8月に入った。暦(大暑)のとおりの猛暑である。本日も早朝6時に家を出ての散歩だったが、汗が吹き出る。世の中も暑苦しい。安倍晋三が政権に居座る日本だけではない。世界中が、である。暑苦しさの根源に差別がある。ヘイトスピーチを一掃して、涼やかな世にしたいものと思う。
昨日(7月31日)の毎日新聞・夕刊の「特集ワイド」に、川崎市の「差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に関するタイミングのよい記事。「ヘイトスピーチに罰則、条例化目指す川崎市はいま 実効性に期待する被害者」というタイトルで、この条例案の意義を的確に指摘して分かり易い。井田純記者の労作である。
https://mainichi.jp/articles/20190731/dde/012/040/007000c
川崎市のホームページを検索すると、関係資料に接することができるが、如何せん公的な文書。やや繁雑でもある。ぜひとも、「特集ワイド」をお読み願いたい。
ところが、これはネットでは有料記事となっている。やむを得ない。毎日新聞読者以外は、下記の私の記事に目を通していただきたい。
6月24日、川崎市はこの条例案を公表し、パブリックコメントを募集している。期間は、7月8日から8月9日(金)まで。
市の広報では、「意見を提出できる方の範囲」を、「市内に在住、在勤、在学の方、又はこの案件の内容に利害関係のある方(個人、団体を問いません。)」としているが、誰もが「この案件の内容に利害関係のある方」と言ってよい。「特集ワイド」の最後が、「川崎市に呼応するように、同じ神奈川県内の相模原市でも、罰則付きのヘイト対策条例制定に向けた動きが始まっている。」と締めくくられている。この条例が、ヘイトスピーチ規制に実効ある法規制の第1号である。国民的議論の対象とされてしかるべきで、大いに意見を寄せるべきだと思う。
なお、パブコメは分類されて発表されることになろうから、賛成の趣旨をまずは明確に述べて、その理由を書くべきだろう。URLは下記のとおり。
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に関する意見募集について
http://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/250/0000108585.html
意見のフォームはこちら。
https://sc.city.kawasaki.jp/multiform/multiform.php?form_id=3851
ご参考までに、私のコメントは、以下のとおりである。
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私は、「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に、積極的に賛成します。併せて、川崎市がこのような人権尊重のまちづくりに取り組んでいることに、敬意を評します。
私は、1971年に登録した弁護士です。日本国憲法の理念をこの上なく大切なものとして、その実現のために努力して参りました。憲法の根幹に、人権の尊重があることはいうまでもありません。人権尊重とは、すべての人が平等に、その人格が尊厳あるものとして、処遇されなければならないことを意味します。「差別のない人権尊重の社会」は、日本国憲法の目指すところであり、暮らしやすい社会でもあります。
ところが、近年、民族や人種に対する差別を公然と口にして恥と思わない人びとや集団が目立つようになっていることを憂慮せざるを得ません。
戦前、富国強制のスローガンのもと、近隣諸国への侵略や植民地化を国是としていた時代には、日本や日本国民が他に優越したものであるという明らかに誤った独善的な選民思想が意図的に流布されました。そのことが、近隣諸国民に対する差別意識を醸成し、現在なおこの差別意識に捕らわれている人が少なくありません。その差別意識を公然と口にしてよいという近時の社会の雰囲気に、極めて危険な兆候を感じます。
私は、国民の自由に対する権力的規制には、反対の立場を貫いて参りました。規制は権力がするもので、現政権のごとき、日本国憲法の理念理解に乏しく、むしろ日本国憲法を敵視する権力が悪用することを恐れてのことです。しかし、ヘイトスピーチ跋扈の現状は、いわゆるヘイトスピーチ解消法制定3年を経てなお治まることなく、到底これを看過し得ません。もはや、言論の自由を根拠としてヘイトスピーチ規制をすることに躊躇しえないと考えるに至りました。
本条例素案が表現の自由一般を不当に侵害することのないよう、種々の配慮をしていることを歓迎して、条例制定に賛成いたします。
当然のことながら、ヘイトスピーチ派はこの条例制定に反対しています。もちろん、そのホンネは、今までどおりにマイノリティとして弱者である宿命を持った在日の人びとに対する根拠のないイジメを続けたいだけのことです。しかし、それでは、訴える力となりませんので、何とか「理論付け」しようと試みているようではあります。しかし、真面目な議論として耳を傾けるべきものは見あたりません。その幾つかのパターンへの感想を述べておきます。
反対論その1 「条例素案における犯罪構成要件が特定性を欠き、曖昧に過ぎないのではないか。たとえば、「ヘイトスピーチ」の定義にしても、禁止されている行為にしても。」
そんなことはありません。「ヘイトスピーチ」の定義自体は、「ヘイトスピーチ解消法」第2条の定義規定「この法律において『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において『本邦外出身者』という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。」で、構成要件文言としては特定性十分ではありませんか。
