10月20日、政府は、7人の文化勲章受章者と文化功労者を発表した。21日の新聞は、話題性のある受章者のよろこびの声や文化勲章の川淵三郎、文化功労者の北大路欣也らは、写真入りのインタビュー記事が掲載されていた。学術・文化・芸術の分野で、最高の栄誉に輝く人々と報じられ、11月3日には、授与式があり、また、その“よろこび”の姿が報道されるだろう。
文化勲章や文化功労者は、どこでどのように決まるのか。そんな疑問から、調べてみるのだが、釈然としない。
2013年の省庁再編で、文化庁にあった従来の国語審議会、著作権審議会、文化財保護審議会、文化功労者選考審査会を統合して文化審議会を設置された。文化功労者選考審議会は、分科会の一つとなった。その分科会の選考委員名や選考過程も知りたかったのだが、ネット上の検索では、文化庁のホームページに「第23期文化審議会委員名簿」(2023年4月1日付)は掲載されているのだが、どういうわけか、「文化功労者選考分科会分属の委員は除く」との但し書きがついている。
2019年、下記のブログ記事を書くにあたって、たどり着いた文科省の大臣官房人事課栄典班によれば、ホームページに載せないのは、「文化功労者選考分科会は他の分科会と違って、会合は年一度しか開かないので、載せないことになっています」という。一回きりなので、いつまでもホームページに名前が残るのは好ましくないという主旨のことも話していた。名簿が欲しいのなら、今から読み上げるからメモしてくださいという。ファックスもできないことになっているというので、理不尽ながら、慌てて書きとった12人の中で、知っているのは、田中明彦、都倉俊一くらい。この分科会委員の任命は毎年9月1日前後らしいので、今年は、と「官報」を調べてみるが、私には見つけることができなかった。お気付きの方、ご教示いただければありがたい。ただし、官報無料公開は直近90日までとなっている。
文化審議会委員はすべて文科大臣の任命である。任命された文化功労者選考分科会委員は、今年だと、多分野にわたる20人の文化功労者を一日で選考できるわけでもないから、大臣官房の担当部署が作成した候補者名簿を承認することくらいしかできないだろう。名簿作成の資料は、いろいろな伝手から入手してのことだろうと推測する。要するに、選考分科会はすでに形骸化していることになる。文化勲章は、上記のような経過で“選考”された過去の文化功労者の中から文科大臣が推薦した文化勲章候補者を分科会委員全員の意見を聞き、内閣府賞勲局で審査を行い、閣議に諮り決定するのである。
こうした状況は、各省庁の審議会も同様で、官僚の”作文“を了承するセレモニーの一端を担うに過ぎず、「審議会行政」と言われる所以である。そして、官僚が選んだ文化勲章・文化功労者なのに、学術・文化・芸術の分野での最高峰、到達点かのような、華々しさで報道するメディアも、メディア。政府に不都合と思われる人は選ばれない。不都合な言動があった人でも、政府は「なびき」そうな人に目星をつけるのも巧みである。
当ブログでは、すでに何度も繰り返し書いてきたり、拙著『天皇の短歌は何を語るのか』(御茶の水書房 2013年8月)の中でも、指摘していることなのだが、最近の記事としては、つぎの2件がある。
・ほんとうの「学問の自由」とは~日本学術会議、日本芸術院、文化勲章は必要なのか(2020年10月4日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2020/10/post-02d75a.html
・いったい、文化勲章って、だれが決めているのだろう~その見えにくい選考過程は、どこかと同じ? (2019年11月27日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2019/11/post-35d417.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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