愛猫・とらの不貞寝(300字)

我が家の愛猫・とらは、感情表現が豊かでした。 顔の表情も豊かでした。

 

食べ物で特に好きな魚を煮て食事に出すと、本当に喜んで、大きく「にゃー!!」と叫ぶように啼いて食べてくれました。 夕食に魚を出す折には、煮た後で骨を抜くのですが、それを待ちきれないのか、「にゃ!!」、「にゃ!!」と他の猫達とともに合唱するのでした。

 

同じ「にゃ~」でも啼き方で感情が千差万別に聞こえました。 飼い主の私に抗議することもありました。

 

末の仔猫が我が家に来た当座のことですが、ある時、その仔がPCの前に飛び上がって来ましたので、よしよし、と撫でていた処、その当時にはすでに老境にあった愛猫・とらが私に向けて抗議の声を出しました。

 

腎臓が悪かったので冷えた場所が好みであり、少し離れた玄関に居ました処、「にゃー!」と叫ぶように啼いたのでした。

 

直ぐに飛んで行き、抱き上げて「よしよし、とらが一番だよ~。一番好きだよ~。」と何度も、何度も言いました。 すると納得したかのように大人しくなりました。

 

二年前に亡くなってからは、壁に掛けた額縁の中のとらに、日々、同じ言葉をかけています。

 

ともあれ、下記は300字の美女・由里と美猫・とらのお話です。

 

「あたし~、これで良いのかな~。 お金はある。 稼ぎもある。」とソファーに寝そべり、傍らの愛猫・とらに話しかける由里。 ええ~? お金はある、稼ぎはある、だって?

 

「でも、お金を遣う時間が無い。 クッソ~。 学生の本分を忘れるな、とオヤジがうるさい。 ケッ。」 ええ~? 由里って学生?

 

「何が経済学だよ~。 何が金融論だよ~。 俺っちが教えてやら~。 自分の金で実地にやってら~。」 ええ~? どう言うこと?

 

「とら。 退いてよ。」と猫の傍らにある分厚い本を手に取る由里。 そこには「会社四季報」が。 ひょっとして由里ってデイトレーダー?

 

邪魔者扱いされたとらは、お尻を由里に向けて不貞寝。 「あ、ご~め~ん。」と宥める由里。 仲睦まじいことで。