戦争の最初の犠牲者は真実である シリアを巡る《嘘の大名行列》

http://doujibar.ganriki.net/Today’s%20World%20of%20Fraud%20&%20Myth/Mas-media_as_a_troop_for_propaganda.htmlより転載。)

戦争の最初の犠牲者は真実である シリアを巡る《嘘の大名行列》

 近代の戦争は《大嘘の大名行列》と共に行われる。「下にぃ!下にぃ!」という三下奴(やっこ)の掛け声に続いて馬に乗った護衛官たち、そして金ぴかに飾りつけた篭に収められる《大嘘様》、その周囲を固める「現代神話の憲兵」たちが、天下の大道を大威張りで闊歩するのである。人々は道端に土下座してひれ伏し、顔を上げてその篭の中にあるものを見ることは許されない。
 三下奴たちのはっぴにはCNNとかNBCとかBBCとかNHKなどをあしらった家紋が大きく描かれる。護衛官どもは「検閲」「捏造(ねつぞう)」「証拠破壊」「無視」「矮小化」「すり替え」などの様々な凶器で武装し、篭を取り巻く憲兵たちの腕には「自由」「民主主義」「平和」「人権」「人道」などの文字の書かれた腕章が巻かれている。
 顔を上げて篭の様子を伺う不埒なやからがおれば、憲兵が飛んできてその者の目と口に「陰謀論」「トンデモ」「テロリスト」などの呪文が書かれたレッテルをべたべたと貼りつけて「無礼者!下がりおれ!」と叫ぶ。すると周囲の土下座している人々が顔を伏せたまま集まり、その者を組み伏せて道から放り出し、控える役人の手に渡す。
 《大嘘様》の篭の後には暗黒の雲が続き、その中で重火器とミサイルで武装した兵士たちが重々しい足音を響かせ、大道は次々と血と叫びと破壊に覆われる。こんな行進が数限りなく、いつまでも終わることなく続けられる・・・。戦争の最初の、そして最終的な犠牲者は、常に真実なのだ。

 1898年の米西戦争のような古い例まで持ち出すまでもあるまい。つい20年ちょっと前の(第1次)湾岸戦争の際に行われた「クウェートの病院でイラク兵士の残虐行為」、「油まみれの水鳥」、「サダムによる石油放出」といった大嘘の数々、核兵器に匹敵する膨大な死者をもたらす気化爆弾や永遠に災厄を残す劣化ウラン弾使用の無視と矮小化だけでも、この《大嘘の大名行列》の光景は十分に描写されているだろう。その後の(第1次、第2次)バルカン戦争はもちろん、911事件から続くアフガニスタン・イラク戦争、そして現在進行中の中東~北アフリカ再編(俗に言う「アラブの春」)、対シリア・イラン戦争と、ますます派手で大規模に繰り広げられる《大嘘様》の行列は、世界をまさに黙示録の中に引きずり込もうとしているかのようである。
 中にはイラク開戦理由のように、世界的な規模でその虚構が明らかにされた例もある。しかし、その《大嘘様》が罰せられることはない。大嘘を垂れ流したマスコミがどこ一つとしてその報道の責任を取ったためしがない。大嘘を信じ込んで戦争を煽った者たちの誰一人としてその発言の責任を取ったためしがない。「人権」や「人道」や「反戦平和」を標榜する団体のどれ一つとして大嘘を戦争犯罪として告発した例はない。いったい誰が《嘘の大名行列》を形作っているのか、もはや誰の目にも明らかである。こいつら、みんなグルなのだ。そしていま、その《大名行列》はシリアを蹂躙しつつあり、イランとロシアに近づきつつある。

