衆院選は12月4日公示され、16日投開票が行われる。第3極、第4極を目指して新党が続々誕生、異例の12党乱立の選挙になった。政争に明け暮れ、政策が実行されない政治状況を反映したものだけに、今回の選挙は「日本政治の転換点」とも言える重大な意味を持つ。11党首(新党日本・田中康夫代表は不参加)による討論会が11月30日、日本記者クラブで開催された。原発政策の在り方や改憲問題、金融政策、TPP(環太平洋連携協定)交渉参加をめぐって論争が2時間半繰り広げられた。
「原発ゼロ」政策を掲げたのは、民主など8党
この中でも、脱原発と改憲問題が最も重要争点と考える筆者は、主だった各党の主張を簡単に紹介して、分析を試みたい。野田佳彦首相は「2030年代に原発ゼロを目指し、あらゆる政策資源を投入する」と強調。日本未来の党・嘉田由紀子代表も「大地を汚し、故郷を奪う原発から卒業する。10年後までの卒業を目指す」と、さらに踏み込んだ考えを表明した。これに対し、安倍晋三・自民党総裁は、安全神話に寄りかかってきた過去の政策を反省しつつも、「今の段階で原発を止めてしまえば、日本には原子力関係の技術者は育たない」などと苦しい答弁。「30年までにフェードアウト(消えていく)と記した政権公約について詰問された日本維新の会・石原慎太郎代表は、公約を取り消させる」と答えざるを得なかった(松井一郎・同会幹事長は直ちに『党としての決定だ』と反論)。
東京新聞11月21日付朝刊が党首討論前の講演会で、石原氏が「核を保有しない国の発言力は弱い。核兵器に関するシミュレーションやった方がいい。一つの抑止力になる」と発言したと報じていたが、こんなことを堂々と言える時代状況になったことが恐ろしい。
また「首相候補は誰ですか」と問われた石原氏は、「平沼赳夫・元立ち上がれ日本代表だ」と答えるなど、維新の会内部のチグハグぶりを露呈してしまった。
結局、12党(新党日本を含む)のうち、民主党・共産党・社民党・日本未来の党など8党が「原発ゼロ」政策について手法・工程などに差があるものの、目指す方向は一致していると受け取っていい。
何故かトーンダウンした安倍、石原氏の改憲論
一方、憲法改正問題についての論議が低調だったと思う。安倍氏は自民党総裁に復帰してから、にわかに改憲についての発言が目立っていた。「自衛隊を国防軍に、現行憲法9条2項を削除。集団的自衛権を行使できるように解釈を改めたい」と力説していたが、党首討論ではかなりトーダウンして、改憲は96条の改憲手続き(3分の2賛成を2分の1に)の改定から始めたい」と答えていた。世論の動向を気にしているに違いない。右傾化する現状を危惧する共産党・社民党党首が厳しく指弾したのは当然と思うが、他党の反応は冷ややかだったのは遺憾だ。特に「平和憲法廃棄」を声高に喧伝していた石原氏が持論を表明しなかったのは、総反撃をかわす狙いがあったと勘ぐれる。メディア各社にも問題意識が欠如していたためか、報道量が不足していたと思う。
嘉田新党と小沢一郎氏へのバッシング
嘉田滋賀県知事が「日本未来の党」を結党したのは、11月27日。結党宣言してから4日目の党首討論に臨んだ。朝日新聞12月1日朝刊は「国民の生活が第一から合流した小沢一郎氏についての質問に対する防戦に追われた」と冷ややかに報じていたが、私の印象は逆だった。デビュー戦としては評価できる答弁ぶりだったと思った。滋賀県知事6年の自負を感じた。「原発以外は、小沢氏の受け売り」との批判もあるようだが、討論会直前まで政策調整を続けた努力を無視しては気の毒だ。11月30日付「ウオッチ」欄で,政井孝道氏が「嘉田新党に関し、どの社説も小沢氏への説明なき嫌悪感だ。数ある彼の言動の中で何をもって今回もダメという書き方は、論理を大事にする社説にふさわしくない」と指摘していたが、同感である。「小沢氏依存では」との問いに、嘉田氏は「小沢さんの力を使わせていただく。小沢さんを使いこなせずに、官僚を使いこなせない」と言い放った心意気に感心した。真面目に政治改革を願って登場した新人を中傷するような言動こそ好ましくない。党首討論の最後に、「自党と近い政党を3つ」挙げてもらったところ、興味深い組み合わせなので列挙しておきたい。
野田佳彦(民主党)①国民新党②?③? 安倍晋三(自民党)①公明党②③なし
嘉田由紀子(未来の党)日本の未来をつくるすべての改革勢力と協働したい
山口那津男(公明党)①自民党②③なし 石原慎太郎(維新の党)①みんなの党②自民党
志位和夫(共産党)①社民党②③一点共闘はどの党とでも
福島瑞穂(社民党)①未来の党②共産党 渡辺喜美(みんなの党)①維新の党②改革③?
鈴木宗男(新党大地)①未来の党②改革 自見庄三郎(国民新党)①民主②自民③社民
舛添要一(新党改革)①みんなの党②維新の党③自民党
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