韓国通信NO725
溜まった書類を整理していたらA4版の1枚の紙が目に入った。3月23日付、4か月前の『ハンギョレ新聞』(日本語版)の記事である。「くだらない」と思ったが捨てずにそのまま放置されてきた。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が自国の野党に向かって、「日本の野党を見習ってほしい」と注文したという嘘のような本当の話だ。日本の新聞やテレビで紹介された記憶はない。
訪日した尹大統領が立憲民主党指導部と意見交換。政府批判を強める韓国野党に対する大統領の愚痴を聞いた泉代表が「韓国の野党議員に会い、韓日の将来のために協調するように自分たちが説得する」(新聞記事から引用)と請け負った。<写真上/共同通信/写真下/ハンギョレ新聞より>
それを聞いた大統領はよほど嬉しかったとみえ、帰国後の閣僚会議、与党議員との昼食会で紹介した。韓国では白旗を掲げて「日韓正常化」に漕ぎつけた大統領への批判が高まった時期である。
一国の大統領が外国に来て自国の野党批判をすることに呆れたが、泉代表の発言にも耳を疑った。
韓国野党を説得するという発想はどこから生まれたのか。政権発足直後から「レームダック」(政権末期状態)と言われ続けてきた政権に肩入れする立憲民主党の狙いは何なのか。韓国からは尹政権に肩入れをする日本の野党に対して不信の声が上がりそうだ。
前回の衆院選で立憲に投票した者として一言いわせてもらう。社会全体が右傾化する中で護憲勢力の躍進に期待した。「第二の自民党」を公言する日本維新の会、憲法改正を急かす国民民主党などは論外である。信頼できる野党は立憲と共産以外にないと思ってきた。両党の頑張りに期待したいところだが、批判しない野党の「お手本」として立憲民主党が尹政権から褒められては心もとない。
<批判する野党 怒りの3.5%が社会を変える>
野党は「是々非々」などと大人ぶらないほうがいい。これだけ国民の不安と不信が高まっている時期にそんなゆとりはない。
エリカ・チェノウェス・ハーバード大学教授の「非暴力の3.5%で社会は変わる」という学説が注目されている。日本の人口構成から推定して約400万人が立ち上がればいい計算だ。真剣な400万の声が大衆の心に届き、社会を変革する。口当たりのいい人気政策を掲げた浮動票狙いからは何も生まれない。
今、批判勢力を封じるために日韓とも共通して「アカ攻撃」が大手を振っている。韓国では、文在寅政権は北と通じたアカ政権だった、という説が語られ、日本では、立憲と共産の選挙協力に危機感を抱いた自民がアカ攻撃に走った記憶は新しい。「がんばれ立憲」。だが、尹大統領から評価されるようでは立憲民主党の前途は厳しい。
初出 :「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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