 日本でどれくらい報道されているのかは知らないが、欧州ではこのごろ毎日のようにテレビ画面と新聞紙面はシリアでの「アサド政権による残虐行為」が、生々しいビデオ映像と共に報じられている。ちょうど1年前、リビア攻撃の際も同じだった。2001年以後に起きた様々な「イスラムテロ」の報道でもそうだった。同様なうさんくさい人目を引く映像が、いまシリアを標的にして、何の根拠も示しえない解説と共に垂れ流されているのだ。そしてそのいくつかでは、すでにその捏造報道の実態が明らかにされている。そして、現在の世界ですっかり貴重種となってしまった良心とジャーナリスト精神を持つジャーナリストが、そのあまりにひどい捏造ぶりに耐え切れず、アルジャジーラ放送での職を自ら辞した。
 ロシアの実質的な国有メディア、RT(ロシア・トゥデイ)はこの大嘘と真っ向から対決し、辞職したジャーナリストの勇気と良心を褒め称える。今回はそれに関連するRTの記事とビデオから、この3月14日にリリースされた2つをご紹介したい。
 一つは
Wag the dog: How to cook-up Syrian drama (2012/03/14)
http://rt.com/news/syria-information-wars-west-553/
そして
‘No independent journalism anymore’ – ex-Al Jazeera reporter (2012/03/14)
http://rt.com/news/hashem-al-jazeera-resignation-523/
である。この全文の下にその仮訳を掲げておく。
 第1の記事にあるシリアの反乱勢力中心地だったホムスでのでっち上げ報道の実例と、それに絡む英国籍の人物についての情報には次のような報告もある(英文)。またビデオにも収められている。
Hollywood in Homs and Idlib?
http://english.al-akhbar.com/blogs/sandbox/hollywood-homs-and-idlib
Truth About Danny Abdul-Dayem (YouTube Video)
http://www.youtube.com/watch?v=p-DCZxsrt9I
 シリアの反政府勢力が米国と欧州から与えられた大量の兵器を用いてきたことはもはや周知の事実であろう。またこのRTの記事にもあるが、ホムスで大勢の市民が虐殺されたのは政府軍によってではなく反乱勢力の側によってであることは次の報告でも詳しく説明されている。
“The Most damning Video on Syria” is a Fake
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=29776
 さらにNATO軍の秘密部隊がシリア内で活発に行動しているという情報もある。
Stratfor leaks: NATO commandos in illegal special ops in Syria
http://rt.com/news/stratfor-syria-secret-wikileaks-989/
(※ このメールを発信しようとしていたら、こちらの新聞で、ダマスカスで2回の爆破テロが起こり、少なくとも27名が死亡、140名が負傷というニュースが入った。やり口は明らかにイラクなどのテロと同じく「アルカイダ」のものだろう。いまクリントン米国国務長官も認めるとおり「アルカイダ」は米国・NATOと連合を組んでいるのだが、元々が米国諜報部の一部だったのだからこれも当然だろう。「アルカイダ」が米国・NATOの汚い仕事を請け負ってきた集団であることは過去の「イスラムテロ」を見れば一目瞭然である。シリアでの一般市民の被害の大半がこのような(真の意味の)テロ活動の犠牲であろう。)

 過去の嘘に気付かない者は現在の嘘にも気付くことがない。現在の嘘に気付く者は過去の嘘を知ることができる。いまシリア、そしてイランとロシアに対して垂れ流される《嘘の大名行列》は、あらゆる過去の大嘘を見抜く鍵である。

(2012年3月16日 バルセロナにて 童子丸開)

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(以下、童子丸開による仮訳)http://rt.com/news/syria-information-wars-west-553/
尻尾が犬を振る:シリアのドラマがどんなふうに料理されるのか
2012年3月14日20時52分 公開 

【次はRT記事にあるものと同じYouTubeビデオ】
http://www.youtube.com/watch?v=4lDIWYbNIV4
【ビデオのスチル写真につけられたキャプション】『ホムスの病院で撮影されたビデオの1ショット。アルジャジーラのスタッフがビデオ放送を捏造している様子だ。怪我をした少女に、バシャール・アル・アサドを「神様が罰してくれるでしょう」と言うように教えている。』
 一部の主要ニュース・チャンネルが最近、シリアからの怪しげなビデオ映像を流しているのをキャッチされている。それは、この国で起こりうる軍事介入を正当化するメディアの役割を巡る論争をひき起こしている。
 「ダニー」は、CNN、BBC、アルジャジーラ、そしてアルアラビヤのためにホムスから報告を送るシリアの反政府活動家である。彼は反政府運動に張り付いており、絶えずシリアへの介入を呼びかけている。ダニー・アブドゥル・ダイェムはシリア生まれでイギリス国籍の22歳の人物であることが分かっている。
 オンラインに流されるビデオの中で、ダニーはCNNのためにビデオ放送を捏造している様子である。放送される前、彼は仲間たちに、アンダーソン・クーパーと組んだライブ・レポートを劇的にするために銃器を発射させるように要求する。そのビデオが放送された後でのCNNのインタビューでは彼はあらゆる悪巧みを否定したのだが、その裏づけあるニュースソースとしての信憑性が疑問にさらされた。
 ダニーは拡大しつつある薄汚い情報戦争での孤独な兵士などではありえない。調査報道ジャーナリストのラフィク・ロトフは、この紛争についての世界的な見解を作り上げたビデオ映像の背景を調査するために何ヶ月も費やした。彼はRTに対して、シリアの政権の信用を失墜させるビデオ捏造にアルジャジーラが絡んでいることを語り、アルジャジーラが、シリア政府軍が石油パイプラインを爆破した証拠として描いたビデオ映像を取り上げる。
 「私はこのビデオがアルジャジーラのサーバーにあることを知っている。それが爆破などでないことは明らかなのだが、彼らはそれを無視して、そのように見るために必要なやり方で報道し続けているのだ。」
 このビデオクリップは、Infowars.comで推測されるように、自らパイプラインを爆破した反乱側によって用意されたのかもしれないとすら考えられている。
シリア非難合戦の暗転
 シリアの地でビデオ映像の立証が困難な、というより不可能なことは、どのジャーナリストも認める。
 最近のショッキングなビデオは47人ほどの死体を映しており、その中には喉をかき切られた女性や子どもの姿もあるのだが、刺し傷とレイプの跡を残している。反政府側は国連安全保障理事会にこの「虐殺」についての緊急会議を開くように求めた。
 アサド政府はその逆に、「テロリストのギャングども」がビデオにある人々を殺したものであり、ホムス住民たちが死体の中に親族がいることを確認したと主張した。その人々は以前にシリアの反乱勢力によって誘拐されていたのだ。
 非難合戦が下火になり市民生活の困難が続くときに、最近起こったアルジャジーラの有力なジャーナリストたちの辞職が、主要メディアによるシリア紛争映像の一部が客観性とはかけ離れていることの、明らかな指標としなるものかもしれない。