また、本条素案が禁止する「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」については、以下のとおり、特定性十分と考えまられます。
「素案の説明資料4(2)」に、明記されているとおり、「何人も、市の区域内の道路、公園、広場、駅その他の公共の場所において、次に該当する『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』を行い、又は行わせてはならない。」
≪類型≫
◎ 特定の国若しくは地域の出身である者又はその子孫(以下「特定国出身者等」という。)を、本邦の域外へ退去させることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等の生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等を著しく侮蔑するもの
≪手段≫
◎ 拡声機を使用する。
◎ 看板、プラカード等を掲示する。
◎ ビラ、パンフレット等を配布する。
◎ 多数の者が一斉に大声で連呼する。
反対論その2 「条例素案の罰則部分は、過剰に表現の自由を規制をするものとして憲法21条に違反するものではないか。」
憲法21条「表現の自由」保障の本領は、権力者や社会的強者を批判する自由の領域にあります。マイノリティであり、社会的弱者の人権を侵害する表現が自由になされてよいはずはありません。ヘイトスピーチの自由など、本来てきにあり得ないのです。しかし、ヘイトスピーチを権力的規制の対象として処罰条項を設けてよいかは、また別のことになります。いわゆる立法事実(そのような処罰規定を作る根拠としての事実)が必要となります。まさしく、ここが争点です。私は、ヘイトスピーチデモの口汚さや、ネットでのネトウヨ言論の品性のなさの積み重ねが、雄弁に立法事実の存在を物語っていると考えます。
しかも、「ヘイトスピーチ」即犯罪の成立ではなく、市長からの勧告・命令を経て、なおこれに従わない場合にはじめて罰則の適用となるというのですから、けっして過剰な言論規制になっているとは考えません。
反対論その3 「条例素案の『インターネット表現活動に係る拡散防止措置』は、一地方自治体の条例でネット上の『表現の自由』を規制するものとして、条例の権限を越えているのではないか。」
匿名性に隠れてのネット上での差別発言、しかも差別感情剥き出しの罵詈雑言は、当然に規制されてしかるべきものと考えます。したがって、条例素案が、ネットでのヘイト発言を罰則での取締りから除外していることに、生温い規制との批判があるかも知れません。私は、提案のとおり、この点は将来の課題として留保してよいと思います。
なお、条例素案は、「インターネット表現活動に係る拡散防止措置及び公表」は、その対象を、次のものに限定しています。
◎ 市の区域内で行われたインターネット表現活動
◎ 市の区域外で行われたインターネット表現活動(市の区域内で行われたことが明らかでないものを含む。)で次のいずれかに該当するもの
・ 表現の内容が特定の市民等(市の区域内に住所を有する者、在勤する者、在学する者その他市に関係ある者として規則で定める者をいう。以下同じ。)を対象としているもの
・ 前記のインターネット表現活動以外で、市の区域内で行われた「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の内容を市の区域内に拡散するもの
けっして、無限定に規制をしているものではなく、「条例の権限を越えている」ものではないと考えられます。
反対論その4 「条例素案は、『本邦外出身者』だけを保護対象にしており、『本邦出身者』のヘイトスピーチ被害を保護対象としていない。この非対称性は、逆差別として許されないのではないか。」
これはかなり数多くみられる見解ですが、言いがかりの類の見解というほかはありません。圧倒的なマイノリティである『本邦外出身者』が、圧倒的なマジョリティであり、それゆえ社会的強者である『本邦出身者』(日本人)に対して、差別的発言がなされているとは考えられないところです。少なくとも、「『本邦出身者』(日本人)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の出身であることを理由として、本邦出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」がなされているはずはありません。
一方的なヘイトスピーチがなされている現実が非対称なのです。これを是正する措置が非対称になるのは当然ことと言わねばなりません。
条例素案の解説を一読すれば、お分かりのとおり、人権侵害となる不当な差別は数多くあります。解説が挙げているものだけでも、「こども」「男女平等」「高齢者」「障害者」「部落差別」「外国人」「性的マイノリティ」「その他…」。条例素案は、それらの侵害された人権全般を救済し、あるいは不当な差別全般の解消に思いをいたしながら、特に緊急の対応の必要ある『本邦外出身者』に対する差別に限って、刑事罰もやむを得ないと限定して考えています。この姿勢を支持するものです。
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なお、「条例」(素案)の内容は以下のURLで読めるが、読みにくい。読み易いよう、以下にコピペしておきたい。
