奈良・京都には何回か来ているはずなのに(3)

尹東柱の詩碑を訪ねて

翌日、11月14日は、午後2時過ぎの新幹線をとっているので、午前中はフリーだった。まさに紅葉の季節、外国人観光客も少ない、この時期、出かけたいところもあったが、欲張らず、ホテルの目の前の京都御所に行ってみることにした。大した予備知識もないままなのだが、前日の「皇室の名宝」展の続編ともなろうか。
ちょっとその前に、同志社大学の今出川キャンパスに尹東柱の詩碑があるはずと、出かけてみると、この時期ながら、キャンパスは出入り自由とのことだった。新島襄の「良心碑」やレンガの建物を縫っていくと、その詩碑は、礼拝堂とハリス理化学館のあいだの木陰にあった。
尹東柱(ユン・ドンジュ、1917~1945年2月16日)は、キリスト教信者一家の旧満州出身のコリアの詩人で、同志社大学留学中の1943年7月に、民族運動にかかわったとして、治安維持法違反容疑で逮捕、翌年、懲役2年の実刑判決を受けた。1945年2月16日福岡刑務所で死因不明で獄死している。尹東柱は、少年時代から詩作を続け、雑誌などに投稿していた。没後1948年に出版された詩文集「空と風と星と詩」は、多くの人に愛され、1980年代からは、日本語訳も何回か出版されて、知られるようになった。その後、同志社大学のコリアクラブなどが中心となって、1995年の命日に、この詩碑がたてられたという。

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門衛でもらったキャンパスマップ、詩碑は②礼拝堂と③ハリス理化学館の間との案内を受ける

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尹東柱詩碑、そばにはムクゲが植えられていた。その詩文は反射してよく撮れなかったのでネットから拝借したのが下記である

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左手前からハリス理化学館、至誠館、正面がクラーク記念館

 

京都御所へ、公開ながら発熱チェックと消毒と

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今出川御門から京都御苑に入り、右手の近衛邸跡は児童公園になっていて、土曜日だけに親子連れでにぎわっていた。左手が桂宮邸跡ということで、正面に翔平門を見て、右手の角を曲がると京都御所への受付所が遠くに見えてくる。広い砂利道は気持ちはいいが、歩きにくい。受付では体温計測と手指消毒後、番号札を渡されての入場である。順路が決まっていて、係員があちこちに立っている。歩けるのは御所の南の半分ほどで、新旧の車寄せを経て、北の翔平門に対して南の正門は建礼門で、最も格式の高い門ということであった。紫宸殿の南庭に入る承明門があるが、見学者は、南東の隅にちょこっと入れるだけであった。北に進むと池があり、その前には小御所、蹴鞠の庭、御学問所があり、さらに北には御内庭があり、御常御殿と続き、天皇の生活の場が続く。紫宸殿の北にある清涼殿は、ただいま屋根の葺き替え中で、覗くこともできなかった。造営はいずれも16・7世紀、江戸時代のものが多いが、新御車寄せは、大正天皇の即位の礼のために建てられ、なかには小御所のように焼失のため1954年に建てられたものもある。40分ほどで回れただろうか。京都御所は約11万㎡、南東にはほぼ同じくらいの広さの大宮御所と仙洞御所があるが、参観には許可が必要で、桂離宮や修学院離宮と同じ扱いなのだろう。それにしても、御苑は広い。東西約700m南北約1300mの92ヘクタール、御所部分が11ヘクタールという。

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見学の順路は矢印の通りであった

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紫宸殿の南庭の隅から、後方に見えるのが工事中の清涼殿

東京の皇居といえば、宮内庁管理部分が115ヘクタール、外苑など含めると230万ヘクタール。北の丸公園、東御苑と開放されてきたが、都心の115ヘクタールの緑地は貴重である。まだまだ、公開できる部分がある、というよりは、現在の天皇家の住まいもある約50へクタタールの赤坂御用地内に、皇族方がまとまって住むこともできるはずである。皇居が全面開放されれば、国民や都民の憩いの場所にもなり、災害時の避難所にもなるのではないか。用地不足でままならない、さまざまな施設もできるかもしれない。そんなことも考えてしまった御所見学だった。

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正面のイチョウの木は一条邸跡の角、その先が乾門であった

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金色に輝いていたイチョウの木を思わず見上げてしまった。足元の落ち葉は、意外と小さいものばかりで、前掲の順路写真の右下に並べてみた。モミジの葉よりよほど小さいのがわかる

初出:「内野光子のブログ」2020.11.21より許可を得て転載

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