(2024年8月5日)
今、話題の人物と言えば、広瀬めぐみ。瞬間のことではあろうが、国会議員として最も知名度の高い「時の人」である。この人のやること、とても分かり易い。分かり易く、自民党のなんたるか、自民党議員とはいかに破廉恥な存在であるかを、身をもって世に知らしめる貴重な役割を果たしている。まことに得がたい人物と言わねばならない。
袖擦り合ったこともない間柄だが、私とは同郷の盛岡出身、そして所属弁護士会も活動分野も異なるにせよ弁護士だそうだ。真面目に、普通の弁護士として身を処していればよいものを、なまじ選挙に担ぎ出されて汚名をさらすことに。いや、実にタイミング良く、自民党の没落を目指して八面六臂の大活躍となった。
2年前の夏、22年7月10日投開票の参院選岩手選挙区で、広瀬は26万4000票を獲得して当選した。何の実績も理念もない候補者、政治家としてこれをやりたいという個性もアピールもない、典型的な数合わせのためだけの陣笠議員。こんなものに、26万人を超える県民が票を投じたのだ。おそらくは、その大部分が、「こんな候補者に投票した覚えはない」「こんな人物と知っていたら投票したはずはない」「ダマされた」「票を返せ」と思っているに違いない。ダマしたのは、広瀬ではなく、自民党である。
「故郷の誉れ」「故郷に錦」などという言葉がある。疑いもなく、広瀬めぐみは「故郷の恥」「岩手の恥さらし」となった。いや、県内全域に自民への嫌悪感を醸成した点において、故郷岩手民主化の功労者と言うべきであろう。表彰に値する。
この人の頭の中はネトウヨ並みである。およそ知性とは縁がない。
自民党公認の参院選予定候補者になって後の22年2月4日、自身のツイッターで広瀬は、無知をさらけ出して、以下のたどたどしい反共作文を投稿をしている。
「立民は資本主義、民主主義に立脚するはずなのに、なぜ、個人の資本を否定する共産党と組めるのか、法律家の私には最大の謎。自分の稼いだものも、他人の稼いだものも、すべて“みんなのもの”で、党が管理し分配する“共産主義”と手を組んだのですよね?!私たちの自由を手放したも同然じゃないですか。」「票取りのために耳触りのよいことを言っても、本質は個人の自由を認めない共産主義。どれだけ恐ろしいかは歴史が証明していると思います。」
なんと底の浅い前世紀の、いや19世紀の世迷い言。この人、資本主義も民主主義も共産主義もまったく分かってはいないのだ。《自分の稼いだものも、他人の稼いだものも、すべて“みんなのもの”で、党が管理し分配する“共産主義”》《個人の自由を認めない共産主義》って、どこの宣伝物からの借り物なのだろうか。統一教会による反共宣伝のウロ覚えのレベル。
なお、「耳触りのよいこと」は、現在の国語としては間違い。こういう言語感覚の鈍い人の言葉づかいは、どうにも「耳障り」で抵抗感が強い。
まずはエッフェル姉さんの一人として名を馳せ、次いで赤いベンツの不倫騒動で世の中の顰蹙を買い、国会では居眠りの大写しで恥をかき、そして今回の公設議員秘書報酬詐欺疑惑。国会議員が東京地検特捜部から詐欺の疑惑ありとされ、しかも、弁護士が強制捜査の対象とされているのだ。こんな屈辱的なザマはない。
もちろん、権力による理不尽な弾圧という可能性もないではない。ならば、敢然と検察権力と闘う姿勢を見せなければならない。しかし、広瀬にはそのような毅然たる態度の片鱗もなく、定番コースの離党届け提出止まり。闘う姿勢は皆無というばかりでなく、身を引く潔さも微塵も見えない。
通常の羞恥心を持つ「廉恥の人」なら、即刻身を引いて議員辞職をするところだろう。このあと、不倫問題専門弁護士として身を処すこともできないではなかろう。しかし、ここで身を引いてもらっては身も蓋もない。飽くまで議員としてのイスにしがみついて、残る4年間の歳費をもらい続けるのが、自民党公認候補として当選した議員の正しい姿ではないか。また、潔く身を引いては、広瀬めぐみの広瀬めぐみたる所以も失われかねず、それではまことに惜しい。
私は、同郷人として、また一人の弁護士として、議員としての広瀬めぐみを応援し続けたい。できることなら、次の選挙まで何もせず、ただただ、歳費の取得を続けていただきたい。自民党の候補者だ、当選のためには定めし金も使ったであろう。投下資本を回収するまではがんばらなくちゃあ。できることなら、不倫も復活し、議会ではもっと派手に居眠りして、その醜態を国民にさらし続けていただきたい。
そのようにして初めて、故郷岩手の有権者に貴重な教訓を与えることができる。うっかり自民党公認候補などに投票すると、こんなばかげたことになるという優れた見本として、真に役に立っていただけることにもなる。岩手の有権者が、「こんな薄汚い候補者に投票した覚えはない」という臍を噛むレベルを超えて、「二度と自民党の推す候補者に投票などするものか。絶対に」と決意していただくまで、広瀬議員にはもう一働きお願いしたいのだ。わが故郷、岩手の民主主義の発展のために。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記 改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。」2024.8.5より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=21592
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion13832:240806〕