http://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/cmsfiles/contents/0000108/108585/20190624soan_hp.pdf
目次
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)を作成しました。
<主な内容>
Ⅰ 「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)について
1 条例制定の背景
2 川崎市人権施策推進協議会からの提言について
3 条例制定について
Ⅱ 「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)の内容
1 前文
2 総則
3 不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進
4 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進
5 その他(雑則、罰則、施行期日等)
Ⅲ 今後のスケジュール
本文
1 条例制定の背景
川崎市は、日本各地や海外から多くの人たちが移り住み、地域に根づいて多様な文化が交流する「多文化のまち」へと発展する中、「川崎市外国人市民代表者会議条例」の制定をはじめ、「川崎市子どもの権利に関する条例」や「男女平等かわさき条例」を制定するなど先駆的な取組を行い、その後も、「川崎市子どもを虐待から守る条例」や「川崎市自殺対策の推進に関する条例」の制定など、着実に人権施策を実施してきました。
しかしながら、近年、本邦外出身者に対する不当な差別的言動、いわゆる「ヘイトスピーチ」や、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題が顕在化してきました。
このような状況の下、平成28年7月、市長が、「川崎市人権施策推進協議会」に対し、「ヘイトスピーチ対策に関すること」につき優先審議を依頼したところ、同年12月には、同協議会が、市長に対し、「ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例として、ヘイトスピーチ対策も含めた多文化共生、人種差別撤廃などの「人権全般を見据えた条例」の制定を求める」提言を提出しました。
また、平成28年には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、「部落差別の解消の推進に関する法律」のいわゆる「差別解消三法」が施行され、川崎市をはじめとした地方公共団体にも地域の実情に応じた施策を講ずることが求められることになりました。
2 川崎市人権施策推進協議会からの提言について(一部略)
提言で取り組むべきとされた項目
項目1 公的施設の利用に関するガイドラインの策定
項目2 インターネット上の対策
項目3 制定すべき条例の検討
「人権全般を見据えた条例の制定に必要な作業に入るべきである。」
【協議会の意見】
● ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例が必要である。
● 内容については、ヘイトスピーチ対策も含めた多文化共生、人種差別撤廃などの人権全般にかかるものが想定される。
【特に留意すべき点】
● 協議会及び部会において、幅広い条例が必要との認識では一致したところであり、具体的な内容については、ヘイトスピーチ対策を含めた多文化共生、人種差別撤廃などの人権全般にかかるものが求められる。
3 条例制定について
(1)条例制定の考え方
いわゆる「ヘイトスピーチ」や、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題が顕在化している現状を踏まえ、全ての市民が不当な差別を受けることなく、個人として尊重され、生き生きと暮らすことができる人権尊重のまちづくりを推進していくため、条例を制定します。
(2)条例の特徴
① 人権全般を見据えた条例
「川崎市人権施策推進協議会」からの提言を踏まえ、ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例とします。
したがって、人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害等の人権全般を見据え、不当な差別のない人権尊重のまちづくりを推進します。
② 本邦外出身者に対する不当な差別的言動を規制する条例
特に、一定の要件に該当するヘイトスピーチに対しては、罰則等をもって規制する条例とします。
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)の内容
1 前文
● 川崎市は、日本国憲法及び人権に関する諸条約の理念を踏まえ、あらゆる不当な差別の解消に向けて、一人ひとりの人間の尊厳を最優先する人権施策を、平等と多様性を尊重し、着実に実施してきた。
● 今なお、不当な差別は存在し、いわゆる「ヘイトスピーチ」や、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題も生じている。
● 市、市民及び事業者が協力して、不当な差別の解消と人権課題の解決に向けて、人権尊重の理念の普及をより一層推進していく必要がある。
● 全ての市民が不当な差別を受けることなく、個人として尊重され、生き生きと暮らすことができる人権尊重のまちづくりを推進していくため、この条例を制定する。
2 総則
(1)目的
ア 不当な差別のない人権尊重のまちづくりに関し、市、市民及び事業者の責務を明らかにする。
