少子高齢化と移民政策

著者: 藤澤 豊 ふじさわ ゆたか : ビジネス傭兵
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何時だったか、行きつけの昼飯屋でかかっていたニュース番組のような体裁の番組で、学者風の素振りの人がいかにも純粋に社会問題に言及しているかのような口ぶりで話すのでついちょっと聞き入ってしまった。誰もが知ってる、あまりに明々白々な事実に過ぎないことを数字をあげて、たらたらと話していた。まさか時間稼ぎでもあるまいしと思っていたら、突然声の調子までが変わって本音というのか、彼が目的としていた話になった。少子高齢化社会がどうのこうのと学者もどきの口調で言ってはいたが、言ってたことは簡単、小学校高学年でも分かる。彼の主張を大雑把に整理すれは次のようになる。細かな数字を覚えているほどの記憶力はない。数字はWikipediaから引用させて頂いた。

日本は少子高齢化が益々進んでゆく。2011年には、65歳以上の高齢者一人を15歳から64歳までの現役世代約2.7人が支えている。これが、2060年には1.3人の現役世代で一人の高齢者を支えなければならなくなる。公的年金制度は、現役世代から今年度支払われる保険料で今年度の高齢者と支える世代間扶養で運用されてきているが、このまま少子高齢化が進めば、この賦課方式が成り立たなくなる。公的年金だけを当てにした老後設計では生活してゆけない。若い世代の負担にならないよう、また他人に頼るのではなく、自分の老後を考えて若いうちから貯蓄しなければダメ。貯蓄といっても昔のように銀行に貯金すればいいという時代じゃない。低金利政策が続くだろうから銀行貯金から得られる利息は期待できない。積極的に貯蓄した資金を運用して。。。

素直に聞いているとおっしゃる通りで疑問も異論もでようがない。彼の言っている運用とは、銀行に貯金しておくのではなく投資しなければならないだった。投資は信頼できる專門家のアドバイスが必須。。。ここまでくるともう語るに落ちたとでも言うか、人様の、個人の金(貯蓄)、それも老後資金を新たな“他人の褌”にしょうようという魂胆の株屋か証券屋の使いっ走りが社会不安を並べ挙げてるに過ぎないのが、少なくともフツーの人には分かる。不幸にして個人の貯蓄より先に企業年金が既にこの類の金融屋の手に堕ちている。

彼の自信に満ちた口上を聞いていると、投資すれば銀行貯金より遥かに高い利息が得られることになっている。高い利息を得られるので、公的年金を当てにせずとも老後の心配がなくなり、あるいは少なくとも減り、少子高齢化問題が解決するらしい。いくら考えても腑に落ちない。一言で言えば胡散臭い。そもそも、何故投資すれば銀行金利よりも高い利息が得られるのか分からない。その高い利息はどこからくるのか?まさか安全な利回りなどというのがありえない株式市場で老後の生活資金を確実?に運用しようという話でもあるまい。

貯蓄が日本国内で安全に運用されれば得られる利息は限られていて、銀行金利とたいして変わらないものにしかならないはずだ。貯蓄がどのように運用されようが、国内に留まる限り少子高齢化-現役世代が支えなければならない増え続ける高齢者の数、成り立たないと主張している公的年金。。。などとどのような違いがあるというのか。
彼が言う銀行貯金を大きく上回る、老後の生活を保証する高い利息はどこからくるのか?素人の理解ででしかないが、日本国内ではありえないだろう。高い利息を求めて、近い将来経済成長が望める先進国以外の海外に投資する以外にはない。海外投資とは、海外の若い世代の労働によって生み出される付加価値の一部を利息といかたちで頂戴して日本の高齢者の老後の生活費を賄おうとことに他ならない。

この“他ならない”でいいじゃないか言えればいいのだが、ことはそんなに簡単ではない。ご存知のように海外投資には為替相場の変動というリスクがつきまとう。投資先は海外、外国、それも先進国以外であって、将来、政治的にどのようなことが起きるか分からないこともあるだろうし、日本の法律も適用されない。一言で言えば投資された資金が日本人の手の届かない外にある。

国内で運用したのでは生活の足しになるほどの利息が得られない。それなりの利息を得るには海外に投資しかないが、老後の生活資金の安定運用というにはリスクが大きすぎる。このどちらも選択肢になり得ない状況を一挙に解決する方法が一つだけある。少子高齢化が問題にならない程度まで高齢者に対する現役世代の比率を上げなければ根本問題は解決しないし、しないまでも軽減もしない。まさか高齢者が人口統計に載らないようにもできない。
また、仮に今、出生率を上げられたとしても現役世代になるまでに最短でも十五年かかる。そもそも、出生率を急速に上げる施策は見当たらない。こう考えてくると答えは、制度化した移民政策しかない。日本人の手の届かないところで、海外の若い人達が労働してくれるのに投資するのではなく、彼らに日本に来て頂いて労働して頂いた方が安全な投資になるだろうし、少子高齢化の少子面の問題解決にもつながるはずだ。

不法移民による労働を減らすためにも、また付加価値の高い産業構造への転換を促進するためにも、できるだけ多くの海外の若い優秀な人達に日本に来て頂く必要がある。外国から多くの人達がくれば当然社会的な混乱もあるだろう。あったとしてもそれを大きく上回るメリットがあればよしとするだけの勇気をもつしかない。日常的に街で人種も違えば文化も違う人達と接する、一緒に働く機会が増えれば、必然的に日本が国際化してゆく。国際化しなければ成り立たない産業が多いなかで、次の世代が日本にいながらにして日本人としてアイデンティティを失うことなく国際人たりうるようになるのであれば、人材が資源という日本にとって何が問題だというのか。

ただ、勝手な日本人側のご都合で、若い優秀な外国人が日本を選んでくれるかの方が問題になるだろう。はたして、海外の若い優秀な人達にとって日本は米国やイギリス、その他の国々以上に魅力のある国なのか?ドイツが情報産業の遅れを取り戻そうとしてインドの若い優秀な技術屋を漁ったが成果が上がらなかった。彼らの目にはドイツは米国やイギリスに比べて魅力のない国にしか見えなかったことは知っておいた方がいい。

何にしてもプラスの効果だけでマイナスの側面がないことなどない。こっちがマイナス面をどうしようと逡巡しているうちにも世界は動いている。

Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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