先日投稿した拙稿「日本人の倫理を問う」で触れた、大地に法権利を与えるという画期的 なボリビアの「パチャママ(母なる大地)法」の紹介記事を拙訳ですがお届けいたします。
法文の抄訳はここにありますが全訳はまだ見ておりません。http://www.gacetaoficialdebolivia.gob.bo/normas/verGratis/138877
ただし輪郭のおおよそは以下の紹介記事で理解できると思います。
初出、2013年2月26日
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■地球に法権利を与えるボリビア
http://share.banoosh.com/2012/09/17/bolivia-gives-legal-rights-to-the-earth/
2012年9月17日
母なる大地の法は、ボリビアを自然の尊重と保護に基づく新しい社会・経済モデルに導く ことになろう。
ボリビアは、自然界の開発・搾取と気候変動を停止させボリビア人民の生活の質を改善するために、自然の包括的な法権利を与える世界で最初の国となる。
草の根の社会グループによって開発され政治家に合意された母なる大地の法は、自然界に も人間と同様の地位を与えて、すべての生きとし生けるものの諸権利を承認する。
一度完全に承認されたこの立法は、生命とその再生、生物多様性および遺伝子組み換えか らの自由、清浄な水と空気、自然のバランス・システム、人間活動の影響からの回復、そして放射能や化学物質による汚染からの自由に対する 権利などが地球(大地)に与えられるだろう。
こ の立法は、大地とともに調和している生物の「共通の利益」を最優先にするというより広範な原理に基礎づけられている。その核心には、ひとつの生命体として の「パチャママ」(母なる大地という意味=原注)というアンデスの先住民族の世界観から生まれた大地は神聖なものであるという相互理解が 存在している。2010年12月 にボリビアの国民議会を通過し完全な立法のために道が踏み固められた諸権利の輪郭を描いた最初の法律は、母なる大地をひとつのダイナミズム(原動力)として次のように定義している。「相互依存と相互補完、および相関関係によって共通の運命を分かち合うすべての生物システムおよび生命有 機体の分割できない共 同体である」。
自然界と市民の福利(健康)を最優先させるために、持続可能な開発と産業の統制という開発政策によってボリビア政府は法的に拘束されること になる。経済は自 然の限界内で働くべきであり、国家は、再生可能なエネルギー技術を採用しエネルギー効率を増大させると同時に、エネルギーと食糧の自立を 目標とすべきである。気候変動に対処することは、将来世代の生命の保護を含意しているこの法の主要な目的である。温室効果ガスの高排出に責任をもっている 豊かな国々は、そ の環境部門の評価において気候変動の効果に見合うようボリビアを手助けすることを政府は要求している。2009年 のオックスファム報告によれば、干ばつの増加、氷河の融解および洪水によって、ボリビアは「とりわけ気候変動の影響に冒されやすい弱点がある」と指摘されている。
国際的なステージにおいては、平和を擁護するとともにすべての核兵器、生物化学兵器の 廃絶を提唱し、政府は母なる大地の権利にかんする理解を促進するために法的義務をもつことになる。2009年 のボリビア憲法の変更に続くこの立法は、法体系の全面的見直しの一部である。西洋的な開発モデルから切り離して、先住民族の「よく生 きるVivir Bien (to live well)」というコンセプト を基礎にしたより包括的な未来図への変更が表明されている。
こ の法律の提案は次のように述べている。「『よく生きる』ということは、自然を貶めない(破壊しない)行為と行動、および消費の形態に適合 することを意味する。それは生命との倫理的、精神的な関係を要求する。『よく生きる』とは、人生の十全な実現と集団的な幸福を企図している。」
ボリビアの社会運動組織5団体 を包括する「統一協定」が、この草案を準備した。彼らは、我が国の36の先住民族グ ループすべてと300万人以上を代表しており、その大多数の人々はいまだに先祖代々 の土地に住んでいる多くの小規模農民である。この法案は、産業のさまざまな影響から彼らの生活と多様な文化を保護する。
社会運動組織「ボリビア労働者・農民・組合統一連合」の指導者、ウンダリコ・ピントは、「法案は、全国的、地域的、および現地のレベルに応じて民衆に産業の 規制を可能にすることによって、産業をより透明なものにするだろう。」と語った。自然の開発・搾取からかけ離れた根本的な変化を表明して いるこの草案は、 鉱物資源を「神の賜物」として指し示し、さらに、母なる大地は「豊饒で神聖であり彼女(大地)の子宮に存在するあらゆる生命を養い育む命 の源泉である。彼 女(母なる大地)は、永続的なバランスと調和および宇宙との相互関係と共にある。」と述べている。
新しい諸権利が促進されそれらが確実に遵守されるために、「母なる大地省」が設立され ることになっている。しかし今のところ自然資源の輸出に依存する経済によって、鉱山会社から外国通貨の三分の一近く―年間約3億ポ ンド―の収入を得ているボリビアは、産業の要求と新しい責務との比較検討が必要となるだろう。
●ボリビア熱帯雨林
来たる数か月以内に通過すると思われる完全な立法は、議会における重要な多数派で与党 の「社会主義への運動」によって、どのような大きな反発にも直面することはないだろう。その指導者エヴォ・モラレス大統領は、2010年4月にボリビアで開催された「気候変動にかんする世界民衆会議」でイニシアティヴのためのコミットメントを表明し た。
母なる大地の法は、つぎの諸権利を含んでいる。
自然の進行と生命の規範を維持する権利。
遺伝子を改造したり細胞構造を変化させることのない権利。
人間の変更を含まない生命サイクルおよびプロセスを持続する権利。
清潔な水への権利。
清浄な空気への権利。
平衡状態のためのバランスの権利。
