みなさまへ 松元
広域瓦礫処理について、①安斎育郎さんの見解(要旨)、②徳島県の環境整備課の考え方、③愛媛県知事への一市民の声、をまとめて転送させていただきます。
===①「国公一般すくらむブログ」の記事より、安斎育郎さんの見解===
(CML内富さんから。)
■「がれき広域処理」は愚の骨頂-「放射性物質は拡散せず封じ込める」が放射線防護の鉄則2012年03月22日 09:35国家公務員一般労働組合
東京大学工学部職員組合が3月2日に東大で開催した立命館大学名誉教授・安斎育郎さんの講演を聴きました。安斎さんは放射線防護学が専門なのでいま問題になっている「がれき広域処理」についても触れました。その要旨を紹介します。(※あくまで私の要旨メモであること御了承を。by文責ノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)
いま、がれきを広域処理すべきという議論がありますが、「放射性物質は拡散せず封じ込める」という放射線防護学の鉄則から考えると愚の骨頂と言わざるを得ません。がれきに放射性物質が含まれているわけですから、安全確保を第一として地方自治体に拡散せず国の責任で集中的に管理しなければなりません。
福島原発から大量に放出されてしまったセシウム137は、放射線量が10分の1に減るのに約100年かかります。福島原発の周辺でおそらくは100年単位で生産や生活の場に適さなくなってしまった領域ができてしまっています。地域住民の合意を得ることを大前提にして、その領域を堅牢な2重の防護壁で囲い込んで、その中にがれきと放射性物質を封じ込める必要があります。場所的には日照が多いところでもありますから防護壁の屋上は太陽光発電所としても活用できると思います。
集中管理しておけば、もしあらたな処理方法が見つかったときでも、すぐその方法処理することができます。しかし、全国各地に広域に拡散してしまっていると、そういうことも非常に困難になるのです。
今回の福島原発事故で、私が知っている限りでも原子力関連の研究者をめざそうとする若い人は激減しています。
しかし、福島原発の放射能汚染とのたたかいや安全に廃炉していくにあたっても、この先数十年、100年単位で続く取り組みとなりますし、そもそも現時点でも原発が膨大に生み出してしまっている高レベル放射性廃棄物は100万年単位の安全管理が必要なのです。脱原発にあたっても数多くの原子力研究者は必要なのです。
がれきや放射性物質を囲った防護壁の外には、なおさまざまな汚染レベルの地域がまだら模様で存在します。この状況に対して、マイナスの価値ばかりを見るのではなく、もちろん地域住民の意向を踏まえた上でのことですが、国立の「低レベル放射線影響研究所」をつくり、国際的な研究所として、年間数ミリから100ミリシーベルトの放射線の長期的被曝を調査・研究する研究所として国際社会に有料で開放してはどうかと考えます。
あわせてこの汚染地域には多くの動植物が生息していますので、それらの研究も可能となります。低レベル放射線の実験施設をあらたに作るには巨額の費用が必要になります。原発推進ではなく、放射能汚染から国民の命と健康を守る観点での研究に生かすべきではないかと考えます。
また、「低レベル放射線影響研究所」とあわせて国立の「原子力安全研究所」をつくる必要があると考えます。文字通りに原子力の安全を研究するわけですが、原発の後始末をするというだけでは若い研究者の意欲を燃やし続けるのは難しいでしょうから、あわせて、代替エネルギー、自然エネルギーという未来に開ける研究を重ねあわせる工夫をしてはどうかと思っています。
――以上が安斎さんの指摘です。安斎さんは、講演の冒頭で、福島原発事故に直面してのいくつか重要だと考えるキーワードとして、
「隠すな、ウソをつくな、意図的に過小評価するな」
「過度に恐れず、事態を侮らず、理性的に怖がる」
「産地で怖がらず、実態で怖がる」
(←ちょうど講演の前日、福島から避難した子どもたちがいじめられていることがマスコミ報道されましたので、安斎さんは随分憤慨していました)
――を紹介しました。
「がれき広域処理」は、「意図的な過小評価」をして、「事態を侮っている」ということです。
最後に徳島県の環境整備課の考え方 を紹介しておきます。こういう態度こそが、「隠すな、ウソをつくな、意図的に過小評価するな」「過度に恐れず、事態を侮らず、理性的に怖がる」というお手本だと思います。
=====②徳島県環境整備課の考え方 ====
★【ご意見】放射線が怖い?いいえ本当に怖いのは無知から来る恐怖
東北がんばれ!!それってただ言葉だけだったのか?東北の瓦礫は今だ5%しか処理されていない。東京、山形県を除く日本全国の道府県そして市民が瓦礫搬入を拒んでいるからだ。ただ放射能が怖いと言う無知から来る身勝手な言い分で、マスコミの垂れ流した風評を真に受けて、自分から勉強もせず大きな声で醜い感情を露わにして反対している人々よ、恥を知れ!!
