「韓国通信NO593」
3月1日にソウルで行われた3.1運動100周年記念式で行った文大統領演説の全文を翻訳した。ヴェトナムのハノイで開かれた米朝首脳会談が不調に終わった翌日、日韓関係が悪化するなか、大統領の演説は例年になく注目された。しかし、NHKを始め、民放各社の関心はもっぱら日本に対する発言だけに集まり、「日本を意識した抑制された内容」だったと、異口同音に短く報道しただけだった。
文大統領の演説に注目して欲しい。3.1独立宣言と独立運動を振り返りながら半島の平和、アジアと世界平和に向けた強い意志とメッセージが伝わる内容である。
<3.1演説>
尊敬する国民のみなさん、海外同胞のみなさん。
100年前の今日、私たちはひとつでした。
1919年3月1日正午、学生たちは独立宣言書を配りました。午後2時、民族代表者たちは泰和館で独立宣言式を行い、タプコル公園で5千人余りの人たちと宣言書を読み上げました。タバコを断ち、貯蓄をして、金銀、かんざし、指輪を差し出し、さらに頭髪を切って売り、国債報償運動※に加わった労働者と農民、婦女子、軍人、人力車夫、妓生、白丁、小作人、零細商人、学生、僧侶など市井の人たちが3.1独立運動の主役になりました。 ※1907年大邱で始まり全国に広がった大韓帝国の日本政府からの借款を国民の募金で返済する運動
その日、私たちは王朝と植民地の民から共和国の国民に生まれ変わりました。独立と解放に向けて、民主共和国のための偉大な旅を開始しました。100年前の今日、3月1日には、南も北もありませんでした。ソウルと平壌、鎭南浦と安州、宣川、義州、元山までマンセー(万歳)の喚声が沸き起こり、全国至る所で野火のように燃え広がりました。
3月1日から2カ月の間、南・北韓を分けることなく、全国220の市郡のうち211カ所でマンセーのデモが起きました。喚声は5月まで続きました。
当時の韓半島全体の人口の10%に相当する202万余の人たちがマンセーデモに参加しました。7,500余名の朝鮮人が殺害され、16,000余名が負傷を負いました。逮捕・拘禁された人は46,000余名にのぼりました。
最大の惨劇が平安南道の孟山で起りました。3月10日、逮捕・拘禁された教師の釈放を求めた住民54名を、日本の憲兵が憲兵分遣所の中で虐殺したのです。京畿道華城の堤岩里でも教会に住民たちを閉じ込めて火を放ち、子供を含む29名を虐殺する蛮行が続きました。しかし、それとは対照的に朝鮮人の抵抗で死んだ日本人の民間人は、一人もいませんでした。
北間島の瀧井と沿海州のウラジオストックで、またハワイとフィラデルフィアでも私たちは一つでした。民族の一員として誰もがデモを組織して参加しました。私たちはともに独立を熱望し、国民主権を夢見たのです。3.1独立運動の喚声を心に留めた人々は、自分と同じ普通の人たちが独立運動の主体であり、国の主人だと認識し始めました。それが、さらに多くの人たちの参加を呼び起こし、毎日のようにマンセーを唱える力となったのです。
その最初の成果が大韓民国臨時政府の設立です。大韓民国臨時政府は臨時政府憲章1条で、3.1独立運動の志しを込めて「民主共和制」を定めました。世界の歴史の上で憲法に民主共和国を明記した最初の事例です。
尊敬する国民のみなさん。
親日残滓の清算は余りにも長く放置してきた課題です。間違った過去からは未来に向かって進むことはできません。私たちが正しい歴史を打ち立てなければ、子孫たちは堂々と生きて行けません。民族の正気(正しい精神)の確立は国家の責任であり義務です。
ここでは過去の傷を暴き立て、分裂を引き起こすことや、隣国との外交において紛争要因を作ろうということではありません。それは望ましいことではありません。
親日残滓の清算、外交も、ともに未来志向的に成し遂げるべきです。
「親日残滓の清算」について―「親日」※は反省すべきものであり、独立運動は敬意を払われるべきだという極めて単純な価値をしっかり打ち立てることです。※過去の植民地時代に培われた反民族的精神
この単純な真実が正義あり、その正義を認めることが公正な国の始まりです。かつて日本の支配者たちは独立軍を「匪賊」、独立運動家たちを「思想犯」として排除、弾圧しました。「アカ」という言葉までが生まれました。思想犯と「アカ」、実は共産主義者にだけ適用されたのではありません。民族主義者からアナキストまで、全ての独立運動家にレッテルを貼る言葉でした。左右の敵対、思想に対する烙印は日本の支配者が民族を引き裂くために使った手段でした。それが解放独立後も親日清算を妨げる道具になりました。
良民の虐殺とスパイねつ造、学生たちの民主化運動にも国民と切り離す烙印に使われました。解放後のわが国で元日本警察の出身者たちが、独立運動家を「アカ」に仕立て、拷問しました。多くの人たちが「アカ」にされ犠牲になりました。彼らの家族、遺家族はそのレッテルのせいで不幸な人生を送らなければなりませんでした。
