新年の御挨拶 2012年元旦

著者: 塩川喜信 しおかわよしのぶ : ちきゅう座運営委員長
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 新玉の年を迎え、新年のご挨拶を申し上げます。
 昨年は何という年だったのでしょう。東日本大震災、大津波、そして福島原発事故、それに加えて和歌山の集中豪雨、など各地の大災害。国際的にもニュージーランド地震やタイの洪水など、地球はどうなっているんだと思わせるような状況でした。
 こうした状態の中で、東北では、被災者同士やそれを包む人たちの助け合い、そして政府の遅れや無策の中 震災の片付けや支援物資の配給、お年寄りや幼児のお世話など、様々な場面で貴重な活動が行われました。こうした活動は、「民衆の連帯」の素晴らしい貴重な経験だったと思います。
 他方で、政府・東電・原子力関連の省庁は、正確なデータを隠し、原発事故被災地域の住民を将来にわたって傷害の残る危険性のある状態に放置しました。「民衆の連帯」の対極にあるのが政府・東電の対応ではなかったでしょうか。メルトダウンからメルトスルーまで引き起こした核燃料処理の方策すら見えていないのに「事故の収束」宣言を出し、さらに休止中の原発の再稼働に向けて動きつつあるというのは、これが「公共性」を標榜する「政府」でしょうか。民衆の生活の安全よりも、相変わらず党利・省益・企業の利益を優先する支配層の心理的風土は今回の大震災と大事故でもいささかも変ってはいないようです。「民衆の連帯」からこうした社会状況に風穴を開けることが出来るのかが、私たちにとっての課題だと思います。
 そして国民のかなりの人たちが、こうした支配層やメディアの手法を、原発事故の初期から感じていたのではないかと思います。政府と、政府が垂れ流す「情報」に依拠して、戦中軍部の「大本営発表」と大して違わない大手メディアの提供する情報では、正確な事態は分からないとの感覚を多くの方が持たれたのではないでしょうか。「ちきゅう座」への月間アクセス数は、2月の50万台後半から原発事故の起こった3月には300万台になり、その後一進一退を繰り返していますが、現在でも150万台で推移しています。本来であれば真実に迫る取材と報道をするべき大手メディアがその責を果たしていないから、私どものような弱小メディアにアクセスが増えているのです。しかし、メディアの状況がすぐに変化するとは思えない以上、ちきゅう座は新しい年に向かって、力を振り絞って頑張らざるをえません。とはいえ、ちきゅう座はまだまだ財政的にも人的スタッフの面でも弱小です。
 社会経済の面でも昨年は大変な年でした。未曾有の円高、EUの通貨危機、などなど。「アラブの春」やEUやアメリカでの所得格差に対する大衆的抗議などの動きはあったものの、政治や経済の根幹を動かすには到っていません。こうした面の分析でも、私たちは非力を認めざるを得ません。
 皆様方の今日までのご支援に感謝すると共に、様々な形でのさらなるご協力をお願いしたいと思います。会員やサポーターとしての財政的支援、原稿の投稿、様々な形でのボランティアとしての支援、などなどお願いしたいことは山ほどあります。
 新しい年を迎えて、こうした面を含めて皆様方の一層のご支援、ご協力をお願いする次第です。
 本年が皆様にとって、少しはましな年となりますように。