《山本太郎政権は夢物語だろうか》
何を夢想しているのかと思う読者が多いだろう。しかしそういう読者も、この夢の実現を、一瞬は考えたのではないだろうか。下記は一つのイメージ提示である。
前回2013年の参議院選挙時に山本太郎の街頭演説を聴いた。
タダゴトではないと感じた。彼の出現は、一時のユーフォリア(多幸感)ではないと感じたのである。今回は、代表的な演説をネットで見ただけだが、会場の熱狂は十分に―というより更に―高まっていると感じられた。「れいわ新選組」は、「政界の野良犬」で終わるのか。それとも政権奪取の可能性があるのか。
衆院選には100人の候補者を出したいと言っている。今までとは状況が違ってくる。政策ブレイン、組織の専門家、カネの出納人、メディア戦略家。全力投球で助けるプロフェショナルが要る。もちろん、山本自身の魅力と選挙運動の過程で「弾みがついて」党勢急拡大の希望はある。すでに国民民主党や共産党の党首が提携の打診を始めている。山本の強烈な個性と実績がこういう声を呼び起こすのである。
7月19日に横浜駅頭で催した「市民連合」主催の演説会をネットで見た。一つの理想型があった。学者山口二郎(法大教授)、役人経験者前川喜平(元文科次官)、共産党書記局長小池晃、応援山本太郎の布陣である。そして応援の対象は共産党候補者浅賀由香であった。残念ながら結果は次点に終わったが、実に明るいキャンペーンであると見た。
《21世紀における人民戦線》
実際は、山本内閣というより野党連合政権への「れいわ」の少数名入閣が現実的であろう。しかし連合政権が、オルガナイザー山本のラジカルな人気に依存して、山本の副総理はあり得る。山本の演説で、もっとも拍手が多いのは、「あなたが政治の主人なんですよ」と叫ぶときである。これは民主政治の核心を突いたセリフだ。山本の演説が山本を閣僚へと招くのである。
山本太郎入閣の連立政権は決して夢ではない。その幅の広い連立政権が実現すれば、近代日本で初めて「人民戦線」の誕生となるかも知れない。
これは、20世紀のフランスやスペインに出現した国際共産主義の戦略に連動した「人民戦線」とは違う。彼らの歴史は決して幸せなものではなかった。
1934年に誕生したフランス人民戦線は、36年にレオン・ブルム首相で政権を握ったが、ほぼ一年で崩壊した。36年成立のスペイン人民戦線もフランコの反革命に破れ、39年に崩壊している。だから私のいう日本の「人民戦線」は、30年代のそれとは成立事情が異なる。
とはいえ、日米同盟は「ファシズム」に限りなく近い没落途上の二カ国の同盟である。
21世紀の人民戦線もまた、30年代のそれと通底する部分をもつことになるだろう。
安倍晋三が「悪夢」だったという民主党政権は、おのれの失政だけで崩壊したのではない。「悪い奴」らによる印象操作やフェイク情報により自壊を早めたのである。鳩山由紀夫は、辺野古問題で外務官僚に騙されたと証言している。人民戦線を包囲する多様なアクターの力は決してヤワではない。反「人民戦線」側は、人格破壊を狙う硬軟のテロリズム、天皇制の「活用」までを、武器にするであろう。
戦後民主主義に共感する私の世代は、生きている間に「山本太郎政権」に象徴される人民戦線の誕生を見たいと思う。人びとが「国のかたち」を決める民主政治を実現したいと思う。閉塞感を一掃する晴天をみたい私は、自分なりの蟷螂の斧を振り上げ続けるつもりである。(2019/07/23)
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