現在の韓国社会で、政治的反対勢力を誹謗し、攻撃する手段に「アカ」という言葉が使われていて、形を変えた「色彩論」が猛威をふるっています。私たちが一日も早く清算しなければならない代表的な親日残滓です。私たちの心に引かれた「38度線」は、私たちを引き離した理念の敵対を消す時に一緒に消え去るものです。お互いに対する嫌悪と憎悪を消し去るなら私たちの心の光復(解放)は完成されるでしょう。新しい100年はその時になって初めて、真正なものへと始まることでしょう。
尊敬する国民のみなさん。
過去100年、私たちは公正で正義溢れる国、人類すべての平和と自由を夢見る国を目指して歩んできました。植民地と戦争、貧困と独裁を克服し、奇跡的な経済成長を達成しました。
4.19革命と釜馬民主抗争、5.18民主化運動、6.10民主抗争、そしてロウソクデモを通して普通の人たちが、それぞれの力とやりかたで、私たちの民主共和国を作ってきました。3.1独立運動の精神が危機を迎えることがあっても、克服して蘇ってきました。
新たな100年は真の国民の国家を完成する100年です。過去の旧弊に引きずられることなく、新たな考えと心で団結する100年です。私たちは平和の韓半島という勇気ある挑戦を始めました。変化を恐れず新たな道に立っています。新たな100年は、この挑戦を成功に導く100年です。
2017年7月、ベルリンで「韓半島平和構想」を発表した時、平和は余りにも遠く、手が届きそうに見えませんでした。しかし私たちはチャンスが訪れると、躊躇なく平和を掴みました。ついに平昌の寒さの中に平.和の春が訪れました。昨年、金正恩委員長と板門店で初めて会い、8千万同胞の心を集め、韓半島へ平和の時代が開いたことを全世界に明らかにしました。9月には平壌の綾羅島競技場で15万の平壌市民の前に立ちました。大韓民国の大統領として平壌市民に韓半島の完全なる非核化と平和、繁栄を約束しました。
韓半島の空と大地、海から銃声が消えました。非武装地帯で13体の遺骸とともに和解の心も発掘しました。南北の鉄道と道路、民族の血脈が繋がっています。西海5島の漁場が広がり漁民たちの長年の夢が大きく膨らみました。
虹のように思っていた構想が目の前で一つ一つ実現しています。これからは非武装地帯が国民のものになることでしょう。世界で最もよく保存されてきた非武装地帯の自然が私たちの祝福になることでしょう。私たちはそこに平和公園を作り、国際平和機構を誘致し、生態平和観光を行い、巡礼道を歩き、自然を保存しながら南北韓の国民の幸福のために共同使用が出来るのです。
それは私たち国民の自由で安全な北韓への旅行につながる道となるはずです。離散家族とふるさとを失った人たちが単に再会するだけでなく、故郷を実際に訪れ、家族、知り合いが会えるようにするつもりです。韓半島の恒久的な平和は、多くの峠を越えて確実なものになるはずです。
ヴェトナムのハノイで行われた第2回北・米首脳会談も長時間の会話を重ね、相互理解と信頼を高めたことだけでも意味ある前進でした。特に両首脳によって連絡事務所の設置にいたる論議が成立したことは、両国関係正常化のために重要な成果でした。トランプ大統領が見せた持続的対話の意思と楽観的な展望を高く評価します。さらに高い合意に向かう過程と考えます。さらに私たちの役割が一層重要になりました。
韓国政府はアメリカ、北韓と緊密に連絡を取り、協力して、両国間の対話が完全に一致するよう努力するつもりです。私たちが抱いている韓半島平和の夢は、他人が作ったものではありません。私たち自ら、国民の力で作りだしたものです。 統一も遠くはありません。違いを認め、心を合わせて互恵的関係を作れば、それがまさに統一です。今から始まる新たな100年は過去とは質的に違う100年になることでしょう。
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「新韓半島体制」は大胆に転換して統一に備えていきます。
「新韓半島体制」は私たちが主導する100年の秩序です。国民とともに、南北がともに新たな平和協力の秩序を作ります。
「新韓半島体制」は対立と葛藤を終わらせる新たな平和協力共同体です。
私たちの一貫した意志と緊密な韓米共助、北・米対話の合意と国際社会の支持を背景に恒久的平和体制の構築を必ず成就させるつもりです。
「新韓半島体制」は理念と勢力争いの時代を終わらせる新しい経済協力共同体です。韓半島で「平和経済」の時代を開いていきます。金剛山観光と開城工業団地の再開もアメリカと協議します。
南北は昨年、軍事的敵対行為の終息を宣言し「軍事合同委員会」運営に合意しました。非核化が前進するなら南北間に「経済共同委員会」を構成し、南北双方が恩恵を受けられる経済的成果が挙げられるでしょう。南北関係の発展が北・米関係の正常化と北・日関係の正常化につながり、東北アジア地域の新たな平和安保の秩序に拡大していくでしょう。3.1独立運動の精神と国民統合を背景に「新韓半島体制」を作り上げていきます。国民みなさんのご協力をお願いします。