イ 人権に関する施策の基本となる事項と、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する事項を定める。
ウ 前記ア及びイにより、人権尊重のまちづくりを総合的かつ計画的に推進し、もって人権を尊重し、共に生きる社会の実現に資する。
(2)定義
ア 不当な差別…人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする不当な差別をいう。
イ 本邦外出身者に対する不当な差別的言動…「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「ヘイトスピーチ解消法」という。)第2条に規定する本邦外出身者に対する不当な差別的言動をいう。
3 不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進
(1)市の責務
市は、不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策を総合的かつ計画的に推進する。
(2)市民及び事業者の責務
市民及び事業者は、市の実施する不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策に協力するよう努める。
(3)不当な差別的取扱いの禁止
何人も、人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。
(4)人権施策推進基本計画
ア 市長は、不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、基本計画を策定し、基本計画には、人権に関する施策の基本理念、基本目標、基本的施策、その他人権に関する施策を推進するために必要な事項を定める。
イ 市長は、基本計画を策定(変更)しようとするときは、あらかじめ、「人権尊重のまちづくり推進協議会」の意見を聴き、また、基本計画を策定(変更)したときは、公表する。
(5)人権教育及び人権啓発
市は、不当な差別を解消し、人権尊重のまちづくりに対する市民及び事業者の理解を深めるため、人権教育及び人権啓発を推進する。
(6)人権侵害を受けた者に対する支援
市は、関係機関等と連携し、インターネットを利用した不当な差別その他の人権侵害を受けた者に対する相談の実施その他必要な支援に努める。
(7)情報の収集及び調査研究
市は、不当な差別を解消するための施策その他の人権に関する施策を効果的に実施するため、必要な情報の収集及び調査研究を行う。
(8)人権尊重のまちづくり推進協議会
ア 前記(4)イの場合のほか、不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進に関する重要事項について、市長の諮問に応じ、調査審議するため、附属機関として「人権尊重のまちづくり推進協議会」を置く。協議会は、委員12人以内で組織し、委員は、学識経験者、関係団体の役職員、市民のうちから市長が委嘱する。
イ 委員の任期は2年とし、再任可とする。そのほか、臨時委員を置くことやその解嘱、秘密漏えい禁止、部会を置くことについて規定し、その他協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
4 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進
(1)この章の趣旨
市は、ヘイトスピーチ解消法第4条第2項の規定に基づき、市の実情に応じた施策を講ずることにより、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消を図る。
(2)本邦外出身者に対する不当な差別的言動の禁止
何人も、市の区域内の道路、公園、広場、駅その他の公共の場所において、次に該当する「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」を行い、又は行わせてはならない。
≪類型≫
◎ 特定の国若しくは地域の出身である者又はその子孫(以下「特定国出身者等」という。)を、本邦の域外へ退去させることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等の生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることをあおり、又は告知するもの
◎ 特定国出身者等を著しく侮蔑するもの
≪手段≫
◎ 拡声機を使用する。 ◎ 看板、プラカード等を掲示する。
◎ ビラ、パンフレット等を配布する。 ◎ 多数の者が一斉に大声で連呼する。
(3)勧告・命令・公表
◎前記(2)に違反(1回目)⇒勧告
市長は、1回目と同様の違反行為を行ってはならない旨を勧告することができ
る。
◎違反行為(2回目)⇒命令
市長は、前2回と同様の違反行為を行ってはならない旨を命ずることができる。
◎違反行為(3回目)⇒公 表
市長は、命令に従わなかったときは、氏名又は団体の名称、住所、団体の代表者等の氏名のほか、命令の内容その他規則で定める事項を公表する。
・市長は、勧告の前に、1回目の違反があったことについて、「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。
・市長は、命令の前に、勧告に従わなかったことについて、「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。
・市長は、公表の前に、公表される者にその理由を通知し、その者が意見を述べ、証拠を提示する機会を与える。
