本日は、小平での吉田博徳さんの朝鮮史の講義。講義のタイトルは、「日本と朝鮮の2000年」。2000年の日朝関係史を2回で語ろうという。壮大な企画。
前回が朝鮮の誕生から幕末まで。そして第2回の本日が、我が国の明治維新から現在までの150年。資料は別にして、講義の骨格となった吉田さんのレジメだけを掲載しておきたい。立派なもので、参考になるのものと思う。
近年、慰安婦問題・徴用工問題等、日本の植民地支配時代の日本の違法が清算されていないことが話題となっている。あらためて、日朝・日韓の関係史を確認し直す必要があると思う。この企画は、時宜を得て講演者・受講者の熱意溢れるものだった。また、1921年生まれで、幼児期から青年期までを当地で過ごした吉田さんならではの貴重な講義でもあった。
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=日本と朝鮮の歴史を正しく知ろう=その1
主催「学びあい支えあう会」
後援 日朝協会小平支部
講師 吉田博徳氏
一、 はじめに
日本と朝鮮の歴史の流れについて、骨子を知ること
二、古代の日本と朝鮮
1 日本民族はどうしてできたか 北、百、南から流入した。
2 朝鮮の誕生
①檀君神話と箕氏朝鮮・衛氏朝鮮 三韓(馬韓・辰韓 弁韓)時代
②古代朝鮮と口本の文化
三、三国時代と日本(高句麗・百済・新羅)
1 高句麗の歴史と概要(BC 18~AD 688)
絶えず北方狩猟民族の侵略と闘い、668年に唐・新羅連合軍のため滅亡
2 百済の歴史の概要(BC18~AD663)
農業と文化の興隆に努力し、日本との交流 663年に滅亡
日本は百済再建を援助し、自村江の決戦敗北
3 伽耶(伽羅)の歴史(~AD562)
4 新羅の歴史の概要(BC57~AD935)
約1000年の歴史を持ち、朝鮮半島の統一を達成 その要因
新羅と唐との関係
5 古代朝鮮と日本の関係
大量の渡来人の来日 北方民族の防波堤
四、高麗王朝と日本 (936~1392)
1 高麗王朝の特徴と経過
北方民族、モンゴルの侵略との闘い
2 倭寇の侵略と刀伊の来襲 元寇(文永の役・弘安の役)
五、李氏朝鮮と日本(1392~1910 徳川時代末 1868まで)
1 李氏朝鮮国の特徴
封建的支配体制の整備 世宗によるハングルの制定
2 豊臣秀吉の朝鮮侵略(1592~1598)
第一次侵略(文禄の役)第二次侵略 (慶長の役)
秀吉の朝鮮侵略は何をもたらしたか
3 徳川幕府の朝鮮政策
朝鮮通信使に対する優遇 朝鮮貿易
六、「その1」のまとめ
秀吉の朝鮮侵略を除き、全期間を通じて友好・協力関係であった。
朝鮮からの渡来人は、日本文化の発展に大きな貢献を果たした。
=日本と朝鮮の歴史を正しく知ろう=その2
一、はじめに
紀元前後から徳川時代までの約1800年間は、倭寇と豊臣秀吉の朝鮮侵略を除いて日本と朝鮮は極めて親密であり、朝鮮からの渡来人が日本文化に大きく貢献した。
二、明治維新から韓国併合まで
1 明治維新の性格と朝鮮政策の根源
2 江華島事件。日朝修好条規
3 壬午(じんご)軍乱と済物浦(さいもっぽ)(仁川)条約
4 甲申政変と漢城条約
5 束学農民戦争と日清戦争
6 闘妃暗殺
7 日露戦争と朝鮮 朝鮮の支配権をめぐってロシアと戦う
8 伊藤博文の威嚇外交 第二次日韓条約の乱暴
9 韓国軍隊の解散と義兵闘争
10 安重根(あんじゆんぐん)による伊藤博文の暗殺
11 韓国併合条約
三、日本の韓国植民地支配
1恐怖の武断政治
朝鮮総督府の性格 寺内正毅初代総督による韓国人の無権利状態
2土地調査事業 韓国の農民から土地を取り上げる仕組 日本人の農場の進出
3「3・1独立運動」 独立万歳を叫ぶ非武装の大衆デモに武力弾圧
死者7,509人 負傷15,961人 逮捕者 46,949人などの被害
4 関東大震災と朝鮮人大虐殺
なんの罪もない朝鮮人6,000人以上を虐殺して、調査も謝罪もしない賠償もしていない
5 15年戦争と朝鮮
①侵略戦争の兵粘基地
②強制連行
③日本軍慰安婦
④皇国臣民教育 創氏改名など
⑤朝鮮人に徴兵制を施行
四、まとめ
1 「植民地時代に良いこともした」論について
2 戦後処理を正しく行わなければ、何年たっても真の友好は生まれない
3 北東アジアの地域共同体構築のために努力しよう
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講演後、会場から今回の徴用工判決について質問が出た。予め、吉田さんは経過の概要と評価とをまとめた資料を用意して回答し、会場にいた私を指名して補充の説明を求められた。その話の内容を、これも以下のレジメにしてみた。なにがしかの参考になろうかと思う。
徴用工訴訟・大法院判決の概要
2018/11/25 弁護士 澤藤
※経過 1997年日本での提訴の前史がある。(敗訴確定)
韓国での提訴が2005年。(徴用工4人)
一審判決(原告敗訴)⇒二審判決(原告敗訴)⇒大法院差し戻し(2012年)
差戻審判決(原告逆転勝訴)⇒大法院判決・2018年10月30日(確定)
※「核心的争点」は、
原告(元徴用工)の被告新日鉄住金に対する「強制動員慰謝料請求権」が、
日韓請求権協定の成立によって消滅したか否か。
※その判断の枠組みは
1本件「請求権」は、解決済みとされた協定の適用対象請求権に含まれているか。
2含まれているとすれば、協定の効力は原告の本件「請求権」にどう影響するか
「強制動員慰謝料請求権」は消滅する? しない?
