我が家の愛猫・とらが老境に差し掛かる頃、何度か不思議な夢を見ました。
私が生まれた田舎の農家の家附近で、何頭かの猫が走って来て、その中の一頭が振り返りますと、とらであったのでした。 夢の中でも明らかに愛猫・とらの顔を見ることが出来ました。 そして、光り輝く程の光沢が背中に見えました。
とらの被毛は、独特のキジ虎模様で、背中の部分が殆ど黒でしたし、地の部分がキジの色合いが強くて、本当にキジの模様のようでした。 その体中の被毛が光を浴びて光り輝くのでした。
何も特別に飼い主が手入れをしていた訳ではありません。 手入れと言えば、ブラッシングを念入りにしていただけでしたから。 それでも、体が動く度に被毛が光り輝いていました。
夢の中では、光り輝く被毛のとらが、空を飛ぶように走って来て、私を振り返り、にゃ~と優しく啼くのでした。
ただ、それだけの夢でした。 何回かそうした夢を見たので、その意味を考えました。 その時期が、愛猫が老境に差し掛かる時期であったからでした。
自分の思いが夢に出たのであろう、と推測が出来ました。 自分が幼児の頃から今までの数十年間のように愛猫・とらに生きて欲しい、と言う願いからの夢だろう、と。
とらは、今、その光輝く被毛を見せて、大好きな猫タワーの前で私を振り返り見入る姿をし、壁に掛けたポスターの中から私を見ています。
同様の夢を由里も見ることになるのでしょうか。 愛猫・とらが由里ママにお別れ?(300字)をご覧ください。
「ママ。 お話しなければならないことが。」
「何なの? 改まって、とら。」
「王国からの使者が来まして、私にすぐさま帰国せよ、と王からの伝言がありました。 行かねばなりませぬ。 ママにはお世話になりましたが、王子として命に従わねばなりませぬ。」
「そんな~。 ママは、とらを猫王国の王子として育てたのではありませぬ。 実の「仔」として愛を注ぎ、何時、何時までもとらを我が「仔」として見守ると誓いをたてておりましたものを。」
「ママ。 お気持ちは、真に嬉しいのですが、行かねばなりませぬ。」
「なりませぬ。 行ってはダメって。」
「ダメと言ったらダメ!! この野郎、言うことを聞け!」
「あ、あ! 夢か! アホな夢見るな~。あたしって。」