【以下の記事は、この3月に、TV局のあまりの偏向ぶりに業を煮やして辞職したアルジャジーラ記者についてのものである。】

http://rt.com/news/hashem-al-jazeera-resignation-523/
「独立したジャーナリズムなどもう存在しない」――元アルジャジーラ・レポーター
2012年3月14日12時04分 公開
2012年3月14日15時14分 編集

【次はRT記事にあるものと同じYouTubeビデオ】
http://www.youtube.com/watch?v=2THjgtWABHM

 TVチャンネルは、ある外部勢力のためのアジェンダを推し進めながら、政治党派へと変化している。元アルジャジーラのベイルート特派員であるアリ・ハシェムはRTにそう語った。ハシェムはその偏向ぶりを告発してこのテレビ局を辞職した後でスポットライトの中に入ってきたのだ。
 シリアのハッカーにリークされたe-メールの中でアリ・ハシェムは、アルジャジーラのシリアに対する一方的な報道ぶりとバーレーンでの事件【訳者注:バーレーンでは王政に対する激しい民衆の抵抗が続いている】報道の拒否に対する怒りを漏らした。RTの独占インタビューの中で、この元ベイルート特派員ハシェムは自分の辞職について語ることは控えたが、しかし今日独立したメディアは神話となっていると強調した。
 「独立したメディアなどもうどこにもありません。メディアの局に対して金を払う者のアジェンダがあるのです」と彼は言った。「メディアの政治化とは、今日メディアの各局が政治党派のようになっているという意味です。みんながある一つの見解を採用し、そのために争い、そして最高の視聴率を得るために持てる限りの道具と手段を動員するのです。」
 いまや、様々に異なった情報源からのニュースを比較しそして自分自身の結論を出すことは視聴者の作業になっているとジャーナリストたちは信じる。「今日我々は開かれた情報源の時代、みんなが自分の望むあらゆる情報に接することができる時代に生きているのです」。この状況の問題点は、いくつかのニュース局が他よりも大きな視聴率を得ることができることだとハシェムは言った。「それらが語ることは事実ではないかも知れないのに事実であるように見えてしまうでしょう」。
 マスメディアは、戦争や紛争に出くわしたときに「免疫」であるべきだ。それが言論の自由を補償するからである。このようにハシェムは信じる。彼は「2006年にイスラエルはアルマナールTVを爆撃しました。アルマナールが反イスラエルのプロパガンダ戦争をしていたからだと彼らは言いました」と語った。「アルマナールはこの戦争の一方の側におり、ヘズボラーと抵抗運動と対イスラエルの戦いを支持していたのです。しかしこのことがイスラエルにとってアルマナールを爆撃したことの言い訳になるでしょうか。絶対になりません」。
 我々はジャーナリストとして、我々の視点がいかなるものであれ、(もはや独立したジャーナリズムが存在しないからこそ)いかなる言いたいことでも安全に言える権利を持つべきなのです。爆撃されたり殺されたり追い出されたり逮捕されたりすると脅かされること無しにです」。こうハシェムは結論付けた。
 アルジャジーラは最近そのベイルート支局から重要なメンバーが辞めて出て行ってしまう憂き目に遭った。特派員アリ・ハシェム、チーフディレクターのハッサン・シャアバン、そしてプロデューサーのモウサ・アーマドである。
 そのプロフェッショナルたちは、このTV局の「アラブの春」に対する報道での偏向を告発したのだ。特にシリアとバーレーンでの出来事であり、それが彼らの辞職の理由だったのである。
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1874:120319〕