GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、今年7-9月の年金運用で、7兆8899億円の大幅な損失を出した。中国発の世界同時株安の影響をもろに受けた結果であるが、その背景には、GPIFが国債購入比率を減らし、株式購入比率を増やしていたことがある。
GPIFの年金運用損失は、安部政権にとって大きな打撃となる。
安部政権の高支持率は「円安・株高」に(だけ)依存しており、黒田日銀のQE(金融の質的量的緩和)とGPIFによる株価維持は、安部政権を支える二本柱となっていた。
その第二の柱が崩れようとしているからだ。なぜ崩れるか?理由は、二つある:
(1)「高収益による年金資産の増殖」のためとはいえ、公共の財産である年金の運用方式を、低リスクの国債から高リスクの株式(一部は格付けの低い「ジャンク債」も)に移行してよいものか、という批判がたかまるだろう。GPIFは、「損失は一時的なもの」と弁明しているが、今後損失の出ない保証は全くない。GPIFがその運用方式を、今まで以上に「ハイリスク・ハイリターン」な方式に傾斜させることはできない。
(2)「GPIFによる株価つり上げ」はすでに効かなくなっている。これまでは、GPIFの運用する年金基金は135兆円にも上る巨額であり、GPIFが数兆円を株式市場に投入するだけで株価が大きく変動した。「株式市場のクジラ」と言われたゆえんである。だが、GPIFの運用資金は、巨額とはいえ無限ではない。25%の国内株式運用枠は11月27日ですでに24.4%まで使われ、国内株式市場への介入資金はわずかしか残っていない。
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〔study678:20151201〕