけない。除染や遠隔作業設備の設置が必要だ。プールから燃料取り出し終える時期は未定だ」と、1~3号機の作業の難しさを指摘している。

「廃炉終了は30~40年後」

日経新聞同日付朝刊も、「4号機以外は燃料プールの隣にある原子炉に燃料が入っており、綱渡りのような作業が迫られる。全号機から搬出を終えるのは最低でも18年度になる見通しだ。燃料棒撤去のあとに残された難関は、原子炉内で溶け落ちた燃料『デブリ』を取り出す工程。扱いを誤ればデブリは臨界に達し爆発する恐れもある。東電と政府の計画では、廃炉終了は30~40年後と見込んでいる」と、作業の険しさを憂慮していた。

汚染水対策にも四苦八苦

また、依然増え続ける汚染水対策に現場は振り回されている。放射線のリスクを減らすカギとなるのが放射性物質除去装置ALPSだが、セシウムしか除去できず、トリチウムなどが未処理のまま汚染水タンクに貯まる一方だという。

年末で福島事故から2年10カ月。なお新たな難題が次々発生し、国際的関心も高まっている。日本の信頼回復のためにも、収束へ向けた官民一体の努力こそ最重要政治課題だ。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2443:1301112〕