小倉利丸です。岩波書店の『科学』誌(かなり専門的な科学雑誌ですが、原発への科学技術的な批判の論文を70年代から掲載していた。『技術と人間』なきあと貴重なメディアかも)が、川内原発についての市民のパブコメを編集部にも転送してほしいという呼びかけをしています。パブコメが全く軽視されてきたこれまでの経緯を踏まえた試み。
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/20140810.html
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川内原発審査書案/原発再稼働への市民からの意見書
九州電力川内原子力発電所の審査書案が原子力規制委員会でまとめられ、パブリック・コメントが募集されています(8月15日まで。応募についての規制庁のサイトはこちら)。
『科学』編集部では、皆様が出されるパブリック・コメントを編集部にもお送りくださるよう呼びかけました。川内原発審査書案/原発再稼働への市民からの意見が、万一にも見えにくくなることのないように、見える形にしようという試みです。したがって、上記規制庁の応募期限にこだわらず、このウェブサイトでの公開はつづけていきます。万一ですが、今後、規制庁でまとめられるパブリック・コメント一覧に、ご自分の意見が適切に反映されていないなどのことがございましたら、その旨もお知らせ下さい。
以下に、いただいたご意見を紹介します。
皆様からのご意見
敬称は略します。匿名の方の場合には、日付と番号による整理番号をつけます。
目次 (pdfダウンロードになります)
・study2007
・匿名20140801-1
・牧野淳一郎
・会社員在海外
・中西正之
・匿名20140811-3
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記事特別公開(期間限定)
参考になる記事を期間限定で特別公開いたします。
・牧野淳一郎「3.11以後の科学リテラシー第17回」(2014年3月号)
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悪しき前例としての「エネルギー基本計画に対する意見(案)」へのパブコメ
編集部が想起するのは、「エネルギー基本計画に対する意見」(以下、「意見」。資源エネルギー庁(以下、エネ庁)の審議会である総合資源エネルギー調査会基本政策分科会がまとめたもの)に対して、年初にかけて募集されていたパブリック・コメントの扱いです。
(なお、この「意見」については、本誌1月号で「「エネルギー基本計画に対する意見(案)」をめぐって」と題する編集部執筆記事を掲載し、本誌ウェブサイトで公開してきました(pdfダウンロード、こちら)。また、本誌3月号掲載の植田和弘氏と鈴木達治郎氏の対談「エネルギー政策のゆくえ」もこの「意見」をふまえて議論されています。)
エネ庁がまとめた「意見」へのパブリック・コメントについては、5月に報道されるまで、意見分布が明らかではなく、“代表的な”意見がまとめられた形になっていました。その意見分布は、報道機関の情報公開請求によって明らかになりました(記事はこちら)。1万9000件のパブリック・コメントのうち、情報公開請求により明らかになった2109件の意見の95%は、原発に反対するものでした。エネ庁は、残りの開示の可否は9月までに決めるとしているそうです。
なお、エネ庁がパブリック・コメントにつけた説明のなかには、原発のコストは8.9円/kWhと書かれていました。エネ庁の説明は、その値が下限値であることは末尾に補足するに留めており、さらに被害額や支出の増した今日は大きく増えていることは記載されていないという不誠実な、率直にいえば大嘘の記述です。今日の値については、本誌6月号の大島堅一氏の「原子力をめぐる適切な現状認識の必要性」において示された概算12.6円/kWhをご参照ください。また、原発停止による燃料輸入によって3.6兆円の国富流出などとも説明されていましたが、これも大嘘です。同じく6月号の浅岡美恵氏の「IPCC第5次評価報告書から見えてくる将来」をご参照下さい。また、自然エネルギー財団による解説「知ってほしい自然エネルギーの真実」に、LNG消費量増加は8700億円に過ぎないことが簡潔にまとめられてあります。
現在、エネ庁の議論は、原子力小委員会に引き継がれていますが、そこでもなお、8.9円/kWhや3.6兆円という、大嘘の説明が跋扈しています。
科学
川内原発審査書案/原発再稼働への市民からの意見書
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