徳島県の市民は、自分だけ良ければいいって言う人間ばっかりなのか。声を大にして正義を叫ぶ人間はいないのか? 情け無い君たち東京を見習え。
★【環境整備課からの回答】
http://www.pref.tokushima.jp/governor/opinion/form/652
貴重なご意見ありがとうございます。せっかくの機会でございますので、徳島県としての見解を述べさせていただきます。
このたびの東日本大震災では,想定をはるかに超える大津波により膨大な量の災害廃棄物が発生しており,被災自治体だけでは処理しきれない量と考えられます。
こうしたことから,徳島県や県内のいくつかの市町村は,協力できる部分は協力したいという思いで,国に対し協力する姿勢を表明しておりました。
しかしながら,現行の法体制で想定していなかった放射能を帯びた震災がれきも発生していることから,その処理について,国においては1kgあたり8,000ベクレルまでは全国において埋立処分できるといたしました。
(なお,徳島県においては,放射能を帯びた震災がれきは,国の責任で,国において処理すべきであると政策提言しております。)
放射性物質については、封じ込め、拡散させないことが原則であり、その観点から、東日本大震災前は、IAEAの国際的な基準に基づき、放射性セシウム濃度が1kgあたり100ベクレルを超える場合は、特別な管理下に置かれ、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めてきました。(クリアランス制度)
ところが、国においては、東日本大震災後、当初、福島県内限定の基準として出された8,000ベクレル(従来の基準の80倍)を、その十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理の基準にも転用いたしました。
(したがって、現在、原子力発電所の事業所内から出た廃棄物は、100ベクレルを超えれば、低レベル放射性廃棄物処分場で厳格に管理されているのに、事業所の外では、8,000ベクレルまで、東京都をはじめとする東日本では埋立処分されております。)
ひとつ、お考えいただきたいのは、この8,000ベクレルという水準は国際的には低レベル放射性廃棄物として、厳格に管理されているということです。
例えばフランスやドイツでは、低レベル放射性廃棄物処分場は、国内に1カ所だけであり、しかも鉱山の跡地など、放射性セシウム等が水に溶出して外部にでないように、地下水と接触しないように、注意深く保管されています。
また、群馬県伊勢崎市の処分場では1キロ当たり1,800ベクレルという国の基準より、大幅に低い焼却灰を埋め立てていたにもかかわらず、大雨により放射性セシウムが水に溶け出し、排水基準を超えたという報道がございました。
徳島県としては、県民の安心・安全を何より重視しなければならないことから、一度、生活環境上に流出すれば、大きな影響のある放射性物質を含むがれきについて、十分な検討もなく受け入れることは難しいと考えております。
もちろん、放射能に汚染されていない廃棄物など、安全性が確認された廃棄物まで受け入れないということではありません。安全な瓦礫については協力したいという思いはございます。
ただ、瓦礫を処理する施設を県は保有していないため、受け入れについては、施設を有する各市町村及び県民の理解と同意が不可欠です。
われわれとしては国に対し、上記のような事柄に対する丁寧で明確な説明を求めているところであり、県民の理解が進めば、協力できる部分は協力していきたいと考えております。
参考【※あわせて読んでいただきたいと思います】
▼全国での「安易な瓦礫受け入れ」をやめさせる「効果的な」方法とは?