消滅したのは外交的保護権だけ? 裁判を起こす権利(訴権)も?
※意見の分布(13裁判官)
(1) 多数意見(7名) 結論⇒原告勝訴
「強制動員慰謝料請求権」は、協定の適用対象請求権に含まれていない。
従って、協定の締結によって消滅していない。
(2) 個別意見1(1名) 結論⇒原告勝訴
大法院差し戻し判決の羈束力として含まれていないと解釈するしかない。
(3) 個別意見2(3名) 結論⇒原告勝訴
「強制動員慰謝料請求権」は、協定の適用対象請求権に含まれている。
しかし、同協定によって原告らの個人請求権は消滅していない。
協定によって剥奪されたのは、外交的保護権だけである。
(4) 反対意見(2名) 結論⇒差し戻し(実質原告敗訴)
「強制動員慰謝料請求権」は、協定の適用対象請求権に含まれている。
同協定によって外交的保護権だけが消滅しただけではなく、
原告らの個人請求権の行使(訴権)が制約されたと解すべきである。
※影響 他の裁判への影響 被告は三菱重工業、不二越、IHIなど70社超
元徴用工は22万余(運動体には100万説も)
※本質 植民地支配の未清算 戦争遂行のための外国人の人権侵害
※これまでの日本の見解
政府も、最高裁も、請求権自体の消滅は語っていない。
★日本政府の反応
アベ「国際法に照らしてあり得ない判断だ。日本政府としては毅然と対応していく」
河野「元徴用工の個人請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決済」「国際裁判を含めあらゆることを視野に入れた対応をせざるを得ない」
外務省「今後、韓国政府の出方を見極めたうえで協議開催を求める。協議が不調に終われば、第三国の委員を交えた仲裁委員会での話し合いを求める見通しだ。それでも解決しなければ国際司法裁判所(ICJ)への提訴も検討する。」
★新聞論調(2018.11.7 【社説検証】から引用)
1965年の日韓国交正常化の際に結んだ請求権協定では、日本政府や企業の賠償問題は「完全かつ最終的に解決された」と明記された。韓国政府も個人の請求権を含め解決済みだと認めてきた。しかし、韓国最高裁は「植民地支配や侵略戦争遂行と直結した反人道的な不法行為」と決めつけ、個人請求権を認めた。
こうした判決は、現在の日韓関係を根底から覆すものでしかない。朝日、毎日を含め各紙社説は韓国最高裁の判断を批判する論調でほぼ足並みをそろえた。
韓国の徴用工判決 産経「史実歪め国の約束無視」
★政府とメディアのミスリードによる排外主義世論に警戒を。
(2018/11/25)
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ウソとごまかしの『安倍政治』総検証!
12月3日(月)18時~20時(17時30分開場)
衆議院第1議員会館 地下1階「大会議室」
衆議院第1議員会館は丸ノ内線・国会議事堂、有楽町線・永田町駅
(どなたでもご参加いただけます。
議員会館ロビーで入館証をお受け取り下さい。)
民意を無視して9条改憲を強引に進めようとしている「安倍政治」。その「安倍政治」において、公文書・公的情報の隠蔽・改竄・廃棄・捏造が横行し、権力のウソとごまかしが国民主権や議会制民主主義を脅かそうとしています。
私たちは、森友・加計学園に典型的にみられる権力の私物化、「働き方改革」のウソ、外交交渉の内容の捏造等々、ウソとごまかしによる「ポスト真実」の政治を許せず、アピールを発表して賛同の署名を呼びかけました。
下記のとおり、賛同署名集約の集会を開催いたします。この日、署名簿を安倍晋三氏に届けるとともに、この集会にさまざまな分野からの発言を得て、「安倍政治のウソのごまかしを総検証」いたします。そして、どうすれば、安倍政治に終止符を打つことができるか考えてみたいと思います。どうぞご参加ください。
司会 澤藤統一郎(弁護士)
挨拶 浜田桂子(絵本作家)
「安倍政治」と「ポスト真実」
小森陽一(東京大学大学院教授)
「働き方改革」一括法と「ポスト真実」
上西充子(法政大学キャリアデザイン学部教授)
「公文書管理」と「ポスト真実」
右崎正博(獨協大学名誉教授)
日米FTA(自由貿易協定)と「ポスト真実」
古賀茂明(元経済産業省官僚)
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初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2018.11.25より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=11577
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion8177:181126〕