韓半島の平和は南と北を越えて、東北アジアとアセアン、ユーラシアを包括する新しい経済成長の動力になることでしょう。100年前、すでに植民地になり、また植民地に転落する危機に瀕していたアジアの民族と国々が3.1運動を積極的に支持してくれました。
当時、北京大学教授で新文化運動に取り組んでいた陳独秀は「朝鮮の独立運動は偉大で悲壮であると同時に明瞭で、民意を使っても武力を使わないことで世界革命史に新しい時代を切り開いた」と語りました。アジアは世界で最も早くから文明が繁栄した地域であり、多様な文明が共存しているところです。韓半島の平和でアジアの繁栄に寄与していきます。
共生をはかるアジアの価値と手を結び、世界平和と繁栄の秩序をともに作っていきます。韓半島の縦断鉄道が完成すれば、昨年の光復節で提案した「東アジア鉄道共同体」の実現を早めることになります。それはエネルギー共同体へ発展し、アメリカを含む多者平和安保体制を堅固にすることになるでしょう。アセアン諸国家と「2019年 韓-アセアン特別首脳会議」と「第一次韓-メコン首脳会議」の開催を通して「人間中心の平和と繁栄の共同体」を一緒に作っていきます。
韓半島の平和のために日本との協力も強化していきます。
「己未獨立宣言書」(3.1独立宣言書)は3.1独立運動が排他的感情ではなく、全人類の共存共生のために東洋平和と世界平和へ進む道を明らかに宣言したものです。「果敢にこれまでの間違いを正し、真の理解と共感を背景に良好な関係の新しい世の中を築くことが、お互いに災難を避け、幸せになる近道」だと明らかにしました。今日でも有効な私たちの精神です。
過去は変えることはできませんが、未来は変えることは出来ます。歴史を鑑として韓国と日本が堅固に手を取る時、平和の時代がそっと私たちの傍にやってくるでしょう。力を合わせて被害者たちの苦痛を実質的に治癒すれば韓国と日本は心が通じ合う真の友人になるはずです。
尊敬する国民のみなさん、外の同胞のみなさん。
過去100年、私たちがともに大韓民国を育ててきたように、新しい100年、私たちはともに生き続けていかなければなりません。すべての国民が平等で公正に機会を持ち、差別されず、仕事に幸福を見つけるでしょう。
共に素晴らしい人生を送るために、私たちは「革新的包容国家」という新たな挑戦を始めました。今日私たちが歩んでいる「革新的包容国家」への道は、100年前の今日3月1日に朝鮮人たちが夢に描いた国の姿でもあります。世界は今、両極化と経済的不平等、差別と排除、国家間の格差と気候変動という全地球的問題解決のために新しい道を模索しています。「革新的包容国家」実現に私たちは挑戦を続けます。
私たちは変化を恐れず、むしろ積極的に変化を利用する国民です。私たちは最も平和的で文化的な方法で、世界の民主主義の歴史上美しい花を咲かせました。1997年アジア外愌危機、2008年グローバル金融危機を克服したのは国民の力によるものでした。私たちの新たな100年は、平和が包容の力となり、包容がともに生きる国を作りあげる100年になるはずです。
包容国家への変化を私たちが先導し、私たちが作る包容国家が世界の包容国家のモデルとなり得ると確信します。3.1独立運動は、これからも私たちを未来へと推し進めていきます。
私たちは本日、柳寛順烈士の功績審査を改めて行った結果、独立有功者の勲格を上げて建国勲章一等級「大韓民国章」を追加で授与することにしたのも、3.1独立運動が現在進行形だからです。柳寛順はソウル西大門刑務所に収監されても死を恐れず、3.1運動の一周年にマンセーを叫び続けました。しかし何よりも彼女の功績は、「柳寛順」という名前だけで、3.1運動を象徴する存在になったことで、亡くなってからも大変な貢献をしていることが認められました。
100年の歴史は、私たちが直面する現実がどんなに困難であろうとも、希望を諦めなければ変化と革新を達成できることを証明しました。
これからの100年は国民の成長がとりもなおさず国家の成長になることです。理念の対立を乗り越え統合を実現し、平和と繁栄を実現するなら、独立は真に完成することになるでしょう。
有難うございました。
安倍首相と文大統領は一歳違い。平和憲法を変えることに執念を燃やす、わが安倍首相と、民族の悲願である統一と平和の実現に情熱を注ぐ文大統領の違いは明らかだ。日韓両国のトップの姿から、二人を選んだ国民のレベルの違いも情けないほど明らかだろう。
3日、我孫子駅前で「アベ政治は許さない」「放射能はキケン」のプラカードを掲げた。蹴とばされても非暴力、3.1精神を受け継ごうと思った。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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