愛猫・とらの御土産

猫の飼育は、完全室内飼い、と言うのが今では常識ですが、亡父母の時代にはそれは無く、我が家の愛猫も亡母が居たごく短い時期には戸外に出していました。 でも間も無く獣医さんからの強い御達しで完全室内飼いに移行しました。 そして眼病にもなったので、終生獣医院通いが続きました。 御蔭で腎臓病の早期発見にも繋がったことでしたが。

しかし愛猫・とらにはそんな事情が通じる筈も無く、また、とらは、特殊な能力(?)があるのもあって、飼い主の隙をついて戸外に出て、次から次と御土産を持って帰るのでした。

短時間にどうしてそんなものを捕えるのか、と不思議でしたが、困るのは、その「御土産」の処理でした。 ネズミ、トカゲ、は言うに及ばず、ヘビ、ハト等と御土産を玄関先で誇らしげに空へ投げ上げるのでした。 何度も、何度も。

以下字数278字の柄の悪い美女・由里とその愛猫・とらの小話です。

「早く開けよ、てめえ~。 トイレ行きたいんだよ~。」と柄の悪い由里がマンション自室のドアをガチャガチャと開けている。

「あいつ居ねーな~。」と薄く開けたドアからそ~と部屋内に入る由里。 とその一瞬の隙に、同居猫のとらが脇をすり抜けて戸外に出る。

「ああ~、またやられちまった。」と天を仰ぐ由里を脇目に階段まで飛んで出たとらが、戸外に出る。

暫しの時を置いて、夕闇迫るマンション近くの公園で、名前を呼ぶ飼い主に応えて走り寄る猫を見て「あいつ~、何を喰えてんだ~」ととらが咥えた長~い紐のようなものを見た由里。

ギャーと叫ぶ声に応えて、今度は、パトカーが飛んで来たそうな。