今年も友人、知人から、たくさんの年賀状を受け取った。それらの一枚一枚を手にして強く印象に残ったのは、市民の間で安倍首相とその政権に対する不信感が前年に比べて一段と深まっていることだった。
私はこれまで毎年、多くの友人、知人と年賀状の交換をしてきたが、これまでの年賀状の文面といえば、「明けましておめでとうございます」とか「初春のお慶びを申し上げます」とか、あるいは「謹賀新年」とか「賀正」といった、いわば新年を言寿ぐ決まり文言や、旧年中の厚誼に対する謝意と自分や家族の近況・消息を伝える文面が大半であった。
が、ここ数年、世界や日本の政治・社会状況に対する感想、それに自らの政治的主張や決意を表明した年賀状が増えてきたように思う。以前は、年賀状では政治的なことへの発言は控えるというのが一般的な慣習だったが、年賀状でも政治的なことに意見を述べる人が増えてきたということだろう。
今年は、安倍政権が昨年中に次々と強行した政策に言及した文面が目立った。その強行ぶりは、一部の有権者をして「安倍政権のやりたい放題に腹立たしいことの多い一年でした」(東京都中野区・元生協職員)、「腹の立つことばかり。数え上げるときりがありません」(東京都品川区・元政党書記)と言わしめたほどだった。
中でも、まず、安倍首相と自民党が、暮れの臨時国会で改憲案を憲法審査会に提示しようとしたことが有権者の反発を招いたようだ。例えば――
「安倍極右政権は昨年、平和憲法の改悪案を国会に提起できませんでした。……平和を守る日本国民の闘いは今年もたゆみなく続きます。孫子の代にまで平和国家日本を引き継ぎましょうぞ」(東京都練馬区・元新聞記者)
「多くの人びとの幸せといのちを脅かす政治の暴走をなお止められずにいます。しかし、安倍首相が昨年中に何としてもやりたかった改憲発議=9条に自衛隊を書き込み、アメリカの戦争に加担させる=は阻んでいます。そこに希望があります」(東京都杉並区・元労組書記)
そのほかにも、自民党による改憲を拒否する文言が多々あった
「憲法や民意無視の政治、格差・貧困の拡大など心配事が多いです」(東京都小平市・元生協役員)
「日本人民の57%が憲法を改める必要なし、と思っているようです」(千葉市・元会社員)
「『戦争のない世界』の実現をひたすら祈念します。安倍政権の憲法いじりは断固反対です」(埼玉県上尾市・元新聞記者)
「平和憲法の遺伝子組み換えを狙う改憲勢力と四つに組んで戦争への道を封じましょう」(長野県諏訪市・大工)
「安倍改憲。ぜひともSTOP!」(東京都国分寺市・弁護士)
「民主主義無視、ウソとごまかしのアベ政治を許さない。日本国憲法の正念場です。民主主義の正念場です」(東京都千代田区・出版社代表)
「九条改憲論外、安全保障は軍事でなく徹底した平和外交で向き合ってほしい」(東京都昭島市・元会社員、元教員)
安倍政権が、米軍基地建設のために沖縄県名護市の辺野古沿岸部に土砂を投入したことに衝撃を受けた人も多かったようだ。
「昨年、私が最も強く衝撃を受けたのは安倍政権による沖縄・辺野古への土砂投入です。本土でいえば松島湾を埋め立てて米軍基地をつくるという話です。知事選挙に示された県民の意思は完全に無視されました」(東京都杉並区・男性)
「旧冬ついに沖縄では本島辺野古浜に米軍新基地建設工事の土砂投入が始まりました。あの美しい海を埋め立て自然を破壊し、沖縄人の自治と民主政を抑圧し戦争体制を築こうとする時勢に対して、些かでも抵抗したいと念願します」山梨市・団体役員)
「昨年3月、沖縄の普天間や辺野古に出かけ、辺野古の埋め立てに対し、カヌーに乗って抗議する人びとをまのあたりにして強い印象を受けました」(埼玉県所沢市・大学教授)
「辺野古への土砂投入は、『地方自治への蹂躙』であるとして、地元浦安で同志の人々とともにデモを行いました」(千葉県浦安市・文芸評論家)
「沖縄の心に寄りそう→踏みにじる/安保法(戦争法)→平和安全法/武器輸出→防衛装備移転/ウミを出し切るという舌先三寸―朝日・素粒子― 腸が煮えくりかえる言葉のごまかし……」(東京都中野区・元区議会議員)
「周辺諸国との緊張を緩和するために、軍拡は不要、米海兵隊は帰って貰い普天間は閉鎖、辺野古新基地は中止」(東京都昭島市・元会社員、元教員)
加えて、安倍政権が「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の閣議決定にあたって大規模な軍拡を打ち出したことも、有権者に憂慮をもたらしたようだ。年賀状にこう書いてきた人がいた。
「米ロとも使える核兵器を目指しており、1987年のIMF条約(中距離核ミサイル廃棄)さえも、無きものにされかねません。日本でも安倍政権は27兆円もの防衛費をつぎこんで、トランプの危険な軍事政策につき従っています」(広島県府中町・研究者)
「防衛大綱で歴代政府が憲法違反と判断してきた攻撃型空母の保有に乗り出すなど専守防衛から逸脱するなど、安倍首相の独裁者ぶりが止まりません」(神奈川県伊勢原市・元高校教員)
「戦争NO! アベ軍拡路線許さじ」(東京都世田谷区・民宿経営)
こうした「安倍政治」に愛想を尽かした人は、ついにこんな声をあげている。
「『アベ政治を許さない』今年もこれを掲げて」(長野県下諏訪町・医師)
「トランプと安倍がひっくり返るまでは死ぬに死ねない!!」(東京都世田谷区・元新聞記者)
「『安倍政権は終わり』にしたいですね。みんなで力を合わせましょう 」(さいたま市・女性)
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