昨年暮れ就任した橋下徹・大阪市長は、矢継ぎ早に市政改革提案を打ち出している。その一つとして、「関西電力原発を可及的速やかに廃止する」ことなどを盛り込んだ提案を関電株主総会で突きつける方針を打ち出した。
「送電部門の別会社化」も求める
大阪府と大阪市の「エネルギー戦略会議」は3月18日、大阪市役所で開かれたが、6月開催予定の株主総会へ提出する株主提案を論議。この日の会議に橋下市長は出席しなかったが、特別参与の古賀茂明氏(前経産省官僚)飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所長)らが練ってきた提案骨子が固まった。「関電原発廃止」のほか、送電部門の別会社化、再生可能エネルギーによる発電所の導入、保有株など不要資産の売却、電気事業連合会からの脱退などを盛り込み、積極的に情報開示を求めていく考えという。定款変更を伴う問題もあり、同戦略会議は引き続き関電側とも議論し、提案事項を整理して来月上旬の最終決定を目指す。
大阪市は筆頭株主だが…
大阪市は関電の発行済み株式の約9%を持つ筆頭株主だが、神戸市や京都市など他の株主の協力を取り付けなければならず、現段階で実効性を予測し難い。ただ、「電力会社の大株主が、原発事業にはリスクがあるということを明らかにした点で意味がある」(西尾漠・原子力情報資料室代表)提案であることに違いない。また、関電に原発稼動の是非を問う住民投票条例を直接請求した市民グループの今井一事務局長は「大阪市提案の理念には異論ないが、関電に影響を与えるには多くの個人株主を味方につける必要がある」と助言していた。
橋下市長は市長当選後の会見で、「(原発の是非を問う)住民投票に割くエネルギーがあるなら、6月の株主総会での株主提案で過半数になるような力を借りたい」と主張。今年になってからも「株主総会で総会屋のように関電を困らせてやろうということじゃなく、大阪市という立場で住民が一番聞きたいことを関電とやり取りしたい」「原発は事故リスクが非常に大きく保険が成立しない。成立しない以上は損な事業をやるべきではないというロジックで株主提案をする」などと、報道陣に語っている。
東京都は東電に対してどう出るのだろうか
大阪発行の朝日新聞19日付朝刊を見たら、東京電力株を保有する猪瀬直樹副知事が「大阪市案は原理主義的な面がある」との談話が付記されていた。これだけでは何とも判断しにくいが、東電を批判している猪瀬氏だけに〝本音〟でないような気もする。大株主の東京都が東電株主総会でどんな発言・提案をするのか、これまた興味深い。
関電・大飯原発再稼動について野田佳彦政権がどんな方向を打ち出すか、原子力政策の重大な岐路に立たされていると言って過言ではあるまい。橋下市長の言動を警戒する人でも、この「関電株主提案」をじっくり見届ける必要があろう。
(大阪本社発行の朝日、毎日両紙も参照)
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