(2025年2月23日)
2月23日、天皇(徳仁)の誕生日。もちろん、とりたてて目出度い日ではない。思惑ある人だけが大袈裟に空虚な祝辞を述べ合う日なのだが、その空虚さにシラける日。そして、国民一人ひとりの主権者意識や、人権意識の強靱性が試される日。おべんちゃらではない、言いにくいことを言える社会であるかの真価が問われる日でもある。
今だに臣民根性の染みついた愚民連中が「一般参賀」に動員されて、天皇一族がこれに手を振っている滑稽。なんともおぞましい景色。だが、この滑稽、このおぞましさは本日限りのものではない。
愚の極みは、産経新聞の本日の社説の末節。これ1925年の記事ではない。2025年2月23日、今朝の朝刊に掲載されたとおりなのだ。
日本の皇位は初代の神武天皇から第126代の天皇陛下まで一度の例外もなく、男系(父系)の血統で続いてきた。これからも皇統は永く受け継がれていく。世界で最も古くから続く皇室を戴(いただ)く喜びを、この佳(よ)き日にかみしめたい。
「初代から当代まで一度の例外もなく、男系(父系)の血統で続いてきた」は、言うまでもなくフィクションである。が、仮に真実だとして、一体それがなんだというのだ。ミミズだって、オケラだって、生きとし生けるものにして万世一系にあらざるはなし。
「これからも皇統は永く受け継がれていく」「世界で最も古くから続く皇室を戴く喜び」「この佳き日にかみしめたい」は、どっぷり浸ったカルトの世界。皇統・皇室はなにゆえに価値ある存在なのか説明抜きで、ひたすらに「アリガタヤ、アリガタヤ」と呪文を唱える。これが、カルト・天皇教である。
あらためて思う。日本の民主主義は天皇制に抗うところから生まれ、天皇制に対峙して育ってきた。もちろん、今もなお。
実は、我々の身の周りには、下記のとおり、天皇制の遺物が満ち溢れている。真っ当な主権者は、意識的にこれを払い除ける覚悟が必要だと思う。
・日本国憲法は朕の1字から始まる。
日本国憲法は、10章99か条に4か条の補則があって全103か条からなるが、これに貴重な「前文」が付されているのは周知のとおり。そして、「前文」の前に「上諭」といわれる一文が付いている。これが、「朕は」で始まるのだ。「朕は、…この憲法を交付せしめる」と結ばれる。
憲法の第1章は「天皇」である。第1条から8条までが天皇に関する条項。旧「大日本帝国憲法」からの構造をそのまま受け継いだ構造。残念ながら、80年近く、この構造を改正することができずに、今日に至っている。
・三権の長は天皇の任命。
天皇は政治的な権能を一切有しない。が、三権の長を任命する。もちろん、形式的なものだが、まことにもってつまらぬ形式主義。
・内閣総理「大臣」・国務「大臣」とは何たる屈辱。
律令制下では、文字どおりの「大臣」であったろう。これを模した近代天皇性でも、「大臣」に違和感はなかったろうが、戦後80年を経ていまだに「大臣」で恥ずかしくないか。
・即位式のバンザイ。国会開会式の愚かさ。
で、大臣や議員らが、ことあるごとに、「テンノーヘーカ・バンザイ」をやる。どうやら酔余の余興ではなく、素面でやっているようである。
・国歌は「君が代」、国旗はアマテラスの象形。
いまだに、我が国の国歌は天皇讃歌である「君が代」、国旗は天皇の祖先神「アマテラス」の象形である日の丸とされている。
・叙位叙勲・褒賞制度の威力。
子どもがオモチャをもらって喜ぶように、叙位叙勲・褒賞をむやみにありがたがる「オトナ」が少なくない。天皇制の小狡いところ。そして、限りなく汚いところ。
・国民の祝日は、天皇教の「祭日」である。四方拝・紀元節・皇霊祭・新嘗祭・明治節・天長節…と限りがない。今さら言うまでもないことだが。
・御苑・恩賜公園・御製・賜杯・皇室御用達・天皇賞、等々のオンパレート。東京六大学で優勝を争っている選手諸君、天皇杯の授与を受けることは、いったい名誉なことなのか。天皇の名による戦争で、多くの先輩たちは戦死を余儀なくされたではないか。天皇杯に抵抗はないのか。
・元号使用強制の不都合
国民の私生活に天皇制を浸透させようという試みの最たるもの。意識的に、元号使用を拒否したいものである。
・メディアの天皇・皇族へのいたずらな敬語の使用には虫酸が走る。普通にやったらよかろうに。
・神宮・神社・靖国・護国神社・忠魂碑…。全国至るところに、天皇教と、天皇の戦争の遺跡・遺物が。
・天皇・皇室・皇族の税金と広大な土地の無駄遣い。国民の困窮を他人事にしながらの、働かざる者の栄華。
・最後に、皇族の絶滅危惧回避策としての女性天皇問題。
ここしばらくは、憲法改正を発議して、天皇制を廃絶する展望は描きにくい。それよりは、安倍派主導の男系男子主義の墨守で、天皇制の自然死を待つ方が、現実的なのかも知れない。
いろんなことを考えざるを得ない、天皇誕生日である。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記 改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。」2025.2.23より許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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