http://dogdaysdog.seesaa.net/article/255232636.html
=====③愛媛県知事へ一市民の声=====
(14日に、愛媛の木下さんから。)
被災地瓦礫の受け入れについて、国より全国に広域処理のお願いをするとのニュースを拝見しました。瓦礫の広域処理には懸念があり、以前より情報を追っておりますが、以下のようなことがわかっております。
岩手、宮城で推定で2000万トンほどの瓦礫が発生したのでしょうが、このうち県外で処理してもらおうとしているのは400万トンのみ。残りの1600万トンは、元々地元のみで(地震発生後から換算して)三年以内に処理する予定であったため、被災地各地で処理場の稼働率を高めたり、建設に期間のかからない仮設型の処理場を急いで作って処理速度を速めようとしています。陸前高田市長は「がれき処理専門のプラントを作れば、自分たちの判断で今の何倍ものスピードで処理ができると考え、県に相談したら、門前払いのような形で断られた」と証言しており、地元の雇用促進という意味での考えもあったとのこと。
今回受け入れを表明した静岡県島田市では、瓦礫は速報値で64Bq/kgであるとのこと。岩手県山田町10t分の試験焼却ですが、これだけでも焼却灰は単純合計で64000Bqとなり、また、この64Bqという数値そのものにも疑問符が投げかけられております。
大気中への放出についてですが、バグフィルターでセシウムを99.9%防げるというお話もありましたが、これはダイオキシン等の有害物質の放出を防ぐものであり、ガスとして微細な粒子が大気中に漏れることを防げるものではありません。バグフィルターはアスベスト対応のもので、目は100ナノメートル。焼温度は約1800度。対するセシウムは原子直径0.53ナノ、沸点は671度、ストロンチウムは0.43ナノ、沸点は1382度、ヨウ素は0.28ナノで、沸点は184.3度で、フィルターをすり抜けます。既存の焼却施設やバグフィルターでセシウムが除去できるという根拠や実験結果がないという点につきましては、環境省も認めるところです。また、瓦礫焼却はセシウムのみを測定値としており、ストロンチウムやプルトニウムなど自然界には存在しない放射性物質についての基準はもうけられておりません。
また、広域処理にあたり、政府は15億のCM制作費予算を投入しております。除染と合せると30億、23年度には博報堂が総額9億円の広報業務を請け負っております。合計40億円。その「広報」の予算を使い被災地に専門の瓦礫焼却施設を新たに建設することが、この1年でもできたと思いますし、今からからやることも可能だと思います。阪神大震災時のがれき処理費用・約2万円/トンで周辺自治体で焼却及び埋め立て処理をおこなっており、今回は約6万円/トンといわれており、その数字の妥当性についての解説もされていない状況と認識しております。
低線量の被ばくに関しては、年間100mSvまで大丈夫と福島県立医科大の山下俊一副学長が昨年言及しておりましたが、今年に入りこの「年間」という表現を著作本からも削除するよう訂正がされているようです。また、根拠となるICRPの内部被ばくの計算式そのものが、「政治的に決められたものである」とチャールズ・マインホールドICRP名誉委員はのちに語っており、ICRPの科学事務局長のクリストファー・クレメントという人が、上の二枚の写真のように広島・長崎の被爆者実態調査で実は被爆の影響は2倍だと分かったと語り、現在内部被ばくの基準の見直しを協議しているとのことNHK:追跡!真相ファイル 「低線量被ばく 揺
らぐ国際基準」より)。
日本政府はこのICRPの基準を元に、被ばくに関する提言をおこなっておりますが、それ自体十分なものとはいえません。現在来日中の元ゴメリ医大学長、バンダジェフスキー博士は、さらに細かなセシウムによる内部被ばくからの病理に関する論文も発表しておりますし、放射線リスクに関するヨーロッパ委員会(ECCR )からも、低線量被ばくによる危険性の厳しい提言が
世界に発信され、ドイツ放射線防護協会も瓦礫や食品を拡散する「希釈政策」に勧告しました。
隣県徳島では、放射性物質については、封じ込め、拡散させないことが原則であり、その観点から、東日本大震災前は、IAEAの国際的な基準に基づき、放射性セシウム濃度が1kgあたり100ベクレルを超える場合は、特別な管理下に置かれ、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めてきたという点、群馬県伊勢崎市の処分場では1キロ当たり1800ベクレルという国の基準より、大幅に低い焼却灰を埋め立てていたにもかかわらず、大雨により放射性セシウムが水に溶け出し、排水基準を超えた事件があったという点からも、より具体的に広域処理への懸念をHP「とくしま目安箱」にて表明しており、感服する次第です。
以上のように、瓦礫の広域処理に関して十分な説明も放射性物質の安全性も確認できていない状況の中で、汚染のないに等しい愛媛県で瓦礫処理をおこなうことには大きな懸念があります。愛媛県からも、より踏み込んだ瓦礫広域処理への懸念を表明していただきたく思います。
以上
(転送終わり)