4月8日、宮城県の村井嘉浩知事は定例記者会見で、47都道府県のほぼすべてのスポーツが一堂に会し、持ち回りで開催されてきた国民体育大会(2024年から「国民スポーツ大会」に改称)の開催方法について、「継続する必要があるのか検討を始める。廃止も一つの考え」と述べたとの報道があった。見直しに賛同の知事も現れている。ようやくその声が 上がったかの思いがする。規模の縮小など図られてきたものの、開催自治体の負担がかなり大きかったからだ。「国体」は、開会に際して天皇(夫妻)を迎えることになっている。全国植樹祭、豊かな海づくり大会と並んで、天皇を迎える三大イベントの一つである。天皇の登場場面が一つ減ることになると、宮内庁は慌てているかもしれない。
そもそも、都道府県代表の競技者が一堂に集まって競い合うことにどんな意味があるのかを考えてしまう。そのために自治体にとって、経済効果どころか、競技場やスタッフの確保、選手たちの受け入れの準備や実施は財政的にも大きな負担になってきたのだと思う。敗戦後のしばらくは、地域復興や地域振興の促進に役立っていたり、スポーツに親しむきっかけになったり、郷土愛を深めたりする時期もあったかもしれない。しかしいまはどうだろう、スポーツ観戦はテレビやネットでも大方見られるようになったし、スポーツ自体が趣味や健康志向へとシフトしている時代となった。にもかかわらず、勝敗第一主義がもたらす高校・大学の体育会、スポーツ界のパワハラ・セクハラ、暴力事件や違法薬物事件などの不祥事が絶えない。なお、冬季の国体は開催地の難航から、都道府県にまたがり種目別の分離開催となっているのが現状である。
昨年2023年の鹿児島国体は、2020年第75回として開催予定がコロナ流行のため延期、三年の空白後の10月7日から、回数を付けず「特別国民体育大会」として開催されている。来年は、「国民スポーツ大会」として佐賀県で開催されるというタイミングで、村井知事の発言であったわけである。
”最後の国体”「燃ゆる感動かごしま国体」の開会式には天皇夫妻が出席、「おことば」を述べ、航空自衛隊のブルーインパルスによるアクロバット飛行がなされた。自衛隊にとってはここぞと、広報のチャンスと思ってのことだが、スポーツとなんの関係もない。前日には試験飛行も行ったという。その出費を考えてしまう。また、この国体には、秋篠宮夫妻、佳子さん、三笠宮信子さんも訪れている。宮内庁も「広報効果」をねらってのことだろう。写真は「FlyTeamニュース」から拝借した。
オリンピックについても同様のことがいえる。2年延期しても2022年実施した東京五輪にみるように、その開催地決定から、国立競技場建設、選手村建設・処分、大会運営にいたるまで、スキャンダルや汚職まみれで終わった。「選手ファースト」どころか、コロナ禍で開催され、五輪のおもて・うらで暗躍する人たちがいるのがよくわかったのである。2030年を目指して札幌の冬季五輪の招致運動が進められてきたが、2023年末時点で、招致運動の停止がきまった。IOCでは、30年、34年、38年の開催は、フランス、アメリカ、スイスと一本化されつつあるという。コロナ流行、東京五輪の一連の不祥事、機運が盛り上がらなかったことがその要因であった。
五輪開催国は、経済効果どころか負担が大きいので、毎回、名乗りを上げる開催国は少なくなり、先細りの感を歪めない。そもそも、国民には、実施時期の選択や実施競技の種類の出入りなど不明な部分も多い。各スポーツ競技は、それぞれ世界的規模の大会を持っている。そこで競えばいいのではないか。また、さまざまな民族や出自が異なる人々によって構成される国単位で競うというよりは、個人やチームで競う場があればよいのではないか、と思ってしまう。
また、大阪万博には、60か国の参加予定が40か国になり、建設費だけに限っても、工事費、人件費の高騰で、当初予算1250億から2350億と2倍近くになった(2023年11月現在)。他人ごとではない。大阪府民、大阪市民ならずとも3分の一は国の税金から拠出されるのである。
「万国博覧会」という発想は、もはや、前世紀、いや19世紀の遺物ではないのかと。航空機もネットもない時代は、各国情報の集約・拡散の場であり、人的交流の場であり、開催国の国威発揚にもなり、経済効果も大きかったのかもしれない。
今回の大阪万博への国民の関心はといえば、昨年12月、大阪府と大阪市が全国6000人(大阪府民4000人、その他2000人)を対象に行った世論調査によれば、以下のような結果で、地元でさえ盛り上がってないのがわかる。
「万博を知っている」88.6%
「万博に行きたい・どちらかといえば行きたい」33.8%
(21年51.3%、22年41,2%)
国体も、オリンピックも、万博も、国民の生活向上に役立つことは何一つない。私はどれも不要だと思っている。
初出:「内野光子のブログ」2024.4.19より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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