我が家の愛猫・とらの写真は、相当な数があり、二年前に亡くなってからその整理のために全てデジタル化したものをPCに取り入れ、また、拡大したものを額縁に入れて各部屋に掲げています。
その中でも2000年10月8日(日曜日)のものは特別に思い出があります。
日曜日の午後に昼寝を共にしたのです。 何時もの様に右を向いて寝る私の差し出した右手を枕に寝ていた愛猫が、私が起きても起きず、寝たままでしたので、その寝姿を何枚か撮影したのです。 横でカメラを構える私を知っていたのか知らずに寝ていたのかは分かりません。
何時も飼い主と共に寝る布団で寝ると落ち着くのか、飼い主が留守にした時には何時も同じ布団で寝ていたように思います。 何年かの後に何頭もの仔猫が来てからは、飼い主とは寝ずに仔猫達が大きくなっても共に寝ていましたが、我が家にとらのみが居た時が、とらと私との一番幸せな時間が在ったようでした。
その後、老猫になり腎臓病で六年の間共に闘病しました。 亡くなる二日前に後脚を引き摺り飼い主の膝元に来た時には、自覚は無かったのですが、知らずとも覚悟したのか、その時代を思い出しながら、またとらと一緒に寝ることにしたのでした。
そして、二日後に私の眼を見詰めたまま亡くなりました。 何度眼を閉じても両眼を見開いていましたが、抱いた体が硬くなり、亡くなったのだ、と自分に言い聞かせたのでした。
今は、2000年10月8日の午後に戻ることが可能ならば、また右手を枕に差し出すのに、と自分の右手を見ています。
ともあれ、下記は、300字の「愛猫・とらの奉仕者」です
「由里さん、今夜のゼミコン行かないって、ホント~?」と男子が集まって来る研究室のドア近辺。
「あたし~。 早く帰らないと~。」と下を向いて言いにくそうな由里。
「残念だな~。」と男子一同。 それを厳しい眼で見る女子が何人か。 でも構わずに帰途についた由里。 ガレージに愛車を停め置き、屋内へ、玄関ドアを開け後ろ手で閉め施錠し、ドア近くに設置した格子の網戸を透かして内部を覗き、中に入る。
「居ない~。」と独り言ちてキッチン、リビング、と探す。 「出られる筈無いし~。」と渋面の由里。 寝室に入り、朝に脱ぎ捨てたジャージをフロアから拾おうとした途端に満面の笑み。
そこには由里の匂いに包まれたとらが寝息を立てて居た、とさ。