(4)公の施設の利用許可等の基準
市長は、市が設置する公の施設において、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」が行われるおそれがある場合における公の施設の利用許可及びその取消しの基準その他必要な事項を定める。
(5)インターネット表現活動に係る拡散防止措置及び公表
対象
◎ 市の区域内で行われたインターネット表現活動※
◎ 市の区域外で行われたインターネット表現活動(市の区域内で行われたことが明らかでないものを含む。)で次のいずれかに該当するもの
・ 表現の内容が特定の市民等(市の区域内に住所を有する者、在勤する者、在学する者その他市に関係ある者として規則で定める者をいう。以下同じ。)を対象としているもの
・ 前記のインターネット表現活動以外で、市の区域内で行われた「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の内容を市の区域内に拡散するもの
※ インターネットその他の高度情報通信ネットワークを利用する方法による表現活動で、デモや演説など他の表現活動の内容を記録した文書、図画、映像等を不特定多数の者による閲覧又は視聴ができる状態に置くこと(いわゆる「拡散する」こと。)を含む。
ア インターネット表現活動に係る拡散防止措置
市長は、インターネット表現活動が「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に該当すると認めるとき。
→ インターネット表現活動に係る表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講ずる。
イ インターネット表現活動に係る公表
市長は、前記アの措置を講じたとき。
→ 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に該当する旨、表現の内容の概要、拡散を防止するために講じた措置その他規則で定める事項を公表する。ただし、公表することにより前記(1)の「「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消を図る」との趣旨を阻害すると認められるときその他特別の理由があると認められるときは、公表しないことができる。
・ 前記の措置と公表は、市民等の申出又は職権により行う。
・ 市長は、措置や公表の前に、「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。
・ 市長は、公表をするに当たっては、当該「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の内容が拡散することのないよう十分に留意する。
(6)差別防止対策等審査会
ア 前記(3)の勧告、命令、前記(5)の措置、公表を行う場合のほか、不当な差別の解消のために必要な事
項について、市長の諮問に応じ、調査審議するため、附属機関として「差別防止対策等審査会」を置く。審査会は、委員5人以内で組織し、委員は、学識経験者のうちから市長が委嘱する。その他の細目については、前記3(8)の「人権尊重のまちづくり推進協議会」と同様とする。
イ 審査会は、前記(5)の措置と公表に係る申出を行った市民等に意見書又は資料の提出を求めること等の必要な調査を行うことができ、前記(2)に違反したと認められる者、前記(3)の勧告に従わなかったと認められる者又は前記(5)のインターネット表現活動を行ったと認められる者に対し、書面により意見を述べる機会を与えることができる。また、その指名する委員に前記の必要な調査を行わせることができる。
(7)表現の自由等への配慮
この4の欄に記載の項目の適用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意する。
5 その他(雑則、罰則、施行期日等)
(1)報告及び質問
ア 市長は、前記4(2)に違反したと認められる者、前記4(3)の勧告や命令に従わなかったと認められる者に対し報告を求めることができ、また、その職員に、関係者に質問させることができる。
イ 質問を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯する。
ウ 前記アの権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(2)委任
この条例の実施のため必要な事項は、規則で定める。
(3)罰則
前記4(3)の命令に違反した者は、500,000円以下の罰金に処する。また、法人等の場合には、行為者を罰するほか、法人等も罰する(両罰規定)。
(4)施行期日
ア 公布の日 次のイとウ以外のもの
イ 令和2年4月1日 「人権尊重のまちづくり推進協議会」、インターネット表現に係る拡散防止措置及び公表並びに「差別防止対策等審査会」に関するもの
ウ 令和2年7月1日 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消に向けた取組に関するもののうち、禁止、勧告、命令、公表、報告及び質問並びに罰則
(以下略)
(2019年8月1日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2019.8.1より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=13057
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion8867:190802〕