尖閣諸島での中国漁船の拿捕は、日本政府の腰砕けに終わり、日本国内では怒りの声が上がっています。「国民が怒る」のは当然ですが、こういうときこそ、冷静に状況を分析し、今後の日本の行方を考えるべきではと思います。
そこでまず、孫崎享氏(元外務省国際情報局長など)のツィッターhttp://twitter.com/magosaki_ukeru
から引用します。
孫崎氏の総括
(引用開始)
尖閣:総括1:船長釈放は危機拡大を防ぐ意味で支持。他方中国の圧力に屈す形招いた点で大失態。根本は世論形成のマスコミ及び政府(外務省含む)の安全保障面の劣化。拿捕時外務報道官「日中関係に悪影響を与えることはないと考える」と発言。多分外務→官房長官説明も同様。拿捕処理時官房長官の:続 約2時間前 webから
尖閣総括2:官房長官発言危機意識なし。更に朝日、毎日、読売、日経は社説で「拿捕当然」と記述。そろって当然の文字。紛争の歴史を学べば係争地での公権力行使は危険、軍事衝突の可能性内蔵。特に中国はそう。この危険への考察なく『当然」は危険。4大紙がかけば国民はそう理解。危険な風潮醸成 約2時間前 webから
出発点は新内閣初閣議で尖閣諸島領有権問題存在しないと閣議決定した(サンケイ報道)こと。本来中国動向を慎重に判断すべきものを何故いとも簡単に決定したのか。誰が仕掛けたのか。この方針があれば海上保安庁は拿捕するのが当然。戦略の基本は外部環境の把握。これ不十分のまま突入は第2次大戦時も 約2時間前 webから
尖閣総括4:米国は領有権問題に中立と言明。今回領有権から派生する拿捕に対しても国務省報道官レベルで中立表明。同時にアーミテージは緊張を利用し、比沖での海兵隊訓練に自衛隊を参加させるなど自衛隊の米戦略一体化を推進させる発言。日本にも呼応勢力。領有権問題なしの閣議決定等これに関連 約2時間前 webから
尖閣総括5:中国の巨大化、米国の対日対中態度変化、日本をとりまく安全保障環境厳しい。日本は独自に安全保障を考察する必要増大。その中外務省甘く、大手マスコミも拿捕時社説をみればオピニヨンリーダーの役割果たすには不安。何をみれば良いか極めて難しい時代。情報は力。情報選択が問われる時代 約1時間前 webから
(以上引用終わり)
安東の感想
こういう問題をきちんと書くとなると、おそらく数百頁も書かなくてはならないでしょうが、以下は簡単な感想です。
① 尖閣諸島が日本領であることには、根拠があると思われるが、絶海の孤島の国家への帰属という観念は、近代国家に固有のものであり、近代国家が歴史の産物である限り、曖昧な領域は常に存在する。
② こうした領域が紛争の原因とならないように細心の注意が必要。さらに日本の場合、中・韓・露との間に紛争が発生しうるよう、「設計されている」点にも注意が必要。
③ 中国は国力を背景に政治的・軍事的プレゼンスを一層強めており、日本周辺だけでなく、東アジア各国との紛争が発生。しかもいずれ中国のGDPは日本の5倍に達するといわれ、経済的にもすでに日本などは、中国市場に依存。
④ 冷戦終了後、日本の対米従属度はかえって強まっているが、歴史は米国の退潮へと向かっており、対米従属では対処できない時代に入っている。(純軍事的な話にかぎっても、尖閣が安保の対象であることは、米軍が尖閣に出動することを意味しない。そもそも「島嶼部への侵略」(注1)には日本が対応することになっており、尖閣諸島の領有権に関しては米国は中立を維持している。本格的な米中の軍事衝突の場合は在日米軍のかなりの部隊は、一度日本から撤収すると思われる(注2))
⑤ 対米従属を受け入れたままであれば、いずれ中国への(東アジアの)覇権の移動とともに、今度は中国に従属するのは必定。また単に自主防衛を強化しても、経済戦略を欠けば、対応不能。まず早く対米従属を脱し、独自の情報能力・戦略能力をもった政府を構築するところから始める必要がある。
(注1)日米同盟:未来のための変革と再編(仮訳)2005年10月29日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html
(注2)これについては次の記事を参照のこと。
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
なお、この記事はCSBA(Center for Strategic and Budgetary Assessments)の論文についての分析記事となっている。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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