日本が主導し、提案した核兵器全廃を目指す決議案が11月4日の国連総会第1委員会(軍縮)で、164カ国の圧倒的賛成多数で採決された。
毎日新聞11月5日付夕刊は、「反対は北朝鮮だけ、棄権14カ国。核保有国では米国、英国、フランスが賛成し、米国は共同提案国にも名を連ねた。中国とロシアは棄権した」と報じた。12月の国連総会で正式に採択される。
核不使用声明では賛成に踏み切る
また、10月21日(現地時間)に同委員会が発表した「核兵器の人道上の影響に関する共同声明」には、日本を含む125カ国が賛同した。声明には「いかなる状況下でも核が二度と使われないことが人類生存につながる」と明記された。
日本は広島、長崎への原爆投下、太平洋ビキニ環礁での水爆実験、東京電力福島第1原発事故と4度も核被害を受けたが、今回が初めての賛同だった。
過去3回の賛同拒否について政府は「『いかなる状況下でも……』という声明のくだりが、米国の『核の傘』に依存する日本の安全保障政策に合致しないと主張してきた。この点、今回の賛同を多とするものの、核政策に対する政府の根本的な姿勢が変化したと、単純に受け取れない。
日本政府は「核抑止論」を絶対視
核不使用声明が発表された同じ日、日本は米国の「核の傘」に頼るオーストラリアが発表した別の声明にも賛同した。そこには「核兵器国を実質的かつ建設的に関与させない限り、核兵器を禁止するだけでは核廃絶は保証されない」と記されていた。これは過去4回の核不使用の声明を主導してきたスイスをはじめ、一部有志国が目指す核兵器禁止条約へ向けた動きを否定する内容ではないだろうか。
政府は「核抑止論」を絶対視し「核なき世界」のビジョンを軽視する向きがあることは事実だ。この際、核廃絶を求める世論をさらに増幅させ、冷戦時代の思考を引きずる国策に変化を与えていきたい。
パウエル元米国務長官が「核は軍事的に無用」
米軍制服組トップと国務長官を務めた、コリン・パウエル氏が朝日新聞7月10~11日付朝刊のロングインタビューで重要な発言をしている。本紙第364号(7月22日付)でも一部紹介したが、注目すべき視点を紹介しておきたい。
「まともなリーダーならば、核兵器を使用するという最後の一線を踏み越えたいとは絶対に思わない。使わないのであれば、基本的には無用だ。政治的に見れば、核には抑止力があり、北朝鮮は核兵器を持つことで自国の力や価値が増すと考えている。だからこそ私は核軍縮を提唱している。核兵器をすぐにゼロにするのは難しい。しかし核廃絶という目標を持つのは良いことだ。各国は協力してコントロールし、封じ込めることが重要だ」との「パウエル発言」は、まさに正論である。
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