山本太郎参議院議員は、不敬罪を犯したのか

秋の園遊会にて、山本太郎参議院議員が、天皇陛下に充てた手紙を差し出した行為が物議を醸しています。 曰く、天皇の政治利用を図るもの、或いは、直訴は昔から重罰だから議員辞職せよ、と賑やかなことです。

では、天皇陛下に手紙を差し出す行為は、法令の何処に禁止されているのでしょうか。 実は、憲法以下の法令では、禁止はされていません。

それでは、与野党ともに非難しているような、天皇陛下の政治的利用を山本議員が企図したのでしょうか。 報道に依りますと山本議員は、「原発労働者の劣悪環境を知ってほしかった」と云うことですから、被災地の原状を天皇陛下に知って欲しかった、と云うのが意図らしいのです。 これを天皇陛下の政治利用と決めつけ、甚だしきは、「不敬罪」とまで非難するのは、大日本国帝国憲法と相違した日本国憲法の象徴天皇制を理解していないものです。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131031/plc13103118440016-n1.htm

山本氏「原発労働者の劣悪環境知ってほしかった」 産経ニュース 2013.10.31

そもそも民衆が天皇陛下に充てた手紙を差し出すことは、象徴天皇制の下では、微笑ましいことであり、天皇陛下は御受け取りになった手紙を、御自身では具体的な行政上の便宜を与えること無く所管省庁へ回付すればそれで良いのではないのでしょうか。

歴史と国情が違いますので、単純に比較は出来ませんが、王室を頂くイギリスでは、一般の人々に対して、女王陛下に充てた手紙を出すことを奨励されています。 また、女王陛下は、手紙に返信もされます。 報道を観ると、世界各地から女王陛下に充てた手紙があることを知らされます。

イギリス王室の公式ホームページには、You can write to Her Majesty at the following address(以下の住所宛に陛下への手紙を出せます。)とあり、

Her Majesty The Queen

Buckingham Palace

London SW1A 1AA

とバッキンガム宮殿の所在地が示されています。

http://www.royal.gov.uk/hmthequeen/contactthequeen/overview.aspx

How to contact The Queen The official Website of The British Monarchy

また、以下の王室よりの御返信の一例は、8歳の幼女に対してのものです。この幼女は、両親が離婚した挙句、慣れ親しんだ学校から転校しなければならず想いあまって女王陛下へ窮状を訴える手紙を出したのです。 王室の御返信は、優しい言葉で、同情を示されるものですが、採られた措置は、当該の部門への回付をされるのみでした。

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2137893/Queen-comes-aid-anxious-schoolgirl-8-refused-place-chosen-school.html

Her Majesty’s sympathy for schoolgirl, 8, who wrote letter to the Queen after she was refused a place at her chosen school Mail Online 1 May 2012

世情は、安倍政権の憲法改悪を企図した諸種の策動で神経質になっていますので、日本国憲法に定める象徴天皇制を厳守する立場から、国民に親しみ易い皇室を擁護することが大切であると信じます。

この立場からは、山本太郎議員の行為は、法令に触れるものでは無いことは勿論ですし、時と所を間違えない限りは、天皇陛下への手紙は、寧ろ、望ましいことでもあるでしょう。 但し、議員自身が、国会と云う公の場で主張を尽くすべき義務を御持ちですので、園遊会の場での行為は、聊か非礼ではあると思われます。

その意味では、宮内庁の山本信一郎次長の「園遊会は各界で活躍されたり功績をあげたりした方を招き、ご苦労をねぎらわれる場所。あのような場所にふさわしくない」との批評は的を射たものと云わねばなりません。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG05038_V01C13A1CR8000/

山本太郎議員に宮内庁次長苦言 天皇陛下に手紙 日本経済新聞 2013/11/5

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion4637:131108〕