数字で見る「軍拡路線」国際比較と日本の選択

ロシアのウクライナ侵攻、中国の東アジア地域での軍事プレゼンス増大、北朝鮮の核兵器開発などなど世界情勢は確かにキューバ危機以来の緊張の度を深め、岸田内閣もそれを受けて、戦後安全保障の枠組みを決定的に変更する敵基地反撃能力などをうたった安保関連3文書を「閣議決定」なすった。で中国を「脅威」と位置付けたものだから、あちらさんからは早速「戦前のアジア侵略を繰り返すものだ」云々の想定内反発を頂いた。金額的には現状ざっくり年間5兆円規模を今後5年間で年9兆円強規模に強化する、そのための増税を行うというものであることは周知のとおり。GDP比現状1%を2%にするといっているわけだ。

 

ここまでは、よくある「当社比」の範疇の話だが国際比較してみるとどうだろうか。

 

軍事費推移(2021年上位12か国、名目・百万US$)

スウェーデンストックホルム国際平和研究所(SIPRI)

Stockholm International Peace Research Institute (2022) “Military Expenditure Database”

からのデータは2021年までのものは公表されており、それが以下のテーブルだ。

 

2021年時点では、日本は額で世界第9位、対GDP比は1990年からじわりじわりと上昇して1%強、ところが世界シェアでは1990年3.09%が2.61%へと低下しているではないか。なんでだろ?

 

断トツトップのアメリカはシェアはこの10年余りの間ほぼ横ばいで、大きく伸ばしているのは、なんと文句たらたらの中国と、その中国と長く係争関係にあるインドであることが簡単に見て取れる。中国は2000年で世界シェア3.00%が2021年14.12%。まつさえ核弾頭を600発お持ちになっている(うち100発はありがたくも日本に照準合わせていただいておる)。日本が今後年間防衛費予算を倍にしたとすると、他に変化ないとして世界シシェア5.2%か。ご隣国様の「脅威」には到底なりようもなさそうだ。

 

ちなみに日本は中国からの10発の核弾頭攻撃で地上から蒸発するそうだ(飽和攻撃)。

そうそう、戦前の日本の侵略時代の軍事予算(防衛費ではない)にも目配りしておかないと公正を描くだろう。それを格調高きことこの上ない、財務省管轄財務総合政策研究所のサイトから『昭和財政史(戦前編)』全18巻中第4卷「臨時軍事費」、宇佐美誠二郎先生執筆所収の表を挙げておいた。これ自体は当時の国家予算に占めるウエイトを示して居るが、1937年(昭和12年)日華事変(日中戦争)以降それまでの30~40%台から一気に70%超えとなっていることが見て取れる。30~40%が定常値というのも異常だが、それが敗戦前年まで70%超え。現時点で防衛費のシェアは国家予算比5%なんで比較にもならない高水準で、まかなうために軍事公債の日銀引き受けまで踏み込んだのはよく知られた話。

 

いずれにしても、侵略戦争を中国や東南アジア地域前面に展開しようとすると、これほどの軍事費負担になるということくらいは、読み取れそうだ。

簡単に数字だけを追いかけたが、誤解してもらっては困るが、国際比較や戦前対比でいま岸田内閣が推し進めようとしている防衛政策の転換を筆者が支持しているということではない。敵基地反撃能力というがそんなもの本当に機能するのか、中国からのミサイル攻撃を受けたら、5分で日本は壊滅だ。核兵器である必要もない。日本全土にある50基ばかりの原発に通常ミサイルを撃ち込めば日本は直ちに全土マヒ状態になることをお忘れなく。まずはさっさと原発全廃することが最も有効な防衛手段ではないのか。もっとこの国のリスク要因を多面的に見ておかないと、どぶに金を捨てる仕儀となるにちげーねー。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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