「改憲4党」の圧勝を受けて7月11日に行われた岸田首相(自民党総裁)の記者会見で、首相は「憲法改正は自民党結党以来の党是であり、参院選でも憲法改正の早期実現を公約に掲げた。自衛隊の明記、緊急事態対応、参院の合区解消、教育充実という4項目の改正項目はいずれも現代的な課題であり、実現に向け国会での議論をリードしていく。今秋に予定される臨時国会では、参院選で示された民意を受け、与野党全体で一層活発な議論が行われることを強く期待する」と述べた。
これに対し、さっそく、野党の一部から「岸田政権 改憲発議 前のめり」(7月12日付の共産党機関紙「しんぶん 赤旗」)との声が上がっているが、首相発言に水をさすようなデータも全国紙に発表された。
それは、13日付の読売新聞朝刊に載った緊急全国世論調査の結果である。この調査は参院選直後の11日から12日にかけて行われたもので、今回の参院選の結果や、内閣支持率、政党支持率、憲法改正、新型コロナを巡る政府対応、原発の再稼働などに関する12の質問に対する回答が掲載されている。
それによると、「あなたは、今後、国会の憲法審査会で、憲法改正に向けた議論が活発に行われることを、期待しますか、期待しませんか」という問いに対する答えは、「期待する」58%、「期待しない」37%、「答えない」5%だった。
その一方で、「今後、岸田内閣に、優先して取り組んでほしい課題を、次の中から、いくつでも選んでください」という設問に対する回答は次の通りだった。(数字は%)
景気や雇用 91
物価高対策 80
財政再建 61
新型コロナウイルス対策 57
年金などの社会保障 73
少子化対策 71
外交や安全保障 76
原発などエネルギー政策 63
地方の活性化 62
憲法改正 37
その他 ―
とくにない 1
答えない 0
岸田内閣に早急に取り組んでほしい課題の第1は「景気や雇用」、次いで「高物価対策」なのである。ウクライナ戦争勃発以来の諸物価の大幅な値上がりが、いかに国民の日常生活を直撃しているかがうかがえるというものだ。これに対し、岸田内閣が前のめりになっている「憲法改正」は、なんと最下位、それも他の課題と必要度や緊急度で大きく引き離された課題なのである。
こうした民意を、岸田首相や改憲4党はどう考えるか。ぜひ回答をいただきたい。
初出 :「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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