放射性および有毒な汚染のない権利。
現地の居住コミュニティと生態系のバランスに影響を与える巨大な基盤整備および開発計 画に冒されない権利。
さらにこの法は、「すべての核兵器、生物化学兵器の廃絶」および「平和」と「調和」を 奨励し促進する。
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■パチャママ法の制定でボリビアのGMO禁止!(英文ニュースより)
ボリビア法タワンティンスーユは、大規模農園と遺伝子組み換え作物を撤廃した。(2012年10月16日、Henrry A. Ugarte-eldeber.com.bo-ayi)エヴォ・モラレス大統領は、「よく生きるための 統合的発展および母なる大地の法」を制定した。昨日エヴォ・モラレス大統領が発表した母なる大地の法は、ケマド宮殿で感動的な式典が あり、社会全体の防御システムおよび諸部門の創設は驚きをもって迎えられた。
国 家大統領エヴォ・モラレスによって発表された「よく生きるための包括的発展および母なる大地の法」は、大土地所有や地主制度、および大土 地所有者や企業が 手中に収めているその他の部門にかんする集中排除を規定しており、国内における遺伝子組み換え種子の導入、生産、利用および商業化の自由 を禁止している。
もっとも顕著な新しい基準は、公共用地の大部分は女性と先住民族に配分されるべきだと 規定し、母なる大地の構成要素の利用、アクセス、所有にかんする統制および外国人所有者への規制をも命じている、「気候公正基金という公 共防護システム」をつくったことである。
成立した時モラレスは、この立法は環境にダメージを与えることなく天然資源を利用する ことを認めていると語った。「むしろこの法案でわれわれが提案するのは、母なる大地とともに調和と相補性の中でいかに生きるかということ である」と語った。
大統領はまた、人は年老いた世代を守るために財産を蓄積することを考えないだろうかと 尋ねられ、富の蓄積は「自然を破壊する」ことの結果であると述べた。
この不安を避けるため、政府は適切な所得で品位(尊厳)を保証しなければならない、と 大統領は指摘した。「主にこの法の採掘にかんする問題点を履行することが現在の課題である。」と語った。
副大統領アルバロ・ガルシア・リネーラは、自分としては「生産し作り出すために採掘し 鉱石を獲得する場合、母なる大地の保護と必要との間にバランスを見出すことをしなければならない。」と語った。
さらにまた昨日、指導者たちは新法の内容にかんする無知に驚きをもって生産部門に反応 した。
「小麦生産者およびオイルシード(脂肪 種子)国民連合(ANAP)」に聞いたというデメトリオ・ペレスは、産業の開発を妨げるため政府に不満を抱いているのでGMの禁止問題に焦点を当てたが、新基準の全体の範囲には不注意だったと語った。
だ がペレスは、とりわけ規制があらゆる部門に複雑に関係する必至の段階に入るとこの規定をめぐって多くのことを切り換えうると考えている。 「もしわれわれが 開発を禁止し続けると考えるなら、結局、開発を主張している他の国々に依存して基盤を失うだろう。GMのおかげで生産量を増大させている パラグアイの場合 がそうである。」と語った。
一方では、「東部農業機関(CAO)」会長のフリオ・ローダは、新法に不注意であっ た、帰らねばならない、と言って謝罪した。
「ボリビア家畜連盟(CONGABOL)」会長のマリオ・ウルタードは、INRAによ る5000ヘクタールの土地没収に対するより啓発的な除外規定という重要なステップを踏んできたが、この新法は不確実なため元に戻るようになる、と簡単に指摘した。
●基準点の列挙
神聖:この法は、母なる大地は神聖であり、共通の運命を共にする生命存在であり、すべ ての生命系の分割することのできない共生体で成り立っているそれ自体ダイナミックな生命システムであるとみなしている。
統制:それらの権利を保護することは、最初の制定で詳細が述べられている以外は規則に 従って、すべての権能を農業環境裁判所、検察、母なる大地防衛省が担当することになる。
公正:この基準はまた、気候変動の被害に遭った人々およびボリビア人民の包括的開発を 求める権利を認識し「気候正義」にかんするコンセプトを含んでいる。
資源:気候変動を緩和する行動を促進するために、行政州や外国金融の資産によって「母 なる大地と気候正義にかんする多民族基金」を創設する。
分配:また土地は、まだ土地を持たないアフリカ系ボリビア人、先住諸民族、小作農、女 性など異文化間のコミュニティに優先権を与えて公平に配分され、再配分され、贈与されるべきだと言明している。
規制:またこの規則は、この基準の原則の範囲内にある鉱業や石油下落のような経済活 動、および母なる大地の構成要素の利用・アクセス権をもつ外国人所有者の規制と統制を確立する。その調整のために120日 はかかるだろう。
●食糧確保のための措置
農村開発省副大臣で代表のアルマンド・サンチェスによれば、生産性革命法、種子対策、 農業保険、および農業環境監視所は、国家の食糧安全保障を確保するために政府が推進する施策の一環である。
彼は、農産物の生産を増大し強化するため国内の生産部門への援助を強調した。
また、生産性革命決議の取り組みが公表されてから、政府はいくつかのプロジェクトを実 施することによって小規模農家および田舎の生産者団体を援助していると説明した。
それらのうちのひとつは、化学肥料や有機肥料を生産し良質な種子の生産を促進する種子 の戦略的事業を実施することにあると語った。
その点に限れば、自然災害の場合、国民農業保険は気候条件が不利なために問題が繰り返 されている小規模生産者への配慮を優先させる。農業環境監視所の場合には、生産コストと需要の領域にかんする重要な情報を提供することに なろう。
(以上、松元保昭訳)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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